| しばらく前からカワサキの旧車KM90が来ている。1970年代のオートバイだ。
ほぼ12年間動いておらず、結露により至る所に腐蝕が発生。
外装のアルミ地は徹底して酷い。
水の惑星地球なのだ。
FZR:「まるでわたくしの初期の頃と同じ恐ろしい状況です
わ……」ジッと見る。
狸穴:「似てるねぇ」
FZR:「マスター、KMさんのキャブのフロート室には、ガ
ソリンではなく水が満たされております」
狸穴:「ホントだ……ホって置くと屋根の下にいても、こう
いうことになるのだ……」
その水が手についたらそこがピリピリしてる……なんだろう。放射性?(セシウム出たら困るなぁ)
FZR:「2stだとクランク室はキャブと繋がってますよね
……」
狸穴:「わちゃ〜、クランクも12年間水没……だ」
キック・クランクを回すと、排気ポートからかつて水だったモノが、粘性を帯びた紅茶色で断続的に排出されて来ました……バットに受けます。
主成分は水とわずかなオイルとクランク構成材? KM90って水冷だったっけ???
ピストンもカーボンが固着……コレではピストンヘッドに刻印されているはずのサイズが見れません。
で、クランクケースカバー3点、前後ホイール&ハブ、シリンダー、ヘッド、ピストンヘッド、排気管、その他ショートパーツをブラスト処理です。
ドラムブレーキを兼ねるハブも、重度の腐蝕で表層はダメなので全部剥ぎ取ります。
フロントフォークのボトムケースも同様でガビガビ。
クランクケースカバーやシリンダー関係も同様なので、外側だけ粉を吹いたような錆をブラストで削り落とします。
ブラストのアルミナ粉(硝子ビーズじゃダメだったのだ)の圧送を最大にしているので、当っている所ではアルミナが薄ら赤く焼けています。
ゴムの長手袋の中は集中しているので汗でビッショリ。
地金が出て来たらパーツはキレイになりました。
昔のオートバイは「材」は良いようです。
フォークのインナーチューブの錆も酷いです。
インナーチューブは既にメーカー在庫はなく、予算の都合もあり丸一日掛けて研磨します。
本当は、インナーチューブを再生研磨を得意とする職人さんに研磨と再メッキまで依頼したかったのだが、予算が無いので自分でやります。
少しは良くなって来たかなぁ……。
オイルシールが逝かれない程度までにはなりました。
ブレーキパネルもハブのドラムもキレイになりした。
燃料タンクも内側が錆びていたので、酸ポールみたいな薬品で錆び取り。
ハンドルバーもブラスト→洗浄→足着け(クリア)→塗装です。
一通り外装の修復が終わるとKM君はこのとおり……
FZR:「キレイになって来ましたわ」
狸穴:「化石の発掘調査みたいだね〜」
FZR:「……ご機嫌いかがですか>KMさん」
KM: …………
FZR:「あっ、まだエンジン様が不動でしたわ。安静の所を
失礼致しました」
狸穴:「FZR、焦っちゃ駄目だよ。ここで無理に覚醒させ
るとKMはロータリーバルブなのでエライ事になって
終う」
高速で回転するロータリーディスクバルブには傷はつけられないのでした。
で、エンジンの中を応急的に処置開始。
2st単気筒空冷なので楽です。
貼りついたクラッチ板を一枚一枚はがして、再生したモノと交換。
2stなので燃焼オイルのポンプも洗浄&点検。
ロータリーディスクバルブも手作業で錆や汚れを落します。
ピストンは固着したカーボンを剥がしてみると、既にオーバーサイズ化されていました。
確か以前にオーバーサイズにした記憶があったのだ。思ったとおりでした。
これはあっしが昔〜仕上げたエンジンだったのだ。
7000rpmくらいから振れ始めるピストンの重量バランスを合せるために、削った跡がありました。
スカートが長いタイプなのでwooが効きそうです。
今回この作業をする前に、クランクシャフト回りはめずらしいことに、あるKM90愛好家の方から新品ストックのクランクシャフトassyを分けてもらっていたので、交換です。
でも、そのクランクシャフトも新品未開封にも拘わらず、クランクピンが錆びていたり……でバラして大端部ベアリングもストックパーツから交換してピンも造り直してバランス取りになりました。
ということでKM90のロータリーディスクバルブの錆をとって、GESスプレーにて強制的に潤滑し、上記のクランクがある80km離れた内燃機屋まで50km/hにてミッション錆び落としとのテストランを兼ねて自走です。
タイヤの中のチューブも捜し出して新品に交換。
でも間に合わなくてブレーキスイッチが一切ついていないのは内緒だ。
ということで、FZRにあらかじめ内燃機屋さんで待機してもらいKM90で出発〜。
狸穴:「久々にエンジン復活、路上を走る間隔はどうだ?」
KM:「ごっつ、エエなぁ」
狸穴:「でもまだしばらくは時速50km/hでリハビリだ」
KM:「そうでんな」
久々に路上を走るKMは現代の交通の流れに揉まれながらなんとか走っております。
でも、まだ交換していない錆びていた水没クランクの軸受ベアリングのガタが大きいので、ギュリギュリ鳴ってますし、シフトもとても硬いです。
リアショックはオイルもガスも全部出きり、バネだけ……減衰がまったく効いていないので真っ直ぐ走っていても車体がシェイクしてます。接地感わずか……。
腐蝕して穴の開いていたフロートはハンダ修復も効いたようで、適切なフューエルレベルを維持しております。
なにはともあれ、30年前の90ccのオートバイが再起動しました。
80km離れた内燃機屋さんに到着するまでに、二度ほどエンジンがダウンしましたが、点火系と燃料系を、深夜食堂の軒先を借りて雨宿りしながら修復して、なんとかFZRの待つ内燃機屋さんに到着。
久々にホイールベース1100ミリのオートバイに乗ってみると、自分が普段FZRxの恩恵に預かり過ぎていて、車体を安定させることがヘタになっている事も痛感。
たまにこうして空冷時代のミニバイクに乗ってみるのもイイかも。
コーナリング・ラインを自分で決めて、そこを安定して走らせるだけで、物凄くたくさんのテクを使います。
特に普段から大型オートバイに乗っている方にはお薦めです。
一気に数段、ライディング巧くなりますよ〜。
安全マージンを自力で稼ぐためにテクを使い尽くすのだ。
(大したテクじゃないけどね……)
KM90 マミアナ+FZRx |