Vol.492 ジッと我慢の……錆 2004-06-29

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 我慢という文字が辞書ファイルに無いあっしなのですが、今回の表題には我慢の文字が。
 あっしが一番、出来ないことです。

FZR:「マスターには一番難しい表題ですね」
狸穴:「だなぁ……だってまともにしたことないのだ」
FZR:「わたくしは得意ですわ」
狸穴:「……だよなぁ、我慢師匠」

 オートバイはジッと動かないでいることが、一番の我慢なのでした。
 動かないでいると錆びたり腐ったり……部分的にはナマ物と同じで、酸化して劣化する。
 FZRはかつて数年に及ぶ我慢の時期と、その直後数ヶ月に及ぶ酷使の時期を経験しているのだ。
 更にウチにやってきてからの状況は、荷役三昧でここに500回も記したとおりの惨状……。
 FZRは『我慢』のオーソリティーなのでした。

 その我慢なのですが、今回はピストンリング。
 オイルの入ったエンジンの最深部にいるからそんなに大変な我慢は無いだろう〜とお思いでしょうが、そうでもないのでした。
 エンジンの中にも酸素はあり(特に結露した水分という形で)、バルブが閉まっていてもブローバイから入ってきたり……で、ピストンリングも鉄製なので錆びます。
 オイルが付着していてもそのオイルにも酸化の波は押し寄せており、熱を定期的に加えられないと酸化還元(や水分の蒸発)がされず、オイル自体に含まれてしまった酸化物質でピストンリングや鉄製シリンダースリーブを侵します。
 結果として、放置後リングと接し続けている箇所のスリーブには錆びに因る段が出来、リングにも錆びが出来ます。
 4stのピストンリングは2stのそれとは違い、シリンダー内壁に刻まれたクロスハッチに少しづつ引っ掛かり、ストロークのたびにホンのちょっとだけ回るように作られています。(クロスハッチの付け方は、このへんも加味して付けるのでした)

 ところが錆びをリング溝に噛み込んだピストンでは、リングは回れません。(錆だけじゃなくて普段のカーボンも同じ。なので毎週20km、メンテバッチリでもたまにはピストンリングと溝を清掃したり交換したりしましょう〜。なんでもなくても6年/5万kmくらいでピストンとリングを交換すると、オートバイの寿命は倍くらい持つかも)
 結果として固着したリングの合口はいつも同じ場所をストロークするので、シリンダーのその部分は多く荒れます。

 錆びをキレイに落としたとしても、リングは駄目になっており、症状が酷ければそのまま使っていると、高回転時などの負荷が掛かった際にリングの一番弱い所が折れます。
 合戦中に突然折れた刀の錆びと同じです。

 そうなるとピストンとシリンダーの間でリングを噛み込み、ストローク中のピストンはガッ!! と逝き、ロ〜ック!
 でも下にいるクランクシャフトは大質量で回ろうとする訳で……間にいるコンロッドが折れます。
 折れたコンロッドはケースを内側から突き破り……
 コレが高回転時に突然起きるのでした。ビックリ仰天。
 リングの錆びの侵食はこんな感じに進行。

FZR:「マスターのデータファイル動画のコレ……酷いリン
   グですねェ……」ジ〜
狸穴:「コレ、FZRの次回のエンジンから出てきた奴だよ」
FZR:「え……わたくしにコレを使うのですか」
狸穴:「まさか」
FZR:「確認いたしますが、新しいリングに換えて下さった
    のですよね」
狸穴:「へい、結局全部を新品のリングに換えました」
FZR:「こんなリングを入れられたら、ナラシが終わる前に
    駄目かも」
狸穴:「だな。どんなに良いオイルを入れて走っても、コレ
    じゃしばらくするとリングが折れるし実験にならん」

 リングは錆びにより、部分的に何箇所か痩せておりました。
 その痩せた錆び点の部分から折れるのでした。
 燃焼室の一部なので、高熱に晒されまた冷やされ、更に高回転で高負荷の極地にいる硬く薄い部品なので、一寸した傷や寸法違いでも逝ってしまうのでした。

 中古エンジンには、かなりの確率でこの状態が発生してます。
 一度でも火の入ったエンジンとオイルだと、こういうコトが起きやすくなっているのでした。
 なので長期放置は止めましょう〜
 極北に住む半年は冬眠するオートバイも、せめて2週に1度は油温が上がるまで定期運転いたしましょう〜
 で、乗っていなくてもオイルは半年に一度くらいは交換してください。
 オートバイのピストンリングは、自動車のものと比べて極端に薄いので(最近は自動車のリングもオートバイ並に薄くなって来てますけど)お気をつけ下さい。

FZR:「マスター、キャリパーのピストンやシールも同じで
    すか」
狸穴:「気がついたね〜似てるよ。そこも年に一度かもしく
    は汚れていたら清掃くらいはした方が良いな」
FZR:「ステムやホイールのベアリングも?」
狸穴:「んだ。パーツ交換に到らなくても、清掃・給脂くら
    いはした方が良いのだ。動きが全然違うだろ」
FZR:「はい。チェーンやショックのリンクや、フォークと
    か、信号系のソケットの端子も同じでしたわ」
狸穴:「FZRが自分でセルフメンテナンスできるとありが
    たいのだが……」
FZR:「マスターのナノマシンをお借りできれば……でも日
    を置かずに乗って頂ければわたくしも結構長持ちい
    たします」
狸穴:「だな。それが長持ちの一番の秘訣かも」
FZR:「マスター……《秋水號》様は……」
狸穴:「う〜、判らん。内側から錆びてないと良いね」

 オートバイは中からの錆びが一番厄介なのでした。

FZRx+狸穴

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