Vol.453 壊れるよ〜 2004-02-04

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 仕事の打ち合わせのためにR246を走行。
 空はちょっと曇っているけれど、雨の降る気配はない。
 赤坂の方から渋谷方面へ向かい、途中表参道の方へ折れ、しばらく行った所を左折。
 このあたりになると、道は細かくなるし人出も多いので、充分減速して低速走行。
 排気量も音も小さいFZRだと楽です〜

FZR:「わたくしは低速走行も得意なのでした」
狸穴:「小さいしね。都内で一番使える排気量かも」
FZR:「こういう場所では、細かく曲がってゆっくり走れる
    ことも必要なのでした」
狸穴:「インジェクションで、ゆっくりでもマナーは良くな
    っているらしいけど、R−1じゃローでもギア比が
    高いから、入りたくない所だね」
FZR:「都内にはたくさんこういう道がありますわ」

 ということで、目的のDさんの事務所に着いたのでした。
 このDさん、大きめの会社とお取り引きもありお仕事が忙しい方で、神南に立派な事務所を持っているのだ。
 少しは景気も良くなって来ているのかな
 FZRを事務所の前に停めて、2階の事務所に上がります。

FZR:「頑張って下さいね。オーバーパンツ、ヘルメット、
    くまジャケットはお預り致します」
狸穴:「ん〜、頑張るって言っても、出来る仕事かどうかを
    見るだけだからね。出来なきゃ無いのと同じだ」
FZR:「それでも頑張って頂きたいですわ」
狸穴:「へいへい」
FZR:「わたくしはココでお待ちしております」
狸穴:「そだ、ディスクロックしておくか」
FZR:「このあたりも危険ですか」
狸穴:「ガラス張りの2階から丸見えで大丈夫だけどね、一
    応だ」
FZR:「はい」

 ということで、打ち合わせ。
 仕事の内容確認したが、今回はうちじゃちょっと今は出来ないお仕事みたいなので、お断りの方向です。
 惜しかったなぁ。
 故障中の機材が穴になった。
 やむを得ん。
 普段、大きく稼いでいないとすぐに機材を直せなくて、仕事を受けられない状況もあるのでした。
 適当にかまして、勢いで引き受けてしまうという方法もあるのだが、内容の大小を問わず、微妙な背後関係のありそうなお仕事じゃ、現状でご要望にお応え出来そうもない不安のある場合は、無理して博奕は打たないのだ。
 ふ〜。

狸穴:「お待ちどうさま」
FZR:「おかえりなさい。いかがでしたか」
狸穴:「無理みたい」
FZR:「そうですか、残念ですね。大きなお仕事だったので
    すか」
狸穴:「今回のだけはそうでもないが、動き始めたらすぐに
    仕事が大きくなるらしく、全体を見れば、今のうち
    ではスタッフ的には受け難いサイズ」
FZR:「残念ですね」
狸穴:「全くだ、まぁ最近仕事してなかったしね。ハッタリ
    は効かないのだ」
FZR:「大人ですねぇ〜」
狸穴:「茶化さない」
FZR:「はい」
狸穴:「んじゃ、パンでも買って、そのへんで喰って戻るか」

 ということで途中のパン屋で、飲み物とパンを買って明治公園方面へ。
 山手通りと原宿駅前を繋ぐ道なので、走っているオートバイがたくさん見れます。
 平日は人も多くないし、渋滞も少ないので路肩でゆっくりパンくらいなら食べれるのでした。
 雨さえ降っていなければ、ココはいろんなライダーとオートバイが走っている所も見れるのだ。
 あっしはたまにココでこうしてノンビリしているのでした。
 今日みたいに下にちゃんとしたものを着ている時くらいは、どこか小洒落た食事店に入っても良いのだが、わずらわしいし、オートバイ乗りのカッコだと脱ぎ着が面倒だし、一人ということもあり、街行く乗り物がよく見えて盗難の心配も全くないこういう休憩が好きなのでした。
 営業さんの自動車の人も車を停めて、中で熟睡していたりします。
 お疲れなんですね。
 バイク便の人も30mほど先に3台くらい溜まってました。

FZR:「最近は自家製のおむすびじゃないんですね」
狸穴:「毎度おむすびばかりじゃ飽きたよ。それに減量は成
    功したし」
FZR:「今日のパンは美味しいですか」
狸穴:「美味しいというより面白いって感じだな」
FZR:「ふ〜ん」

 ブラックバードがビュー! と行くと、その後をゼファー1100と900ホーネットが追いかけて行きました。
 速いなぁ。
 マジェとスカブもスパトラつけて行きました。
 なぜか皆様全開です。
 時々白バイもいるから気をつけてね〜

FZR:「速いですねぇ」
狸穴:「坂を駆け上がって来るから、みんなそのまま加速中
    なのだ」
FZR:「ほぼ直線ですものね。マスターも良くココでは回転
    上げてますわ」
狸穴:「んだ。一瞬」

 全部食べてしまいカン茶を飲んで一服していると、後方からNSR250Rが一台。
 なんだか調子悪そうです。
 マトモに2気筒燃えていない感じ。カブっているのかな?
 15mほど後方で左に寄って停まりました。
 さかんにキックしております。
 散発的にエンジンは掛かりますが、発進しようとすると、すぐにストールします。
 音を聴くと1気筒動いていないなぁ。焼ついてたのかな? まさかね。
 NSRだからCDI内のあのトラブルかな
 ライダーはキック&キックです。
 気持ちは判るが、スロットル開け過ぎ。
 15回ほどキックしているとプスンとも言わなくなりました。
 次は押し掛けをするらしいです。
 あっしが見ていると恥ずかしいだろうから、視線を外して聴きます。
 3歩ほど加速してクラッチをつないでいるようですが、もしかしてロー? かな。
 NSR250Rが完調で、本人が押し掛けに慣れていればローでも掛かるだろうが、慣れていない感じ。
 すぐ後ろまで近づいて来ました。
 こちらを邪魔そうにチラリと見て、再び押し掛けしながら過ぎて行きました。
 押し掛け中にクラッチレバーから指は離すなよ。掛かったら引きずられるぞ〜
 NSRのタイヤは減ってるし、チェーンは延びてサビサビ。外装は傷だらけのアッパーカウルだけだ。
 良いオートバイなのに。

FZR:「掛かりませんね」
狸穴:「掛らないねぇ」

 バックステップに膝を引っ掛けて、ライダーと共に右サイドに転びました。

狸穴:「あ、転けた」
FZR:「車は来ておりませんわ」
狸穴:「大丈夫かな?」
FZR:「右手をレバーに挟んだようです」

 ライダーだけ起き上がって手首を揉んで振ってます。骨折はしていないな。
 あっしには関わり無ぇ、コトなのだ。
 妙に関わると彼も辛いだろうから、後方から来るであろう自動車の有無だけを確認。
 3台ほど来てますがまだ距離はあります。
 まだ起す気配はない。
 と、ガシガシ音がするので見てみると、ライダーは倒れている自分のNSRのタンクを蹴りつけておりました。
 あ酷ぇ奴だな。

FZR:「マスター、車が来ました。可哀想ですね、NSRさ
    ん虐待受けていますわ」
狸穴:「自動車からも見えてるよ多分。虐待は子供だけじゃ
    ないんだな」

 後方から来た車はこちらの方を伺いながら、ゆっくり通過して行きました。
 道幅はあるけど危ないね
 ライダーをチラッと見ると、こちらをうかがって、参ったなぁ〜このくそバイク! な感じの手振りです。
 少し先にいるバイク便の人達も、NSRとライダーとあっしを見てます。
 仕様がないので、起すのを手伝うことにしました。
 バイク便の人達も二人、歩いてやって来ました。
 NSRは軽いのだ。簡単に起きました。
 このくらいサッサと起せよ。
 ライダーはグローブを取って、ヘルメットを外してます。

ライダー:「すんません。急に吹けなくなって焼きついてたかも
    しんない」
狸穴:「たまにこうなるん?」
ライダー:「いえ初めてっす。もうボロいから」
狸穴:「ふ〜ん。でもまだ24000kmじゃない。うちの
    アレ実走行で9万越えてるよ。ボロくしてるのはア
    ンタだ」

 FZRをジッと見ています。
 ふん、ってな感じ。

バイク便:「怪我ない?」
ライダー:「無ぇっす」
バイク便:「バイクを蹴るのは良くねぇな」
ライダー:「そーすか」(ウザイな、俺のバイクだ。ってな感
     じ)
バイク便:「それ、テメェの命を乗せて走ってるんだろ。おま
     えバカじゃねぇの」
ライダー:「……」

 バイク便の人は怒っていたのだ。
 そりゃそうだよな、バイク便は自分がオートバイに命を乗せてること知ってるもんね。
 普通の人間は生命を大事にするのだ。
 ライダーがそれを蹴飛ばしていたのを見て、怒っていたのでした。

 その間に簡単なチェック。
 メンテはほとんどされてません。
 洗車もされていない。
 先程ライダーが蹴っていたNSRのタンクの蹴り跡を少し拭いて、タンクをノックしてみます。
 塗装にちょっと傷がついててた。
 んガス欠?
 NSRのタンクは軽く鳴ってました。
 燃料コックをリザーブにして、二回ほどキックでクランキングさせて、10秒ほど待ってからもう一度キックすると、NSRはすぐにアイドリングを開始しました。
 ちょっと右がカブり気味な感じなので、4000rpmくらいでブリッピング白煙。
 エンジンオイルはあるみたいね
 燃料漏れも無し。
 アイドリングは安定〜

狸穴:「コックをリザーブにしたら直ったよ。タダのガス欠」

 バイク便の人達に、タイヤのことやチェーンのことを散々突っ込まれていたライダーは、ジッと自分のNSR250Rを見ておりました。
 
ライダー:「ガス欠」
狸 穴:「そ。ガス欠。燃焼オイルは入っているみたいね」
バイク便:「ガス欠だってよ。テメェが悪いのにバイクのせい
     にしてるんじゃねぇよ。行こう」

 バイク便の人達は、あっしの言いたいことを全部言って、行ってしまいました。
 江戸時代の昔に似たようなことがあった。大八車を大切に扱わず事故ばかり起している奴にある日、無機物である修理待ちの壊れた大八車に土下座して謝らせたら、気が変ったらしく、翌日から大八車を大切にして事故も起さなくなったっけ

ライダー:「オジサン、済みませんでした」
狸穴:「おじ……。俺に謝っても無駄。エンジンもまだ調子
    良いみたいね。CDIじゃなくて良かった。このN
    SRはこのまま壊れて、次の大切にしてくれるだろ
    うオーナーの所に行った方が良かったかな。ホンダ
    の最高傑作だ。気に入って乗ってるんだろコレ」
ライダー:「うん」

 ヘルメットをつけて、そそくさと行ってしまいました。
 グローブは縁石に忘れたままだ。寒いのに。

FZR:「良かったですね、NSRさん」
狸穴:「どうだかなぁ。奴はあのままココで駄目になった方
    が幸せだったかも」
FZR:「オートバイには『意識』はありませんが、カタチが
    あって動けるうちは人を乗せて走るという『意思』
    は、オートバイとして造られた時から、変ることな
    く最後まであり続けます」
狸穴:「そこがオートバイの悲劇かもな」
FZR:「ですから大切に扱って頂ければ、永くお応え致しま
    す。でも、適切に扱って頂けなかったり、ある程度
    その機能をご理解頂けなかった場合は辛いです」
狸穴:「だな燃料がなきゃ走れないね。ガス欠で壊れたと思
    われて、蹴飛ばされてはたまらん」
FZR:「はい。でもその場合はいつか違う形でお返しするこ
    ともございますわ」
狸穴:「わはは、たしかに。んじゃ行くか」

 オーナー次第でいろいろ、あるのでした。
 オートバイのトラブルは、全てオーナーの自己責任なのだ。

バイク便達 ライダー マミアナ+FZRx

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