| 来年3月からのお仕事の打合せが済んで、ちょっと走りに寄り道。
自分の感覚を補正するのだ。
オートバイの乗り方は各人により、それなりの乗り方があるのでした。
時々FZRの曲り方を訊かれたりしますが、乗る人間によって曲り方はまったく違うので、唯一最高の曲り方、なんてモノは無いのだ。
そりゃ、ある程度基本的とされているセオリーのようなモノはあるが、それは充分減速してオートバイの挙動を伺いながら、フリーステアで楽に曲がれて加速もそれ程強く掛けなくても済む曲り方が良さそうな感じ、とお答えするしかないのでした。
乗る人間の仕様が違い、オートバイの個体も違い、さらには曲がっている場所も違えば◎◎が一番だ! なんてことは消し飛んでしまうのだ。
基本的には千人千様。
あっしも、毎回同じ所を曲がっても、その時々で走り方も踏むラインも少しづつ違うのだ。
スロットルの操作一つとっても毎回違う。
FZR:「でもマスター、わたくし達オートバイはその機種ご
とに理想的な曲り方があるようなことを言われます
けど」
狸穴:「そうなんだけどね。off車のDT200WRとF
ZR250じゃフレームも部品も全然違うから、当
然曲り方違うもんな。乗り手の体重や身体の使い方
によっては同一のFZRでも全然違う曲り方になる
んだよ。タイヤの空気圧が違うだけでも曲り方は変
わるのだ」
FZR:「そうですね」
狸穴:「人間達の凄い所は、その時々の状況に対応出来る適
応能力が高いということだ。どんな乗り手も機械じ
ゃないから、個人の能力如何(いかん)によっては、
コーナーの処理にファジーな分だけ幅が持てる」
FZR:「凄いですね」
狸穴:「確かに凄いけれど、どんなライダーも適応能力をデ
フォルトで持っている。ただ、個人差としてどの辺
が一番効率が良くて安全かとかの判断結果や、その
判断内容の選択に時間が掛かったり間違いが生じた
りするのだ」
FZR:「マスターはどうですか」
狸穴:「俺もそれ程スキルは高くないから、間違えることは
多いと思うよ。ただ間違えた後のリカバーの種類を
ホンのちょっと多くもっていたりするだけ。その際
の回避軌道の選択を、少しの経験により自動化して
いる反射回路が出来ているくらいかな」
FZR:「左肩に内蔵されている、こおろぎ回路ですね」
狸穴:「んだ、便利だ」(本来の使い方とは全く違うのだが)
ただし、ある程度オートバイに慣れて色々な乗り方をアップデートして知っておくことは大切です。
昨今の自動車AT免許交付以降、路上の車は飽和点を越えて増え、危険なほど初歩的スキルの低いドライバーや安全意識の無いドライバーが増えました。
加えてどの車も高出力・大質量化により、衝撃吸収ボディーを使っていても人間やオートバイ程度の物体を楽に破壊する質量とか、エネルギーは増えている。
車体はドライバーの指示に対する反応速度もはやいしねぇ……間違っていても。
便利になったのか危険になったのか、よく判りません。
多少マニュアル操作が多くて不便でも、力が無くて辛くても、その方が安全なのかも。
でも、そう言う高性能車の性能を、限界近くまで引出し続けて何時間も走らせるのは面白いですね。
で、ドライバーはその扱いに集中して気をつけなきゃならないのでした。
コレは最近のオートバイにも言えることで、高出力や優れた脚回りは疲労も少なく色々なことが簡単にためせて良いのですが、ある一線を越えると途端にラフに扱えない諸刃の剣なのでした。ライダーも気をつけねば。
ただ安閑と乗り味とか、高出力に酔っている訳にはいかないのでした。
扱いを間違えると自分(と他人)をバッサリ斬ってしまいます。
そんな自動車と同じ路面を、高度な運動神経のオートバイで共有しながら走る訳ですから、事故が起れば大変な結果になるのだ。
10年前とは路上の危険度は違うのだ。
FZR:「曲がるだけでも大変ですね」
狸穴:「んだ。毎日同じFZRxに乗っていても、満腹状態
と空腹状態では違うしねぇ」
FZR:「それでたまに練習しているのですか」
狸穴:「んだ。ちょっと空いている駐車場とかで3周くらい
8の字描いて走ったり」
FZR:「3周で足りるのですか」
狸穴:「多過ぎるくらいの設定補正は出来る」
FZR:「……ですね、マスター達の身体のセンサー量は多い
ですね」
狸穴:「んだ」
FZR:「で、よく手順としてコーナーへのアプローチで減速
→外足荷重→リーン開始→加速、とか言われてます
が」
狸穴:「そりゃ、判り易く伝えるための言い方で、本当はそ
んなにぶつ切りじゃないのだ。並列処理で行われる」
FZR:「……ですか」
狸穴:「ケースバイケースで色々な走り方があるし、動作も
もっと沢山の動きを同時に行うから、そんな壊れた
ロボットみたいな曲り方をしていたら、途中で何か
落ちててコーナー処理の曲率が変っただけで対応出
来なくなっちゃうよ」
FZR:「そうですね。速度の違う2台のオートバイで曲り始
めた場合は、お互いに当らないようにしなきゃなら
ないし、いろんな操作が必要になりますね」
狸穴:「だろ」
FZR:「先日第三京浜の用賀入口のループで、イン側車線を
走っていたZRX1200の人がそうでした」
狸穴:「危なかったねぇ。FZRにも気を取られていたし、
奥でもう一度曲がっていることに合わせられなかっ
たんだよ」
FZR:「わたくしの鼻先2mに車線を越えて飛び出して来た
ので、ちょっとビックリ致しました」
狸穴:「パワーも重量もあるしね。外側車線から小さいエン
ジンのFZRが先に行こうとしたから、競ろうとし
て大きくスロットルを開け過ぎたのだ」
FZR:「当たって跳ばされるかと思いましたわ」
狸穴:「わはは。当たってたら重量差あるし、こちらはアウ
ト側だから前輪弾かれて堪らなかったなぁ。パワー
と重量にライダーがパニクっただけなのだ」
FZR:「見えてたのですか」
狸穴:「左目は生きているからね、ついでにZRXの発する
音はデカいから位置は掴みやすい。ZRXがアンダ
ーステアで前に出て来た時にFZRはちょっとだけ
減速して、その後ZRXが急減速するだろうから、
と思い身体を井桁崩ししてライン入れ換えて、FZ
Rを安全率の高いと思われたイン側車線に一時的に
移動しておいた。で2速に落して全開」
FZR:「回避軌道ですね」
狸穴:「8の字やっていて良かっただろ、あれだけ近いとラ
イダーが焦っているのは手に取るように判るしね」
FZR:「その後ZRXさん達は、後方で減速しながら加速し
たり、向うへ行ったりこちらに寄って来たりしてま
した」
狸穴:「ロデオみたいに暴れてたねぇ」
FZR:「当たったら軽いわたくしでは一堪りもないですわ」
狸穴:「だな。あのZRXもリアにOHLINS入っていて
良かったね、延び側減衰で頑張っていたのだ」
FZR:「大きなオートバイは難しいのですね」
狸穴:「んだ。それにFZRは前後共ABSO入っているし
……ちょっとズルかったかも」
FZR:「ですね。わたくしではあの速度だったら何も起りま
せん。ZRXさんは本線に入ってからは速かったで
す」
狸穴:「さすが1200cc、吸入音がグヮっと大きくなっ
た途端、一気に見えなくなったなぁ。いいなぁ」
それからいつも通り80km/hで保土ヶ谷Pまで行って、持参のおにぎりをお茶で食べ終わると、先程のZRXのライダーと思しき人が3人くらいでやって来た。
FZRを見て、先程ループでインに入った時のラインの切替え方を訊かせてくれという。
そう言われても、どうやって説明して良いか用意していないので、すぐにはZRX言語に変換出来ません。
……重心の移動と同期で肩と肘の脱力かなぁ。
速度のコントロールは別系統の反射回路です。並列処理なのだ。
オートバイも違えば乗り手の体形も違うし……
で、彼等は品川ナンバーだったので、警視庁でやっている講習会を紹介した。
普段乗っている慣れた自分のオートバイで走れる講習会のなのだ。
そこでジムカーナな走り方をすれば、自分のオートバイが走り方やフォームの取り方を教えてくれるということにしたのでした。
大きなオートバイだと当初はちょっと大変か。
そこに行けば自分のオートバイがどう動くのか身体で覚えられるかな。
あっしよりもオートバイに詳しい人もたくさん来てる。
思いどおりに動かない場合は、乗り方が間違っているので、ちょっとだけペースを落してオートバイに乗り方を教わるのだ。
タイムとかあまり細かいことに気を取られていると、自分の動きがよく見えなくなるので、自分とオートバイを傷つけないで帰路に着くことを考えながらやっていれば大丈夫かも。
ある程度判って来たら普段はちょっと広い所で8の字3周〜
もう少し慣れて来たらサーキット。この辺までが基本かなぁ……あとはご自由に。トライアルをやるも良し。
普段は安全マージンをたくさん取っておく。
集中力のレベル維持はとても難しいです。
コレでオートバイは、大抵言うことを聞くようになってくれるのでした。
FZR:「集中力を維持するのって大変みたいですね」
狸穴:「だな、ある程度高レベルに集中出来る持続時間は2
0秒位かな。後は少しづつ弛れて来て、1時間もす
ると惰性で走っている」
FZR:「そうですね。乗物を安全に乗るには想像以上に強靭
な精神力を要すのでした」
狸穴:「FZRの言うとおりだ」
狸穴+FZRx
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