| FZR:「マスター、今日はすでに今年のGWに入っております
ね」
狸穴:「世の中はそうみたいねぇ。でもうちはお仕事だ」
FZR:「はい。わたくしの仕事も今日は入っておりますから、
大変ですね」
狸穴:「んだ。やっと暖かくなってこれから夏を迎える前に、
皆オイル交換やフォークのO/H等が待っているの
だ」
FZR:「ですね」
5月以降からFZRも少し忙しくなるのでした。
始めはFZRのお仕事の荷物の発送です。
商品をパッキングして、伝票の記入事項を再々度確認して……郵便局まで走ります。
FZR:「上手に積んでくださいね」
狸穴:「……今日は多いねぇ」
FZR:「はい、3件分です。海外と名古屋と東北です」
狸穴:「海外……FZRには外国語、インストールされてた
っけ?」
FZR:「はい。大抵の言語は少し時間が掛かりますが、なん
とかなります」
狸穴:「イイねぇ。海外は何所に何を送るの」
FZR:「NYのハーレーさんに、CPOとグリシンLGとA
BSOです。マスター、お忘れですか……お友達で
すよ」
狸穴:「向こうも冬があけたのか」
FZR:「そうみたいです」
リアシート上に2件・タンクカバーの上に1件と、あっしのお仕事の三叉も一基搭載。
今日は千葉までこの三叉のステムの圧入にも行くのでした。
三叉の圧入は諸々で結構難しく、センターを狂わせないような専用の治具を使い、更にきちんとブラケットをホールドしながら、それ自体がセンターを出すように動く可動形のヤトイが要るのでした。諸々の内容はノウハウなのだ.
普通に圧掛けてプレスして入れてしまうと、後々に狂いやすいし作業は微妙なので簡単じゃないのだ。
しくじるとステムもブラケットも全部パァ。
運が悪けりゃ弾けて怪我もします。
FZR:「では暖気も済みましたし、行きましょ〜」
狸穴:「今日は200Km越えるな」
FZR:「ですね。わたくしもあと約3000kmで総走行距
離10万kmを超えます」
狸穴:「そか……そろそろ10万kmか。よく保ったねぇ」
FZR:「わたくしはまだ調子良いですわ」
狸穴:「良かった良かった」
FZRも一発目から大変なことが良く起きましたが、不思議なコトに今が一番調子良い感じです。
こうしてこのページを与えて頂き皆様にお会いしたので、実験も兼ねる働き者のFZRめも常に何かのモノを積んで走りながら、まだ無事に稼動しているのでした。
世界一働き者のFZRかも……
普通、250ccの4気筒は、当時のオーナーがオートバイをはじめて所有する若年層の高校生や大学生で、扱い方も良く判らずに新車時から保管も雨ざらしだったり、オーナーが社会人になると同時に忙しくなり、長期放置されていたりで調子を保つコトが難しいらしいです。
二代目のオーナーとなると、安く買えた〜中古ということで更にメンテを受ける機会は少なくなり……オーナーが代わる毎に過酷を極めます。
中古でもオートバイや乗り物が、今の10倍の金銭を必要とする乗り物だったら大事にしただろうなぁ……。
都内であっしが店をやっていたときも、そんなオートバイ達がこの時期には良くやって来ました。
大学生だと先輩が卒業と同時に地元に戻るということで、乗っていたオートバイは下級生に払い下げられ、それを受ける下級生は初めてオートバイに乗る訳で……エンジンのこともブレーキのこともタイヤのことも何も知りません。
形になっていればそれで全開可能〜
『いつでも全開! だぜ』……でも都内は渋滞〜です。
で、慣れて来たこの時期くらいになると転倒して、初めてオートバイ屋さんにFZRやCBRやGSX−Rを引き摺って来るのでした。(別に4気筒じゃなくてもそうなのですけど)
アンダーカウルは始めから割れて取り払われ、アッパーカウルもボロボロでステーは曲がり……転倒のしているので左右のハンドル角度は揃っていない。
タイヤを見てみるとパターンは薄く、ひび割れて硬化しており、エアを測ると1.2キロくらい。
受け渡しの際に先輩からの申送りが無かったから、オイルを交換することも知らなくてエンジンオイルは真黒で、乗っている本人も何キロ走っているのか気にしたことが無い……フォークシールも破れてオイルを吹いているが……どうして良いか判らない。
実際に消耗したり壊れたら直す、という思考はないのでした。
危険に対しての考察も無いです。
まぁ、始めは皆そのあたりからのスタートなのだ。
色々と乗り越えるハードルはあるのでした。
それ以前にオーナー達は、連日のお付き合いで呑み代を捻出しなければならなかったり、彼女とのデート代もかさむ……。
日々の食費にもこと欠いたりで、オートバイのメンテどころじゃなくなるのでした。
友達内にある程度オートバイに詳しい人間がいる場合は、オイル交換のことやフィルターやタイヤや、ブレーキパッドやプラグのコトを教えてくれますが、そんな友人がいない場合はそのオートバイの再生見積り額を訊いてビックリ!『まだ2000kmくらいしか乗っていないのに、ダメじゃん……』と一言いわれて、オートバイは店前に棄て置かれます。
オイル交換はしていなくても、メータには18000rpmなんて刻んであるので上限まで回したくなるのも人情ですが……。
18000rpmをやるには、せめてオイルくらいは新しい良いオイルを入れて下され。高回転型のエンジンは要求しているのだ。
店に置いて行かれたオートバイのオイルを出してみると、メタル片をたっぷり含んだ真っ黒なオイルが700ccほど出てきて排出完了。メタルまで焼きついて転んだのだ。
走行距離を見てみるとまだ14000km。
それにしては外装もヤレて……哀れ産業廃棄物一歩手前。
組み立て工場出荷時は新車で輝いていたのに……そういえば、納車してから2回程しかオイル交換に来なかったなぁ。……ふ〜。
押しながら修理ブースに入れてやると、チェーンはチリチリ鳴りブレーキを引き摺っていて重たいです。
狸 穴:「……大変だったねェ」
オートバイ:「ハイ。マイニチ タイヘン ……デシタ」
このような扱いを受けたオートバイは少なくないのでした。
2st車だと、減るエンジンオイルやキックスタートを強いられ、逆にメンテに気を使われてこういう扱われ方をしたオートバイは少なかった。
仕事なので新車を売るかたわら、こうしてまだ可能性のある個体は時間のある時に少しづつ直して行きます。
クランクを取り出していろいろ直し、メタルのサイズを合わせて組み直しついでに測定。状態によってはヘッドもO/H。
シリンダー・ピストン、クラッチ、ミッションは大抵無事でした。
外装は破損・欠品も多いので、新品をメーカから仕入れるしかありません。
曲がったステー類は細かく修正します。
電装系も全部チェックして100kmほどアタリを出すため軽く街場でナラシをしながら、吸気系を最終調整・チェック、でコストは掛かりましたが再生完了〜。
次のオーナーの元へ行きました。
次のオーナーは大抵の場合、こうやって直しをしていると、オートバイを乗ることを仕事としたプレスと呼ばれる報道系の職業ライダーの方がそれを見ていて、オーナーになることが多かったです。
彼等は新車も買いますが、興味がある車種だと、こうしてチェックしたオートバイもサブマシンとしてターゲットにしております。
先を争う仕事上、酷使はするがこういうオートバイの扱い方を知っているのでした。
FZR:「わたくしはどうだったのでしょうか……もう新車時
のことは覚えておりません」
狸穴:「チョークを完全に戻さず走られて、オイルがシャバ
くなったりした形跡は親メタルにあったねェ……で
も、FZRはそれなりには大事にされていたんじゃ
ないかな。外装は大きな破壊も無く全部揃っていた」
FZR:「そうですよね」
ということで、FZRは郵便局に到着。で、荷物を発送。
GWなので道路はちょっと恐ろしいことになっておりますが、ナントカ事故もなく走っております。
次の目的地はステムをやるので、78km離れた工場での作業とその往復です。
高速道路を使うと遠回りしなければならないので、一般道です。
でも、昼のある時間帯だけは空いているのだ。
作業を終え、今度は都内です。
途中、XJR1300氏とスポスタ1200氏が信号のたびにソコソコ頑張って引っ張ってくれるのでFZRも全開〜。
ちょうどオイルも入れ替えてから約3000km走り、この状況で18000rpmを使って最大加速を続けてみます。
スポスタの方は2名乗車ということもありナントカなりましたが、さすがにXJRの方は1300ccあるのでとても速く、追い憑くのがやっとでした。
18000rpmでキャブ開放が続く負荷下でも、オイルは何ら問題無くエンジンを回してくれてます。(当然です)
でもココはとても速度が乗りやすい道路なので、普段からねずみや速度の取り締まりは一番厳しい場所なのでした。だから追いつけたのだ。
サスも速度について来ているようで何より。
都内に戻る途中、一旦き〜氏の所に寄りバッチリ出来た三叉をお渡し。
で、GW期間中に一日ロケが入っているのでその打ち合わせ。
撮影に使用させていただく店内のロケハンとご挨拶もします。
お洒落な場所だったので、それ風に合わせて少しきちんとした服を着てくれば良かったかな……打ち合わせなのに普段の撮影現場と同じ格好でした。(反省)
店内備品の家具や小道具のチェックも、場所のサイズも電源の確保も使用時間もその他諸々、全部確認を済ませた。
間者から聞き及んでいた現場内容とは多く違っていたので、自分で調べておいて正解。
当日に時間を掛けず済みそうです。こういう見えないところでの地味なお仕事が一番大事なのだ。
次は油脂類の仕入れです。
特に待てない状況の2スト勢のエンジン・オイルは、注文が集中して間に合わなくなることがあって在庫量を増やした方が良いのだ。
で、仕入れを済まして即2件分を早速梱包→配送手配。
狸穴町へ戻る途中に、六本木ヒルズの隣にお住まいの方にもABSO−RRを2個お届け。
移動の途中、原宿駅の近傍でズーマーの方から「そのオートバイ、カッコ良いっすね。インターネットのでしょ」と、声も掛けられた。(……ちょと怖いっす)
ありがとうございます。
大変だねぇ……FZR。
みんな連休中にメンテするのか……走ったあとの連休終了後も集中するのかな。
とてもありがたいことなのでした。
FZR:「2stはわたくし達4stと違い、警告ランプが点
いたらあまり待って頂けませんから、在庫数をこの
時期には細かく調整しておりますわ」
狸穴:「これから数日間、GWに入ると入荷に時間が掛かる
し。FZRも忙しい」
FZR:「はい。わたくしの所には要求レベルの高いお客様の
ご注文が集まってきているようですので頑張らない
と……TCOU系も若干在庫拡張する予定です」
狸穴:「へい」
FZR:「マスター、戻る途中に局に寄って下さい。荷物に貼る伝票の印刷が上がってます」
狸穴:「了解」
お陰様で少しづつ知名度も上がり、忙しくなり始めているのでした。
皆様、ありがとうございます。
調子良く設計どおりの性能を発揮して安全マージンを得てもらえたかな。
最高性能を求めた結果、どうしても高めの価格になってしまうのですが、お使い頂いている方にはその性能を御理解いただいていると思いっております。
(使っているあっし達が一番判っているんですけどね。コレばかりは使って頂かないと御理解頂けないのでした)
と、こういう忙しい一日を送ることもあるのでした。
狸穴:「終わった〜」
FZR:「はい。ミニツーリングでしたね」
狸穴:「まるでバイク便みたいだ」
FZR:「明日は雨と風だそうです。わたくしは車体カバーを被って隠れてますね」
狸穴:「お疲れ〜」
FZRx+狸穴
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