Vol.377 前輪 2003-04-05

←前回 次回→


狸穴:「そろそろ限界だねぇ」
FZR:「最近雨の日が多いですものね」

 FZRの履いている前タイヤのGPR80が、ついに使用限界に達したのでした。


 3分山になった頃からトレッド面の厚みが減り、路面を踏む感覚に鈍さを感じるようになっていたのですが、この状況でもまだ初期の性能を有しておりました。
 このGPR80というタイヤ、とても良かったです。
 何が良かったかというと、路面の細かな凹凸を良く吸収し、コーナリングの際にもある程度ヒラリ感もありながら高度に素直な反応をしております。
 これと言って尖った性格はないのですが、保ちも良く、排水性能も高く、制動時のブレーキトルクの伝わり方も常に素直な感じです。
 曲っている時に減速を掛けてもコントロールから外れる事も無く、スリップ・アングルが急激な変化をする事も無く、スライド時からグリップ状態に移行する際のアクションも良く抑えられたオールラウンドなタイヤでした。
 普通に走っていても、ある程度攻めていてもタイヤの動き方自体には大きな変化が無いので安心して走れるのでした。
 ただ、さすがにスリップサインが出始めると、トレッドゴムが薄くなって来た事もあり、わずかにですが接地感が柔らかく扁平足な感じがし始めました。
 この状態でもコントロールに難が出るような事は無いという、素晴らしいタイヤなのでした。
 ある程度ライディング・スキルの高いライダーがオートバイを調整した上で履けば、かなり攻めることも出来ます。
 更にハイグリップを達成しているタイヤと比べても大きな差は無いと思います。
 スキルが低いライダーが攻める場合には、タイヤの絶対性能に頼る率が上がるので、その場合はあとすこし旋回時の安定維持に振られた性格のGPR70とかの方が良いかなぁ……程度です。
 使用限界まで使ってみた後のこのタイヤの感想は、『アナログな感じのしっとりした最後までグリップをするニュートラルなタイヤ』という感じ。
 普通に使う分にはスリップサインが出る手前まで、しっかり性能を維持してくれる良いタイヤでした。

FZR:「わたくしの車体でも充分に使えるタイヤでした」
狸穴:「だね〜、FZRには丁度良かったかな」
FZR:「アタリが固くないので、マスターが攻めていても普
    通に気を抜いて走っていてもタイヤ自体のアクショ
    ンには大きな変化が無かったので楽でした」
狸穴:「タイヤに『素直さ』を要求する、という事はとても
    高いバランスを要求している事になるのだ。GPR
    80はそのあたりも達成している」
FZR:「排水性も、溝がかなり減ってからもトレッドパター
    ンが発達しているので危険を感じるような状況には
    至りませんでしたわ」
狸穴:「コレを造ったメーカーの人に感謝だな」
FZR:「はい」

 普段はタイヤをココまで使いませんが、今回はスリップサインが出るまで使用してみました。
 色々な車種に選択するのでこのくらいまで実験した方が良いのだ。
 一般公道で使うならば、結果は◎。

FZR:「次のタイヤはどうするのですか」
狸穴:「また同じGPR80にしようかなぁとも思ったのだ
    が、いまFZRはリアにBT92Rの140/60
    −18を履いているから、それに合わせてフロント
    もBT92F:110/70−17にする事にした」
FZR:「久しぶりに前後同じセットのタイヤですね」
狸穴:「クラス分けすると、GPR80もBT92も同じク
    ラスに属するタイヤらしい」
FZR:「基本的にはタイヤは、前後で同じ銘柄のモノを入れ
    た方が良いのですよね」
狸穴:「余程の狙いがない限りはね。普通は前後同じタイヤ
    が決まりだ」
FZR:「何故わたくしは今まで前後違うタイヤを履いていた
    のですか」
狸穴:「FZRは前輪ホイールにSRXモノサスのホイール
    を使っているだろ」
FZR:「はい。改造されてます」
狸穴:「SRXモノサスのホイールは、実のところちょっと
    FZRの車体重量に対して重量があるので、タイヤ
    の性格がワイドに振れる事を優先してリアタイヤと
    少し性格を変えたGPR80を選んでいたのだ」
FZR:「GPR80は受け持ち幅が広いですものね。BT9
    2Fは狭いのですか」
狸穴:「狭い訳じゃなさそうだけどデータしか手元に無いし、
    まだ使い込んだ事はないので良く判らん」
FZR:「そうですね、履いてみないと判りません」
狸穴:「で、ついでに前後のホイール重量をFZRの車体を
    合せるために、今回はフロントホイールをXJR4
    00初期の軽量なものに同時に換える」
FZR:「XJRさんのですか。合うのかしら」
狸穴:「SRXモノサスのホイールと、XJR400の初期
    のハブ部が小さいホイールを比べると色々違うのだ。
    FZRの重量的には合うはず」
FZR:「軽くなるのですね」
狸穴:「んだ。若干の軽量化なれど、バネ下で更に回転パー
    ツとなると軽量化の効果は大きい」
FZR:「ステアも担当する前輪ですと、かなり大きな変化に
    なりそうですが……」
狸穴:「だからBT92Fを選んだのだ」

 以前TZR250後方排気で、今回と同じGPR80→BT92Fをチラッと体験した時にBTの方がタイヤ自体の直進安定性が高かった事を思い出したのでした。
 ただ、チラッとしか乗らなかったので細かな所までは判りませんが、なんとなく合いそうな感じでした。

 ダンロップ社の考え方とブリジストン社の考え方に違いがある、その部分が気になるのでした。
 タイヤが変わるのでサスのセッティングも前後とも変更を予定しております。
 FZRがどれだけ新しいタイヤを受け入れられるか、というテストも兼ねます。
 FZRも早々ノンビリ構えていられないのでした。

FZR:「大変かも……」
狸穴:「FZRはBTを使いこなせるかなぁ〜」
FZR:「タイヤが変わるということは、わたくしの脚回り試
    験にもなるのですね」
狸穴:「んだ」
FZR:「でもマスター、わたくしとしてはマスターがBTを
    使いこなせるかどうかのテストでもあると思います
    が」
狸穴:「……そうだった。う〜んコレは大変かも」

 タイヤの銘柄や製造ロットが変わるだけで、実は大変なのでした。
 タイヤのエア圧、ショックのセッティング、エンジンの出力特性、ブレーキパッドの性能、アンダーブラケットやスイングアームピボットの精度(コレに関しては心配しておりませんが)等色々考えておかなければならない事がるのでした。
 これらを合せながらセットアップの開始です。
 このようにして得られたデータは、他の車種やタイヤにも応用出来るのでした。

 ということで、XJRのホイールにBT92Fをタイヤ屋さんで入れてもらい、ベアリングの打ち換え。


 FZRのアクスルシャフト径とXJRのホイールのベアリング内径は違うので、7075T6製のサボもインナーカラーも新造です。
 ディスクの縦方向のセンターは運良く現状のFZRに合いましたので、ブレーキサポートの製作は今回は無くて済みました。

 で、装着。
 今回は流用したホイールの色が黒いので、なぜか前回りが重たく固い感じになってしまいました〜。

FZR:「マスター、似合いますか」
狸穴:「前が黒いホイールで後が白いホイールだからなんだ
    か変だねぇ……」
FZR:「SRXのホイールの時には、アメリカ〜ナなわたく
    しは、『ちょっとだけお姉さん』という感じでした
    が、今回の黒いホイールだと『コーディネイトに失
    敗しますた』という感じでカッコ悪いです」
狸穴:「確かに……変だな」
FZR:「アメリカ〜ナのカラーデザインに合いませんわ」
狸穴:「困ったねぇ……」
FZR:「困りました……」

 アメリカ〜ナには黒は重た過ぎる感じです。
 小僧が急造で、とりあえず何も考えないでパーツを寄せ集めて付けましたという感じになってしまった。
 カッコ悪く目立ってしまいます。
 ナントカせねば……。
 オートバイにとってホイールの色目は大きな面積があるので、間違えると困った事になるのでした……。
 反省です。

狸穴:「しばらくは我慢してくれ」
FZR:「……はい」

 でもコレで乗れるようになったので、とりあえず走行〜。
 新たに装着されたXJR400ホイールとBT92Fの組み合わせの動きは、予想の範囲内なれど、ちょっと難しい感じです。
 BT92Fの動きは、使い切ったGPR80の動きと明らかに違う。
 前述のとおり直進性はBT92Fの方があります。がヒラリ感はGPR80の方があります。
 BTだと曲り始めの一瞬だけタイヤの幅を感じます。
 リーン行動が開始されると、接地点が今までよりも手前イン側に移行した感じ……。
 前輪の軽量化によりフロントのショック収束性は上がりました。
 ホイール自体の剛性はSRXのモノより若干固いかも……。
 まだなんとも評価しようはございませんが、ちょっとバラバラな感じです。

FZR:「なんだか各動き方がデジタルな感じになりました」
狸穴:「だね……まぁ、コレもこれから合せて行くから……
    それにまだタイヤ自体のナラシが済んでいないし。
    今の時点では評価は出来ないな」
FZR:「各動きのタイミングが合って来れば芯が見えて来ま
    すよ」
狸穴:「だな」

 ということで新しいタイヤの馴らしと、お呼ばれしている諸用も兼ねてFZRと花見。
 港区麻布の城山ヒルズという所の新しく造られた街の桜並木を見に行きました。


 完全に管理された都会の新造の街は壮観です。
 場所は霊南坂教会近辺。
 まだ、都心の名所として有名になってはいないので見物客も少ないです。
 御座や無粋な青シートを拡げて泥酔の揚句に桜によじ登って落下→救急隊という方も見受けられなかったので、奇声も聞えず人はおりますが静かでとても大人な夜桜見物。
 実はFZRの懇意にしていた桜は、その会社が倒産した事により無くなってしまったのでした。
 で、新たに桜を探しに動いていると、丁度良い桜の山があったという訳でした。
 5年ほど前は、この地一帯は都心の住宅廃墟地帯だったのです。
 或る作家さんの本の挿し絵に使う写真の仕事の依頼で、ゴーストタウンの撮影をしていたのだが、その廃墟がふんだんにお金をかけて地形まで造り直した国際ビジネス都市に回生したのでした。
 まだ生まれたてのこの街は、データとドルと電気が支配する街です。
 ファジーとか華美とか猥雑とか有機的な部分は持ち合わせておりません。
 こんな未成熟な街に属する人の顔にも桜が咲いているこの時期だけは、顔に張付いた薄くて固い仮面の下の口元に笑みを忍ばせております。
 桜の樹は凄いのだ。
 この街はこれからどんな風に成長して行くのかな〜。
 今のところはアンドロイドを真似た人間みたいです。
 しばらくはこの街で仕事をする時には、顔の無い魔法使いに徹しよう。

狸穴:「狸穴町の近所も変わったものだ……」
FZR:「ですね。大人の街ですわ」
狸穴:「フロントだけ黒いホイールのFZRにはちょっと辛
    いかな」
FZR:「大変居ずらいですわ。早く塗り直してください」
狸穴:「へいへい」

 夜桜見物をしてると、雨が降り始めた。
 事務所で確認した天気予報では雨は0時過ぎからということだったが、2時間も早く降りだした。
 タイヤがまだ新品なのに……。
 と思いながらも雨に文句を言っても仕様がない。
 排水性能のテストも出来るか……ということで帰路に付きました。
 程無くすると雨は本降り。

FZR:「最近は良く雨の中を走りますね」
狸穴:「だな。春は雨が降るんだよ、桜も早く散っちゃうね」
FZR:「ですね……」

 新しいタイヤは……滑る滑る〜。
 フロントがあっちへ行ったりこっちに行ったり、突然で予測が出来なくて面白いです。
 こういう状況下では、脱力してニーグリップをしていれば一応、大丈夫なのでした。
 焦ったら重力に負けて転けます。
 タイヤのナラシが済んで一皮剥ければ、この状況も一変するでしょう〜。
 そこからがBT92Fの本領発揮なのだ。

マミアナ+FZRx

←前回 次回→

FZR250 トップ NS400R TOP


Copyright © Taro Mamiana, COMBINED ARMS 1999-2005.