■はじめに
もともと不人気車だったこともあり、生産台数が大変少なかったこともあり、生存個体数が少ないため、NS400Rが好きな方に乗り続けて欲しいのです。
端的に言ってしまうと、なんとなくかっこいいからとか、気分で買って、すぐに飽きて軒先で朽ち果てさせるようなことにはなって欲しくない。ましてや転売目的とかは論外。
そういうことなので、
トーンは結構きつめにしました。ご容赦のほどを。
■NS400Rの状況
なにせNSは1985年製造のバイクです。この文を書いている2002年の時点で、17年も経っている旧車です。
このため、たとえ工場のデッドストックを入手したとしても、本来の性能を発揮するためには、消耗部品や経年劣化部品は全交換になります。この金額は部品単体価格のみならず、工賃(ホンダ推奨工賃・1時間8000円/2001年現在)も含めて結構な値段になります。走行していた車体なら、なおさらですね。(正確には正しくない)
また、エンジンパワーより足回りが負けている車体ですから、前後足まわりのO/Hは推奨事項です。(車検時にはぜひやりたいものです)
おおむねスロットルワークだけでフロントアップするのは、エンジンパワーがある証拠ではなく、リアショックのへたりのせいです。
仮にチャンバー等を換えてパワーが向上した結果、フロントアップするようになったら、サスのセッティングを見直すか、リプレイスのショックに替える必要があるでしょう。足回りがまともでないと、バイクは前に進みません。
仮に入手した車体が、それなりのトラブルを抱え込んでいるとしたら、さらにお金がかかります。
しつこいようですが17年前に製造されたバイクですので、倉庫の管理費用や毎年課税されている税金(国はメーカーの補修部品を会社の資産とみなし、毎年課税しています)が加算され、部品価格が当初の数倍に値上がりしています。おまけにすでに国が定めた製造者補修部品保有義務期間を大幅に過ぎているため、部品の製造も事実上終了しており、欠品状態の部品もそれなりの数に上っています。
ついでながら、よく壊れるパーツほど在庫を食いつぶして欠品状態にあります。
さらにこの部品供給事情は、ホンダが2ストロークエンジンの全廃を宣言していることから、改善されることは全くないでしょう。
ひょっとすると見つかったトラブルは、部品がメーカーになくて直せないかもしれません。
こうなった時の対処法は2つしかありません。
部品取り車を見つけるか、工場を見つけて単品で造るか。(『あきらめる』は意図的に無視しております)
当然、どちらもそれなりのコストがかかります。
おまけに都市部に住んでいると、部品を置いておく場所代もコストに含まれます。
NS400Rオーナーの皆さんを拝見していると、多くの方が部品取り車を所有し、結構な量の部品をストックされている模様です。
私自身、やむを得ない結果として部品取り車2台、部品1部屋分所有する羽目になってしまいました。まあNSに限らず、どの旧車も所有されている方は、大体そうみたいですが。
脅しでもなんでもなく、車体単体価格は安くとも、購入直後からコンディションを維持するだけでとんでもなくお金がかかります。新車で軽/小型自動車は楽に買えることでしょう。
更にカスタマイズし始めると……1ビモーター(某所の貨幣単位)とか、2ビモーターと貪欲に金を呑み込んでいきます。(車を買うと思えば払えない金額ではないですが)
それでも厭わない貴方、おめでとう。ようこそこちら側へ。
■注意点
基本的な中古バイクの選びかたは、あちこちの本や雑誌で触れられていますので割愛します。
この一般的なポイントがよく解らないかたは、NSを手に入れる前にもう一度考え直すことをお薦めします。
(もちろんあざけっているのではなく、とんでもないものをつかまされる公算が大きいからです。極めて残念なことに、二輪中古車業界は困った業者が多く、良心的ではありません)
●外装の状況
外装パーツは欠品が増えており、外装が傷んでいる車体は避けたほうがいいでしょう。手に入っても呆れるほど高価です。
ついでながら、トリコロールカラーは不人気であったため、外装パーツが極端に手に入りにくくなっています。しかしオークションでは不人気であるがゆえに、比較的安価で落札できることが多いようです。難しい所ですね。
●フレームのクラック
NS400Rのフレーム設計にはいくつかの問題点があり、なかでもスイングアームピポット部の強度が不足しているため、クラックが入りやすいという欠陥があります。
もちろん直すには相当な金額がかかります。
●スイングアーム
鋳造のスイングアームは、縦方向の強度は十二分に確保されていますが、横方向の入力には大変弱く、転倒程度であっさりと曲がります。
ただ、平行にズレる曲がりかたをするため、ぱっと見には解りにくいことから、チェーンラインがきちんとまっすぐになっているか、1番3番サイレンサーの内側にヒットした痕がないか確認しましょう。
●ギア抜け
2速と4速がギア抜けしやすいのはNS400Rの持病ですが、直すためにはクランクケースを開ける必要があり、工賃だけでも結構な金額がかかります。
<追記 03.09.01>
2速ギアはめでたく欠品とあいなりました。
●製造番号
後期生産型(車台番号・1007275以降)は2速ギアの強化、オイルポンプの強化など各種不具合対策が取れれていますので、選択の余地があるなら後期型を選んだ方が良いでしょう。
■必ず入手すべきもの
サービスマニュアル
パーツリスト
これがないと話になりません。サービスマニュアルを読まずに、整備情報について、掲示板等で質問をするのはダメな行為です。
腐ってもホンダなところで、今でもホンダのウィング/プロス店などで注文できます。大体1冊あたり1万〜1万5千円くらいでしょう。
受注生産となっていますので、納期は早くとも1月はかかるはずです。
中古でよければ、ヤフーオークションでもよく出品されています。
■できるだけ必要なもの
まともな工具一式
あたりまえという話もありますが、念のため。
まともな工具というのは、KTCとか、興和精機とかプロトとかスナップオンとか、要するにホームセンターで安売りしているものでないメーカー品の工具のことです。
ボルトやネジをなめる可能性は低くなりますし、作業効率も上がります。ついでながらまともな工具はアマチュアが使う分には一生ものです。
また自分で車体を整備できない、あるいは場所の問題で整備ができない方の場合でも、カウルの脱着を自前で行ってから、バイク屋に持ち込むとカウル脱着工賃分安くできます。(NSのカウルは妙にネジが多く、慣れないと妙に時間がかかるのでお店に喜ばれます)
■入手したら必ずするべき整備
以下の項目は、読んでおられる方が信用できるスキルを持つバイクショップと付き合いがある、もしくは自分でそれなりの整備スキルを持っていることを前提としています。
ブレーキのO/H
ATACの分解清掃
キャリパーシール交換
ブレーキホース交換
フルード交換
オイルポンプ調整
ノーマル状態であれば、すでにブレーキホースは脹らみ切っていて、マスターシリンダーの圧力を設計通りにキャリパーへ伝達していないと思われます。
結果、ブレーキの効きが悪くなっているはずです。このさいリプレイスの金属メッシュホースに換えてもいいのではないでしょうか?(もしかすると、純正ホースよりメッシュホースの方が安いかもしれません。メッシュホースはCB400SF用が流用可能です)
◆
マスターシリンダーは難しいところです。補修用インナーキットの部品価格とマスタシリンダーのO/H工賃を足すと新品のマスターシリンダーが買えてしまいます。
もう少し足せば、NS乗りデファクトスタンダードのRC30/VFR750Rのマスターシリンダーが買えますし、最近妙に安くなったブレンボも視野に入ります。
個人的にはマスタシリンダーごと替えてしまった方が、制動力とコントロール性が向上するのでお薦めです。
またそこまでしなくてもという方でも、ブレーキレバーを現行のアジャスタブルレバーにするだけで、フィーリングが随分良くなります。
◆
リアブレーキはキャリパーシール類の交換のみでOKでしょう。マスターシリンダーは目視でゴム部品にダメージがなければ、そのままでいけます。
なお、ブレーキフルードはプロジェクトμの製品が一番よい結果が出ています。
次点はヤマハ純正のDOT4。反対に最低なのがAPの製品です。
コイツはリプレイスホースにバンドルされていることが多いので、注意して下さい。
<追記 03.09.01>
最近はシェルアドバンス・ブレーキフルードが性能も良く、入手性が高いので、こちらのほうが良いでしょう。
人気の高いブレンボ純正フルードはシェルが生産してます。
◆
排気デバイスのATACは、いい確率でバルブが固着していると思われるため、カバーをあけてカーボンを除去してあげましょう。
チェックポイントは、7000rpmから上が元気よく回るかどうか。一気にフケあがればバルブは固着していません。反対にもたつく、あるいは回らないのであれば間違いなく固着しています。
ATACの清掃には、ATACカバーのガスケットが2個必要です。
またこの清掃はできれば3000km走行ごと、少なくとも遅くとも5000kmごとにスケジュールを組み込んでおきましょう。
◆
またオイルポンプのオイル突出量をサービスマニュアルに従って、確認のうえ調整しましょう。標準状態ではオイルが多めになりますが、焼き付くよかマシです。
走りにあったオイルを見つけてから、再度突出量を追い込んでいった方が幸せです。
当然のことながら、調整を間違えると一発で焼き付きますので、十二分にご注意ください。
■推奨整備
フロントサスO/H
リアサス交換もしくはO/H
前後ホイールベアリング交換
リアショックリンク機構のベアリング交換
スイングアームピポットのベアリング交換
エアクリーナー清掃/交換
ラジエター内部の清掃
ほとんどの方はショックまわりをオーバーホールすることはないようです。しかし、足回りがまともでないとバイクは前に進みません。
フロントはO/Hすることで、設計時の性能を発揮できます。
フォークオイルには、円陣家至高のABSO−RRをお薦めします。なお油面調整は量を測るのではなく、高さを測りましょう。
(バイク用品店などで売っているメスシリンダー『もどき』は、JIS規格品ではなく、その上樹脂製のため温度や測定物の重量で変形することから、誤差が多すぎます)
足回りを換装するのは、まずノーマルフォークをO/Hしてセッティングを出してからでも遅くありません。
◆
リアショックは難物です。
あからさまにNS400Rはリアショックに問題があり、純正品ではエンジンパワーに負け、車体挙動に難点があります。
現役時不人気車種こともあって、リプレイスサスがほとんどありません。現実的な選択の余地としてはホワイトパワー製のみでしょう。恐らく受注生産品です。
NS乗りのデファクトスタンダードは、NC30/VFR400のリアショックに換装ですが、車体のジオメトリーが大きく変化し、リンク比も異なるため、私は奨励しません。
ノーマルショックでも、分解整備することができるショップがいくつかあるようです。オフロード系のショップでは、セッティングも変えられると思いますので、問い合わせてはいかがでしょうか?(ショップは自力で探して下さいな)うまくすれば新品より高性能になる可能性があります。
その場合、可能なら内部オイルに円陣家至高のABSO−RSを使ってみて下さい。当方では良い結果が出ています。
◆
各種ベアリング類は、恐らく一度も交換されていないはずです。
パーツ代はたかが知れていますので、まとめて一気に交換してしまいましょう。
どう考えても経年劣化で寿命を迎えているはずですし、ホイールベアリングは錆びが回っているか、砂を噛んでダメダメになっていることでしょう。
ホイールベアリングは、タイヤ交換と一緒に。リンク周りやピポット周りはショック交換/メンテ時にまとめてしまうと、工賃が安くあがります。
◆
エアクリーナーも案外清掃されないところですので、たいした手間ではありませんので、洗油(ガソリン不可)で洗ってしまいましょう。
材質がスポンジですので、経年劣化している可能性が高くなっています。表面がぽろぽろ崩れるようでしたら、エンジンにダメージを与えますので、新品に交換して下さい。
リプレイス品として、デイトナの汎用ターボフィルターを切って使うことができます。
◆
ラジエターの内部は、スラッジ類が沈着して性能が大幅に低下しているはずです。薬剤等(風呂釜洗浄剤の類いが安価で効果大)で徹底洗浄しましょう。つぶれたフィンも元に戻すと尚よし。
当方ではこの洗浄とバイメイタルの加工が効いているようで、エンジンパワーを向上しているのにも関らず、夏場でもオーバーヒートは発生しておりません。
■奨励交換
ミッションオイル
エンジンオイル
プラグ
ハイテンションケーブル
案外中古販売店はこれらを交換しませんし、2stエンジンオイルは低いグレードを平気で突っ込んで下さいますので、注意が必要です。
個人売買で入手の場合は、前オーナーから銘柄や交換サイクルを聞いておきましょう。
◆
ミッションオイルは、BP SuperGEAR OIL 80−90w(四輪用)が、一般的に入手しやすい製品の中では、2速ギア抜け対策に有効です。
ただし、クラッチ板ライニングの接着剤にダメージを与える成分があるため、クラッチの寿命が短くなります。
<追記 03.03.03>
NS400R専用ギアオイルを円陣家至高と共同開発しました。
BPの欠点であった、クラッチへの攻撃性を排除し、パワーロスになる粘度を下げることに成功しました。
高価ですがNS用として、もっともよいギアオイルと自負しています。
◆
エンジンオイルは走りかたによって好みが別れますが、YAMAHA AUTOLUBE SuperRS、HONDA ULTRA GR2が良い評価を得ています。
カストロールは、カーボンがATACチャンバーに溜まりやすいのでお薦めしません。
なお、謎なオイルが今入っていて、新規オイルに入れ替える場合は、投入口からオイルタンクが空になる寸前まで抜いて(抜ききらないことに注意)、新しいオイルを投入しましょう。
また、少しオイルが減るまでは、高回転は謹むように。(焼付くと嫌ですから)
また、オイルラインのホースを抜いて一気に交換する時は、エアーを噛まないように注意して下さい。エアを噛むとほぼ焼付きます。
この手段をとる場合には、当面ガソリンを混合ガスにしておくことを強くお薦めします。
<追記 03.03.03>
高価になりますが、YAMAHAのオイルに円陣家至高 EGS−T2を投入したものが非常に良いデータを出しています。
チャンバーを換えた車体では、対焼き付き性が大きく向上するため、エンジンのダメージを軽減できます。
<さらに追記 03.07.18>
結局円陣家至高さんと専用オイルを開発してしまいました。
GEO For NSというモデルです。
対焼き付き性の大幅向上と潤滑性の強化を図りました。あいかわらず高価になってしまいましたが、EGS−T2を既存オイルに添加するよりは安価になりました。
◆
プラグはNSの場合、完全に消耗品です。おおむね3000km交換ですから、一番安いノーマルのプラグをお薦めします。(デジタルメータなどを使っていないのであれば、抵抗入りじゃないほうがいいですね)
イリジウムとかVXはたしかに良いのですが、交換時期は変わりませんので、もったいないと思います。
スプリットファイアープラグは品質の面から、(電極脱落などの重大トラブル多し)トルクマスタープラグは性能の面から全くお薦めしません。
◆
ハイテンションケーブルは、まず工場出荷時から交換されていないはずです。
確実に劣化していますので、交換しましょう。確実に効きます。
お薦めは、永井電子(車用を切って使う。高価)、NGK(汎用を切って使う)です。
スプリットファイアーケーブル(汎用を切って使う)も悪くはありませんが、買ってきたら断線していたという話を耳にしますので、注意が必要です。(私は遭遇したことはないですが)
NSの場合、イグニッションコイルとケーブルは接着剤で固定されていますので、コネクターを使うか、ほじって直結するか、無理がないよう考えましょう。
なおノロジーホットワイヤーは役に立たないので、全くお薦めしません。(理由はこのへんで)
■NSの問題点
NSは標準状態で、ブレーキを含む足回りがエンジンパワーに負けています。
おまけに車体が重めですから、なおさらブレーキの効きは悪く(制動力はあります。コントロールしにくいだけで)慣れるまでは、早め早めのブレーキングを心掛けないと、あっというまに突っ込みます。
(NS乗りの事故No.1は追突事故)
さらに、すかたんTRACのせいで、減速時の車体の挙動がつかみにくく、フロントロック限界が解りづらいという問題もあります。
60km/hあたりで左右にフロントがぶれますが、これはTRACの欠陥が原因ですから、異常ではありません。
特定の条件が重なると、旋回中にフロントがロックしてしまうことがあります。コイツが発生すると転倒、運動エネルギーが大きいと、ハイサイドのおまけがつきます。
回避方法は発見されていません。無責任な話で恐縮ですが、発生条件も特定されていません。(2回しか遭遇していないので)
■余計なこと
あちこち手を入れたくなるのが人情というものですが、エンジンパワーをスープアップするよりも先に、足回りに手を付けた方がよろしいかと存じます。
アンダーカウルは冷却能力に多大な貢献をしています。ネイキッド化とかハーフカウル化をされる際には、#2チャンバーからの熱で、シートに座れなくなるかもしれません。
勿論、リアショックや近所にある電装系も、熱で丸ごとやられてしまいますので、徹底的な熱対策が必要です。 |