Vol.547 銀−再起動2 2005-02-20

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 エンジンを開ける日が来ました。
 オークション出の中古車なので、ある程度キレイであることが判っていても、乗る前に腰上を一回は開けた方が良いのだ。
 年式や走行距離か嵩んでいる車両の場合は腰下も開けます。
 減っている状態を無視して走れば、本格的に破壊します。
 オークションに出されてしまうオートバイの場合かなりの比率で、そろそろお金が掛かりそうだからオークションに出すか、と言う状況が背景にあったりするのだ。
 なので減っている部分や機関の状況を確認するコトは当然のことなのでした。
 実際には開けてみないと、何も判らないのがエンジン様なのだ。

銀 :「開けるのですね」
狸穴:「んだ。その前にキャブもO/H。キャブ直下にある
    セルモーターにガソリンが洩れた形跡があるから」
銀 :「今は洩れてませんが……」
狸穴:「キャブもエンジンと同様なのだ。どんなジェットが
    入っているか判らない。以前メインジェットが入っ
    ていないオートバイがあったりしたのだ」
銀 :「メインジェットが無ければ高回転域でまったく回り
    ませんし、低中回転域でもヘタをするとエア吸って
    異常燃焼が起きます」
狸穴:「起きるねぇ」

 キャブをバラしてみると、フロートチャンバーの合せ面に、本来成形Oリングだけの部分に、ガスケットシートで切り出したパッキンが入っておりました。


 Oリングがヘタってガスが洩れた時に、切出したガスケットを突っ込んで対応したんだなぁ……
 他のゴム類も全て点検。硬化が進んでおりました。
 全部ゴム関係のパーツは交換します。
 ジェット類も確認。
 コレは合っているみたい。
 フロートバルブも交換。
 ジェット・ニードルとニードル・ジェットは、まだ大丈夫な感じです。
 プライマリーキャブのフロート室とセカンダリーキャブの燃料供給口をつなぐバランスパイプも交換。
 結局キャブのゴム関係のパーツを、ほとんど交換しました。
 走ってなくても、ゴムは時間が経てば劣化するのだ。
 このへんのパーツをケチると、最悪はエンジンを壊します。

狸穴:「き〜氏の所で良かったね。全部パーツがストックさ
    れていて揃ってた」
銀 :「ココって、SRXの基地みたいですね」
狸穴:「わはは、そのとおり。SRXのだったら、エンジン
    ガスケットも全部ある」
銀 :「最強の環境かも」
狸穴:「だな。SRXにとっては最強の環境だ」
銀 :「あ……。私と同じ型のSRXがバックヤードから出
    てきましたが、微妙にカタチが私とは違います」
FZR:「あれは、き〜さんのSRXです。よく見ると色々な
    所が換わってますよ」
銀 :「アンダーブラケットも見たことないモノです。スイ
    ングアームもショックも前後のブレーキ・システム
    もホイールも全部違います……塗装も凄い」
FZR:「ココにはたくさんのSRXが来るのです」
銀 :「ココって……凄いかも」
FZR:「ここに来るSRXは、みな凄いのばかりですよ」
狸穴:「乗る人間の体格や走り方が違えば、それなりに要求
    が発生するのだ。その結果みな高度なバランスを要
    求するといろいろ変わってくる。でもSRXという
    容だけは死守しているんだよ」
銀 :「なんで、FZRが一台いるのですか」
狸穴:「なんでかなぁ……」わはは。

 で、エンジンを開けてみると……!!
 某社のピストンが出てきました。
 ピストンの打音はこれが原因だったのだ。


 ココのピストンはリングの張力が落ちやすく、またピストン・スカートが短い為にアイドリング付近では音が出やすいのだ。
 銀は外観はマフラーまでデフォルトなのに、エンジンの中は社外のピストンが入っていたのでした。
 ありゃ……コレは参った。
 さて……

銀 :「駄目なのですか」
狸穴:「駄目って訳じゃないけれど、アイドリング付近での
    打音は消せないねぇ」
銀 :「仕様ですか」
狸穴:「当たり」
銀 :「純正ピストンにすれば消えるのですか」
狸穴:「腰下には何等問題はないし、純正ピストンで組めば
    今の音は消えるよ」
銀 :「では純正ピストンで……」
狸穴:「残念ながら某社のピストンの方がボア径が3ミリほ
    ど大きいので、シリンダーも換えないと純正ピスト
    ンは使えないのだ」
銀 :「……」
狸穴:「予算、軽く超えてしまうなー」

 残念ながら、予算というものがあるのでした。
 大幅に越えるわけには行きません。
 この時点では銀がこれからずっと良い子でいるとは、オーナーも判っていないのでした。

銀 :「もしも、狸穴氏が私のオーナーだったらこの場合は
    どうしますか」
狸穴:「まだ今はメーカーからパーツが出るから、ピストン
    とシリンダーをセットで新品に換える」
銀 :「そうですか」
狸穴:「まぁ、そう困ることもない。手はあるよ」
銀 :「でも部品がないので」
狸穴:「大丈夫、何とかする。このピストンとシリンダー、ク
    リアランス関係は酷くないし」
銀 :「打音が出ていても、大丈夫なのですか」
狸穴:「すぐにどうこうなるって訳じゃなさそうだ、少し消耗
    が早いかな程度。この場合は対策としてちょっとオイ
    ル管理に気を使うコトになるだけ」
銀 :「エンジンオイルですか?」
狸穴:「FZRでも散々実験して出来た、凄い基油をベースに
    した大口径エンジン用のTCOII BBと言うオイル
    がある」
銀 :「どんなオイルですか」
狸穴:「詳しくは、そのオイルを造る際に参加したFZRに訊
    いてくれ。そのオイルと併せて、EGS−Limit
    edと言う燃焼室コート剤をセットで使えばたぶん打
    音に対しての消耗と熱の問題は解決出来る」
銀 :「初めて聞くオイルです」
狸穴:「SRXやSRやDUCATIやBMWやモトグッチ等
    の、大口径ピストン車のために造ったオイルなのだ。
    仕様は5w−40と言う粘度だけど、この元油だと熱
    や強い圧力下でのオイルのせん断能力は、通常のどの
    エンジン用オイルよりもはるかに高い耐性を持ってい
    る。加えて添加成分を最小限で高バランスさせている
    からライフも長い」
銀 :「私のエンジン向きですね」
狸穴:「そのためにあるのだ。ただ、高回転域で回り過ぎる傾
    向があるのでそのへんは抑えるように、オーナーに言
    っておくように」
銀 :「そんなに高回転を多用するオーナーなのですか」
狸穴:「そんなコトはないとは訊いているから、ご安心を」

 ということで、ピストンはそのまま使うことにいたします。
 打音が気になるのは2500rpmまでで、それ以上はバランスしているのだ。


 ヘッドのバルブも全てバラして点検します。
 バルブの傘の部分は、カーボンが堆積しておりました。
 ポートも吸気側セカンダリポートにお約束のカーボン体積を確認。
 デフォルトキャブのSRXはみな、こうなっているのでした。
 カーボンは全てキレイに落とします。(※バルブの写真添付)
 バルブシートの幅は、対応限界ギリギリ。
 今回は斬り直さずにこのまま組みます。


 このピストンとピストンリングが交換時期を迎える時に、同時にバルブシートも限界を迎えるでしょうからそのときに斬り直せば良いです。
 バルブガイドとバルブステム部には特別の潤滑剤をコートしました。
 コレでバルブが熱に負けることはなくなります。
 FZRの18000rpmでも、ポルシェ944turboの超高熱を喰らう排気側のバルブでもこのコート剤は楽に耐えます。
 ただ、皮膚に着くと相当危険な物質なので扱いには気を付けないと……死ねます。
 あ……少し着いてしまった〜
 なのであっしはエンジンをやるときには、10回くらい手を洗います。
 カムも点検して、ロッカーアーム回りも全部点検して問題無いことを確認。

 その他いろいろ点検したり調整して、銀は完成〜
 銀は元々大切にされてきたのか程度も良く、手が掛かる状態でなかったので作業はすぐに終わって良かった。
 
狸穴:「終わったよ」
銀 :「登録がまだですけど」
狸穴:「んじゃ、新オーナーの籍に入るか」

 と、言うことで品川陸自へ向けて試乗開始。
 なんら問題なく全部動いております。
 良かった。

 で、納車。
 久々に納車の際の車両の扱いの説明をした。
 オートバイ屋さんだったときのあっしの口調、久しぶりでした。
 忘れてないもんですね〜わはは。

狸穴:「んじゃ銀、可愛がってもらえよ〜」
銀 :「はい」

 新オーナーは銀を可愛がってくれそうなお方でした。安心した。
 判らないことがあったら、些細なことでもお聞きください〜

銀 FZRx+狸穴

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