| オートバイでも自動車でもトラックでも、大抵のレシプロエンジンにはクランク・シャフトなる部品が付いております。
燃焼室でストロークしているピストンからの力を、このクランクが受けて回転運動にしているのでした。
普段外側からは稼動中のクランクを拝見することは中々難しいのですが、実は中で頑張っている、最重要パーツの一つなのでした。
非常に大きな力を受けながら高速度で回転する重たい部品なのでした。
加減速やシフトアップ・ダウンには、このクランクに掛かる力はミッションやクラッチの回転慣性による重量やフライホイールの回転慣性とか、バックトルクとか、捻じる力も加わったり……自重も大きいしピストンやコンロッドの質量も受けてます。
物凄く大きな力になります。
くわえて、クランク自体も大きな質量を持ちますので、普通に回転が上下するだけでも大きな力を受けるのでした。
でも、乗り物ですから時にはサーキットや高速道路を、最大出力開放で走らなければならなかったりします。
もちろん耐えられるような構造と精度で造られてはおりますが、若干の狂いも持っているのが機械です。
マニュアルを見ればクランクシャフトの絵とダイヤルゲージの絵が書いてあって、その横に『振れ限度:3/100mm』とか許容限界値が書いてあります。
力を何度も受けつづければ、いくら強固に造っていても少しずつ狂いが大きくなって来ます。
当初では理論上、3/100mm以内の小さな狂いですが次第に大きな狂いとなり、最後には大きくズレてクランクシャフトも回転出来なくなってしまうのでした。
FZR:「わたくしにも付いているクランクシャフトですね」
狸穴:「んだ。あの重たい厄介なパーツなのだ」
FZR:「特にわたくしの場合は、20000rpm近くまで
回る超高回転型ですから、精度はかなり要求してお
りますわ」
狸穴:「芯(センター)が出ていないと全然ダメだもんね」
FZR:「はい」
狸穴:「FZRのクランクシャフトも高回転するから、狂い
に関しての許容量は大きくないのだが、大排気量の
シングルエンジンも、このあたりは大変気を使う部
分なのだ」
FZR:「ストロークが大きいからですか」
狸穴:「それもあるけれど、単気筒なので他のエンジンと相
互に干渉しあって、力を逃し合うことが出来ないの
だ」
FZR:「大きな振動が発生しますね……」
狸穴:「だろ」
先日、中古で購入されたあるSRX600改のエンジンのクランクから音が出ている、と言うことで聴いてみました。
クランクケースに耳を押し当てて音の種類を聴いてみると、確かにSRXのエンジンの腰上からの打音とは違う、クランクからの特有の音が盛大に出ておりました。
音だけでは済まず、振動にも現れておりました。
クランクの芯がズレて暴れて、軸受けのジャーナルベアリングを鳴らしている音だなぁ……。
このSRXオーナーのお兄さんは紙谷さんだから、まずそう言う使い方を教えないから……前のオーナーが回転合わさないで、強力なシフトダウンのエンジンブレーキを何回も掛けたのだな……シングルは基本的にエンジンブレーキを使ってはイケナイのだ。
他の個所の音をザッと聴いてみると、オーバーレブが原因で壊れた兆候はなさそうです。
シングルエンジンのクランクで起きる破壊の大半の原因は、エンブレ・ミスなのだ。
コレはマルチエンジンでも同様ですが、シングルやダブル単気筒といっても良いドカやHDのツインエンジンでも同じです。
エンブレを使わないようにするためには、前後のブレーキを強化すればよいだけのことなのでした。シフトダウンは減速のためにあるのではなく、加速のためにあるのだ。
昔と違って、今はタイヤもブレーキパーツも良い物が、本気で求めればいくらでも手に入ります。
他人より少しでも速く走りたいのなら、エンジン出力よりも先にブレーキやタイヤや脚回りに投資した方が速くなる。
もちろん強化されたブレーキは、フル制動時のコントロール技術もかなり高度な操作を要求してきますが、(敢えて妙な言い方をすれば)それに対応できないライダーは速く走る資格は無く、速いオートバイに乗る資格も無く、ダメなのだ。
ブレーキの操作技術に関しては、Nチビ80とかKSR80等の小径ホイールのミッション付きオートバイで練習すると、上達も早いです。BMX等の自転車が一番向いているかな。
積雪時の下りコーナーでのビクスクも良い勉強になるかも。
最近のモトクロスやモタードは、車体が良すぎてあまり勉強にならないみたいです。
……そう言うことが嫌いな方はお願いしますので電車に乗ってくらはい。
今回はこれからもこのSRXを長く乗る! と言うことだったのでO/Hに伴い新品クランクで組むことになったのでした。
救いはシングルなのでパーツ点数も少なく、その価格も安く済むということなのでした。
コレが高出力な高回転型12気筒とかだともう……金額も手間も時間も大変なことになります。(もうやりたくない〜!)
で、新品のクランクシャフトをためしに測定してみると……ズレておりました。
メーカーの名誉のために言っておきますと、その誤差はマニュアル書の許容範囲内。
この許容範囲分のために「高価だけれど高性能なオイルが存在している」と、いう言い方も出来るのでした。
普通のオートバイ屋さんでは、許容範囲なのでそのまま組みます。
……測ってみて良かった。(実は違うメーカーの1200cc多気筒エンジンでの事でしたが、新車時にケースから音が出るということで開けてクランクを測ってみたら、10/100mm偏心しておりました……直したらアイドリングでエンジンが止まっているんじゃないか? と間違うくらい振動は消えました〜回転上昇も3倍くらい速い速い)
あっしは欲張りなので、クランクシャフトはなるべく零振れで仕上げたいのだ。
で、位置を正確に測って、様々ノウハウを使って修正〜
出来上がったクランクは零振れに近づきました。(回転物の完全に零ってのは神様にしか出来ないのだ)
組上げはあっしよりもず〜っとSRXに造詣の深い、き〜氏のお仕事。(ごめんね、手伝えなくて。いかりやさんのお葬式だったのだ)
き〜氏の手の内にあれば、無茶な組み付け方はしないのだ。
出来上がったエンジンは、単気筒なのに振動も少なくシルキーな回転を全域に渡り展開するでしょう〜。
コレ等はエンジンチューンの一番の基礎なのでした。
SRXだと、よく腰上だけ排気量を上げたり、圧縮を上げたりFCRキャブを使ったりやたらと大きな音の出る、排圧の掛からない排気管を付けたりする方が多いのですが、コレ等は全てクランクシャフトやクランクケースやミッション軸の精度が揃って始めて役に立つものなのだ。
そこを無視して、やたらとパーツを交換して無理やり機関出力を上げても、想定どおりの出力は得られず、回転域によってはどう合わせてもセッティングが出せず、油温が激しく上がり自壊を早めるだけの行為なのでした。
コレは単気筒だけに言えたことではなく、ロータリーを含めてエンジン全般に言えることなのでした。
電気モーターだって軸が振れてりゃ熱も振動も出ます。
思い当たったら、ただちにクランクシャフトをケースから取り出して点検・調整をしましょう〜(って、普通のオートバイ屋さんじゃまずやらないけど)
うちのFZRめが頑張って走っているのも、このあたりを初期にやり直したからなのでした。
皆様も頑張ってください〜。
FZR:「マスター、クランクは鳴ってませんが、たまに始動
時の30秒間だけ2番シリンダーから小さくスラッ
プ音が出るようになりました」
狸穴:「そろそろ10万キロだし、使えばいずれ減ってくる
のだ。きっとコンロッドの小端部が減ってきたのだ。
でもいまだ大丈夫だよ。カムチェーンやカムも交換
時期だし、予備エンジンに積み替えたらその間に直
す」
FZR:「ですね、お願い致します。暖気が済めば静かになり
ますわ」
テメェのオートバイが音出してたら説得力無いな……反省。
マミアナ+FZRx
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