Vol.368 豪雨 2003-03-03

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 毎年この時期になると、関東南部では時々勢いよく雨が降ったりするのでした。
 いつもお世話になっている闇ガレイジのご要望により、事案を済ますために走る事になっていたのでした。

FZR:「マスター、今日は天気予報では午後から雨だそうで
    す」
狸穴:「所により豪雨らしいね。いつもどおり雨粒を一粒づ
    つ避けて走ろう」
FZR:「最近少し暖かいから、雪にはならないようですけど」
狸穴:「タンクの上には雨合羽もあるし、大丈夫だろ」
FZR:「そうですね、わたくしはいつでもマスターの雨合羽
    をタンクの上に乗せて走ってます」

 FZRのタンクの上にはいつでも雨合羽を入れたヘルメット袋が、ゴムを編んだネットでとめられているのだ。
 この袋のお影で、細々したモノを溢さず積めるし、荷物をタンクの上に積む際にはFZRも傷つかずクッション代わりに使って安定を確保出来たりするのでした。
 見た目はちょっとカッコ悪いけど、苦手なタンクバックほどかさばらないし、走行時にわざと邪魔になるようにいつも持ち歩いている肩掛け鞄を、タンクの上で抱える時にもズレないようになっているのでした。

FZR:「その鞄が無いと、マスターはバランス崩れるのですよ
    ね」
狸穴:「いつも抱えて走ってるからねぇ。それに鞄が無いと操
    作を邪魔する物が無くなるので、タガが外れて速度を
    出し過ぎるのだ」
FZR:「丁度良いリミッターですわ」

 と言う事で一路、千葉の奥地へ。
 タンク上に積んでいるのは、SRXツインショック車用のアンダーブラケットのプロトタイプ。
 今FZRが使っているアンダーブラケットと同系のモノなのだ。
 ツインショックのSRXが持つ優美なラインを損ねないように、左右のスパンを繋ぐ腕の部分がアーチ型にデザインされたキレイな物なのでした。
 アーチ型と言うのはシンプルですが形状的にとても応力に強く、かつデザイン的に安定した形です。
 曲率は完成された形のツインショックのSRXのデザインにはまります。
 考えられているのだ。

FZR:「大切に運びますわ」
狸穴:「んだ」

 で、日が暮れた頃にステム圧入を済まして帰路につこうとすると、予報どおりに天空から雨が降りだした。
 初めはポツリ程度だったが、しばらくすると降りが多くなり始めた。
 あらかじめ合羽を着ていたので、問題無し。
 FZRも雨程度で走れなくなるような柔なオートバイではございません。
 だたオートバイなので、やっぱり雨よりも晴れている方がありがたいです。

狸穴:「降って来たねぇ」
FZR:「大丈夫ですか」
狸穴:「メガネさえ濡れなければ大丈夫」
FZR:「メガネが濡れると、視界が曇って大変ですものね」

 普段の雨合羽に加えて今日はブーツカバーも装備しているし、先日から寒さ対策でハンドルカバーは着けっぱなしだから、雨に対しても今回は最高の装備なのでした。
 装備を着けている間に雨脚は更に強まった。

狸穴:「FZR、大丈夫か」
FZR:「この程度の雨でしたら、わたくしは大丈夫ですわ」
狸穴:「元々FZRはメーカで耐水性能を充分確保されてる
    もんな」
FZR:「はい。マスターの合羽の具合はどうですか」
狸穴:「16年前の製品だし古いからねぇ……ファスナーが
    首元で壊れているから完全には締まらないから、ち
    ょっと漏れてるが大丈夫だ」
FZR:「あと40km程で到着です。頑張って走りましょう」

 そうこうしている内に雨は豪雨になってしまいました。
 春一番らしく風も凄いです。
 すっかりあたりは嵐の様相。
 回りの車のワイパーブレードは最高速で動いております。
 それでも足りないらしく、自動車達は速度を落し始めました。
 いつもはゆっくり走っているあっし達を急っ突いて来るのにぃ……。
 さすがにシールド越しの外界は雨で煙ってます。
 帰宅ラッシュの時間だし一般道では道幅が狭く、すり抜けが出来ないのでサッサとガレージに戻るために高速道路の恩恵に預かろうか、と思っていたのだが、そう言えばフロントタイヤの溝が減っていたんだっけ……速度は3桁以上に上げられん。
 で、高速道路は却下。
 まぁ、混んでいるのも一部区間だけだし、少し進めば一級国道に出れるから道幅も拡がるし……こりゃ、我慢だな。
 しばらく自動車達の渋滞に合わせてカメのように走ります。
 普段着けていないブーツカバーを履いているので、あまり足を付きたくはないが、車列が渋滞しているので頻繁に足を付く事になりました。
 少しづつブーツカバーがズレて垂れ下がって来ます。
 時々修整。
 面倒だなぁ。
 今度はケチらないで、ちゃんとしたブーツカバーを選ぶ事にしよう。
 もっとも、今日みたいな日は始めから雨用長靴を履いて来れば良かったのだけど、作業があることも想定されていたのでブーツカバーの中は普通の靴なのでした。

FZR:「マスター、雨脚が凄いですね。こんなに降っている
    中を走るのは久しぶりです」
狸穴:「ヘルメットを雨が叩いてうるさいので、FZRの出
    している音を使って回りの車からの反射波を拾えな
    い」
FZR:「視界はいかがですか」
狸穴:「強力なHIDの光があるから路上のペイントは確認
    出来るが、全体的には良くない」
FZR:「そうですか、ではわたくしの方でも路面をスキャン
    して走ります」
狸穴:「よろしくね」

 混み合う千葉市内を抜けて渋滞からも解放され始めた。
 と、先行している20t積みくらいのトレーラーが、一瞬浮いたような感じにになって後部を少し振った。

狸穴:「をを……アレに巻き込まれてたら大変だ」
FZR:「マスター! ココは深い水溜まりですわ」
狸穴:「ありゃ」

 トレーラーは水に浮いたから滑ったようです。
 その直後にいたあっし達は、まるでモーゼ氏が海を割って作った道を進むようにして水溜まりを走っていたのでした。
 トレーラーもモーゼ氏ほどパワーは無かったらしく、すぐに水が戻って来ます。
 こんな事ならモーゼを連れて来れば良かった。
 FZRの前輪が水に浸かり始めると抵抗が増えて、速度は急激に落ちました。
 水の量はタイヤの排水能力をあてにする以前の問題なので、速度とギアを更に落します。
 10km/hくらいまで落して水溜まりを船のように進みます。

FZR:「マスター、この水溜まりの底に何があるか見えます
    か」
狸穴:「濁っていてなんだか判らん。が、ヘタに止らない方
    が良いかも」
FZR:「この先もっと深くなっていたら水没してしまいます……」
狸穴:「大丈夫。先程トレイラーが水を割っていた時に、一瞬
    だけど大体の地形は記憶してあるから、あの軌跡をた
    どれば脱出可能」
FZR:「でもわたくしのブリーザーパイプの位置が水没しては
    ……」
狸穴:「それも対策済。こ〜んなこともあろうかとFZRのエ
    ンジンブリーザーパイプは改装済み」

 左足を出してみると、ひざ下3cmまでの水深。
 FZR的にはクランクケースの上に水をかぶっている状態。
 ホイールも半分+位まで水没してます。
 あっしが乗っていると、サスが沈みその分FZRの車高が下がってヘッド回りに水をかぶり易くなるので、サッサと降りて水溜まりから脱出するまで、エンジン回転を4000rpmに保ちながら半クラッチで押す事に致しました。
 見切りは速いのだ。

FZR:「マスター、頑張って!!」
狸穴:「エンジンは停めるなよ。ここで止まる訳には行かな
    い」
FZR:「はい。でも水温が……マスターの体温と同じくらい
    まで下がってます。なおも降下中」
狸穴:「半分水に浸かってるからねぇ……」

 近くでは水没して航行出来なくなった自動車が2台ほどおりました。
 その横をソロソロと通過……。
 残すは10mくらい。
 左腕のナノマシンを最大活性化でFZRを押しながらクラッチ調整、時々ショートしてます。
 こおろぎ回路は水面下の路面状況をスキャン。

FZR:「マスター。当艦の4番シリンダのプラグキャップが
    水をカブったらしいです。現在出力3/4に低下…
    …半クラッチ維持のシークエンス続行のためクラッチ
    発熱は上昇中」
狸穴:「大丈夫。水から抜ければ他のエンジンは起動している
    から、プラグに熱が回って来て乾燥するのですぐに復
    活するさ。浸水じゃない」
FZR:「はい。マスターのブーツカバーは浸水してませんか」
狸穴:「長めのブーツカバーだから高さはギリギリ大丈夫みた
    い」
FZR:「右足首は錆びるから、あまり濡らしてはいけないので
    すよね」
狸穴:「んだ。でも今日は少しなら平気」
FZR:「仕組みはわたくしのチェーンと同じですね」
狸穴:「『かなわぬ敵にも一まずあたれ』『苦しい時こそニ
    ヤリと笑え』と島本氏が歌ってた」

 で、やっと水溜まりから脱しました。
 アンダーカウルからはサバサバと水溜まりの水を放水中。
 FZRとあっしは大量の水蒸気を噴き上げながら暖機再開。

FZR:「危なかったですわ」
狸穴:「排気管出口と吸気管入口が冠水しなければ、重要な
    電装系は高い所に這わせてあるし、少しの間くらい
    は保つのだ」
FZR:「exupのバルブも最少開度にして、排圧を上げて
    おりました」
狸穴:「水圧には耐えたか」
FZR:「タイヤが半分も水に浸かると結構な重さなんですね」
狸穴:「水は空気と違って質量があるからね。掻き分けるだ
    けでも重たいさ」

 水から出て3分ほどアイドリングを続けていると、4番シリンダーも回生しました。
 クランクケースの中のエンジン・オイルは適量で白濁しておりません。

狸穴:「んじゃ、また走るか」
FZR:「はい。積み荷は大切に持っておりますわ」
狸穴:「上等だ」

マミアナ+FZRx

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