Vol.413 倒*壊 2003-09-01

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FZR:「マスター、今日は涼しいですね」
狸穴:「まだ8月末なのにもう冬って感じだねぇ。FZRはこ
    の位が丁度イイだろ」
FZR:「はい、今日はとても吸気側の状態が良いですわ」

 昼なのに25℃も越えておりませんでした。
 夜になったら更に気温は下がり、都内だがまるで夏の夜に山中湖近辺を走っているような状態。
 今年の夏は3日くらいだったか?
 冬も少ないとありがたいです。
 FZRは、このくらいの気温が一番調子良く走っております。
 あっしの方は暑い分には一向に構わないのだが、逆に寒さに強いFZRは30℃を越えるくらい暑のは適わんのだ。

FZR:「マスターとわたくしが丁度良い気温帯は20℃〜2
    5℃ですね」
狸穴:「だな」
FZR:「夏が短くて可哀想ね、マスター」
狸穴:「野菜も高くて適わん」
FZR:「でもラジヲでは、サンマは豊漁で安くなるって言っ
    てましたよ」
狸穴:「んじゃ、毎日サンマだな。まぁ、喰えるだけありが
    たいのだ。世の中には飢餓で食べられない人の方が
    多いのだ」
FZR:「……ですね。原因は何故でしょうか」
狸穴:「難しい事を訊くなぁ……地理的な気候の問題とか、
    環境的な問題もさることながら、政治的に安定して
    いないとかも原因だろうな。人間達には強い縄張り
    意識があって法律とか国境とか宗教で、お互いに縛
    り合っているのだ」
FZR:「難儀ですねぇ」
狸穴:「きっと人類は全〜部マゾなのだな」
FZR:「縛る。で思い出しましたが、今日わたくしのリアシ
    ート上に縛りつけてあるこの大きなアルミ製の箱は
    何ですか」
狸穴:「小学校で使っていた、食パン搬送用の箱なのだ」
FZR:「……何時にも増してカッコ悪いです」
狸穴:「改造カブを5台も持っている人から頂いたのだ。小
    学校ではもう使わないんだって」
FZR:「何に使うのですか」
狸穴:「コレには小学生用の手に合わせた小さな持ち手がつ
    いていて、そこにバンドを通してFZRに積めば、
    ヘッドとかシリンダーを入れて走っても安定するの
    だ」
FZR:「あの……マスター、わたくしはマゾじゃないです」
狸穴:「頑丈で軽くて便利なのだ」

 と言うことで夜間走っても、この箱を積んでいるとイヤでも目立ってしょうがないのでした。
 反面、さすがにこのサイズの箱を積むと擦りぬけし難いです……。
 いつものすり抜けスピードの半分以下。
 そうこうしているうちに夜になり、タンクの上には先程仕入れて来たCPO10本、後にはこのデカい箱で、き〜氏の所からみぐ嬢が来ることになった第三京浜へ行くことになり、途中R246を走ることになりました。
 たまには空いている駒沢通りもイイかなぁ。
 箱がついているので気になって、すり抜けし難いです。
 この方が無理をしなくて安全なのだ。
 先週みたいに車と接触することも無いし。
 でも途中でR246に入ってからは、き〜氏のSRXに置いて行かれてしまった……。

FZR:「信号で先に行かれてしまいましたね」
狸穴:「止むを得んのだ。箱まで積んで走るのには慣れていな
    い」
FZR:「マスター、このくらいのペースで走って頂けるのな
    ら箱もイイかも」
狸穴:「そか」

 アジトに還るまでは、しばらく我慢です。
 でも、渋谷を抜けてしまえば擦りぬけ〜。
 少し先に行くと、R246右から1番目と2番目の車線の間で、黒色の物体が進路を塞いでおります。
 すり抜けしながら接近すると、黒いのはオートバイ+ライダーのようです。
 自動車とぶつかったのかな……き〜? じゃないよな。
 奴なら、このような間抜けなことにはならんだろ。
 世間じゃビクスクと言われている、黒い250ccのスクータでした。
 あっしの前ですり抜けているオートバイ達は、転倒しているビクスクとライダーの横を通過していってしまいます。
 左右に並んだ自動車の車列も次々と通過しております。
 誰も助けないのだ。
 助けるどころか、ビクスクを起そうとしているライダーを蹴る真似をしながら通過して逝くモタードなライダーもいたり……。
 転倒ライダーはビクスクにてこずってます。
 本来ビクスクは転倒しても重心が低い筈だから楽に起せる筈だが……腕でも折れてるのかなぁ?

FZR:「マスター、どうします?」
狸穴:「やむをえん。FZR、後続の車を止めるぞ」
FZR:「はい、お任せ下さい。今日は渋滞してますし大きな
    目立つアルミ製の箱積んでますから、わたくしに当
    る自動車はいないかと思いますわ」
狸穴:「ははは、パン箱もこう言う使い方があったか」

 R246の中央車線上でウィンカーを点けてFZRを離れます。
 こんなときにはハザード欲しいなぁ……早くウィンカーをLED化してデジタル回路にしたいなぁ……。
 発光部も超高輝度LEDを多発で強力に光るようにしないと……。
 今造って用意してある発光基板は造り直しだなぁ。
 近ついて見ると、倒れたスクーターの回りに黒いゴミ用のビニール袋に入った婦人衣料と婦人モノの黒いナイロンバックが路上に散らばってます。
 拾います。
 スタイリスト屋さんなのかな……バーゲン会場の戦利品かな。

狸穴:「落着いて。助けるよ」
ライダ:「ども、車に当たっちゃって……」え〜ん。

 ビクスクを起そうと足掻いてます。
 アレ……女の子の声だった。
 現場の安全を確保することを優先していたので、ライダーの顔を確認してなかったよ。てっきりDQNビクスクが多い246だから、ヘタなヤローが勝手に車と当たったのかと思ってた。
 改めてよく見ると可愛いです。ドキドキ。

狸穴:「とりあえずアナタのオートバイは、あっしがそこの
    路肩まで運ぶ」
アナタ:「はい! ありがとうございます」
狸穴:「倒れたオートバイは、ブレーキを握って膝を下に入
    れて……こう起す」
アナタ:「……起きた〜!!」
狸穴:「んじゃ、アナタはこの荷物持って安全確認しながら
    路肩まで行って待ってて」
アナタ:「はい」

 緊張が解けかけて、ちょっと舞い上がっている様子なので、一瞬アイコンタクトをとった時に落着くように浅く『術』を掛けます。
 ビクスクは右のハンドルバーがちょっと中に入ってるねぇ……ヨイショ。ミラーは明後日の方向いてる。
 舗道じゃ野次馬が見てるなぁ。
 コレじゃ俺がやったみたい、カッコ悪〜。
 押した感じではフレームは逝ってない様子。良かった。
 外装は当たった右前が崩壊してます……。
 押して路肩に辿り着くと、

アナタ:「ウッ……ありがとうございます〜」
狸穴:「待ってて、あそこでまだ頑張って自動車停めてるあ
    っしのオートバイを取りに行くから」

 ホーンのシャワーを浴びながらもFZRは頑張ってました。

FZR:「直後のアルファさんにもお願いして、車列を停めて
    おりました」
狸穴:「上出来だ。ここは都内でも一番交通量多いもんね。
    良く頑張った」
FZR:「はい」

 アルファ氏にお礼を言ってFZRも路肩に到着。

狸穴:「身体は?」
アナタ:「大丈夫です」
狸穴:「良くチェックした方が良いよ、腕とか膝とか」

 たぶん当たったであろう右手をちょっと握ってみました。
 痛がりませんから折れてはいないでしょう。
 立って歩いていたから脚も大丈夫かな。
 衝撃はビクスクがほとんど吸収したのだな。

狸穴:「どしたの、原因は?」
アナタ:「流れるように走る、黒いオートバイの人のすぐ後ろ
    についてすり抜けしてたら、急ブレーキを掛けた車
    とぶつかりました」
狸穴:「そのオートバイに吸込まれたねぇ。自分のペースで
    走ってなかったでしょ」
アナタ:「はい」
狸穴:「……誰も助けてくれなかった?」
アナタ:「……」

 って事は、き〜ならばこの状況だと必ず助けたろうし……この娘の前を走っていたのは……。

狸穴:「あなたが当てた車は?」
アナタ:「行ってしまいました」
狸穴:「ありゃ……良かったのか悪かったのか……事故現場
    から勝手に行っちゃったのか。ホントはイケナイん
    だけどね」

 アナタは目をうるませてます……泣くなよ〜頼むから。
 よく見ると真新しいビクスクは右前部パーツを破損。

ビクスク:「折角の漆黒ボディーが、ガァーンと……イタいです」
狸穴:「よしよし」

 ビクスクの車体幅は、1000ccクラスのオートバイよりあるのだ。
 残念ながら、この娘はそのことに気がついていないのだな……。
 先天的な空間認識能力の欠如かなぁ。
 AT免許なんかが施行された日ニャ……そこかしこでこの状況が発生するのか。
 ……保険料率は別枠にして頂きたいです。

狸穴:「これからどうする」
アナタ:「オートバイ屋さんに行きます」
狸穴:「この時間じゃやってないよ」
アナタ:「明日行きます」
狸穴:「そか。んじゃ気をつけて……『落着いて!』ね」
アナタ:「はい。ありがとうございました」
狸穴:「お互い様」

 次に、同じようなことになっている奴がいたら助けてやってくださいね。
 もうしばらく落着いていた方が良いだろうし、掛けた術は浅いからそのままでも家に着いて本格的に落着いたら、すぐに解けるだろう。
 サヨナラ〜。

FZR:「可愛い子でしたね」
狸穴:「だな」
FZR:「マスター、あのタイプ好きでしょ。軽く電波が出て
    たので、すぐに判りましたわ」
狸穴:「だね、好きなレンジの電波だった」
FZR:「良かったですね。大怪我じゃなくて」
狸穴:「大怪我だったら救急車呼んだり、入院の際の手続き
    で今ごろは大変だったかも」
FZR:「ビクスクのライダーさんは、総じて自分の車体の大
    きさをよく理解していないような気がします」
狸穴:「俺もそう思う。ついでにATで加速だけは良いから
    ね」
FZR:「マスターはビクスクに乗ったことありますか」
狸穴:「あるよ。フュージョンって言うもっとデカいの」
FZR:「どんな感じですか」
狸穴:「ある程度慣れて来ると、気が大きくなって多少当て
    ても構わないや〜と言う感じで、更にアメリカンの
    乗車ポジションだから、気分的には横柄な運転にな
    る」
FZR:「AT免許、大変なことになりそうですね」
狸穴:「だな。スクーターはホイール径も小さいから、急激
    な軌道修整には耐えられないけど、それを乗り手に
    上手く伝えて無いもんね。特に日本製のビクスクは
    初心者でも乗り易くするために、その辺り気がつき
    難いかも」
FZR:「自分の出している速度や、危険率の上昇程度をライ
    ダーに伝えていないというのは、危ないですね」
狸穴:「だから重大な事故になるのだ。ついでにビクスクの
    ライダーは、二輪経験の浅い初心者率が高い」

 厄介です。

 保土ヶ谷に着くと、料金所の所でみぐ嬢のSRXと一緒になった。
 みぐ嬢は上から下までしっかりしたライディング衣料できちんと武装してました。
 正解です。
(ペアスロープってメーカーの上着はカッコイイなぁ。ちょっと高そうかな)
 この辺が、オートバイ乗りとスクーター乗りの違いかなぁ……。
 スクーター乗りは、オートバイ乗り以上に運転技術が高くないと。
 スクーターに乗られる方は、その辺りを良くご理解の上でご乗車下さい。
 二輪メーカーや教習所やお役所にも、その辺のことを良くご理解頂きたいです。
 ビクスクは簡単に乗れるのだが、その構造上、運動性能は高くないのでした。
 多くのビクスクライダーはビクスクに乗せられてます。
 あまり性能が良過ぎるのも問題かも。
 同じスクーターでも、イタルの中型スクーターはもっと鋭敏で緊張感が高かったです。
 AT免許や1000ccクラスの免許も、自動車の2種免許のように、3年以上MT車に実際に乗ってから、更に難しい試験を受けて交付されるようになってくれると良いのだが……。
 タカが3年程度じゃ、二輪の運転はそれ程上手くなれないか。
 時々トライアルとかジムカーナやって、毎日R246で通勤していれば1年でもある程度は巧くなるか……。

 保土ヶ谷Pに先に着いたき〜氏に訊いてみたら、

き〜:「同じポジションを走っていたが、そんな現場は見て
    いない」

 とのこと。

狸穴:「んじゃ、『前を流れるように走っていた黒いオート
    バイ』は、信号のタイミングから言ってコレじゃな
    いの〜?」
き〜:「今日は調子もよかったし、あのペースじゃ……まず
    ついて来れなかったかも。それに、後方じゃ何が起
    きても判らん」
狸穴:「そりゃそうだ。残念だったねぇ、と〜ても可愛い娘
    だったよ〜」(ちょっと電波出てたけど)
き〜:「速度も充分に落していたから、危険な走り方じゃな
    かった……でも吸込んじゃったかも」
狸穴:「俺と順番が逆だったら良かったかな」

 残念なことに、あっしも彼女のことを一切聞くの忘れていたのだ。
 いつか偶然にも会うことがあったら求婚しておこう。今回は忘れてた。

FZR:「ますたー、いつもイタイケなお嬢さんを見つけては
    挨拶代わりに、いきなり求婚しているようですが…
    …実際に実ったことはありませんね」
狸穴:「わはは。みんなどこの誰か判らないモノに求婚され
    ても断るのが常だし、しばらくつきあって、相手が
    不老不死のヒューマノイドだと判ると実る前に去っ
    て行くのだ」
FZR:「ですね。わたくしはオートバイだからあまり感じま
    せんが、人間の女性では自分だけ歳をとっているの
    に、マスターが変らないと言うことは、恐怖を伴う
    ことかも知れませんね」
狸穴:「だな。それに俺は時々石になったり木になったりす
    るから、結婚と言う形式には合わないかも」
FZR:「ルールはないし、生活の安定しない渡世人だし、わ
    がままですモノね。人間のお嬢様達にとっては一番
    厄介かも」
狸穴:「良くお判りで」
FZR:「永い付合いですから。5000年前にエジプトにお
    られた、水売り娘型アンドロイドさんとか、中世ト
    ランシルバニアの血を好むお嬢様がお似合いですわ」
狸穴:「だな」わはは

アナタ+ビクスク き〜氏 マミアナ+FZRx

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