| つい先日打ち換えたばかりのステムベアリング。
新規にアンダーブラケットを入れ換えるために分解した。
構想2年半くらい。ことのついでと言う事で出来上がった、先日Vol.357でチラッとお伝えしたover qualityなアンダーブラケットなのだ。
ブラケット、ステムとも7075−T6の鍛造アルミ。
ムク材から削り出し、防蝕その他をかねて表面はアルマイト・コート。
カウルが付いているFZRでは、外観からはほとんど見えない部分だが、効果の程は並外れておりました。
FZR:「マスター、キレイですねアンダーブラケット」
狸穴:「キレイだねぇ」
FZR:「本日やっと装着ですね」
狸穴:「んだ」
FZR:「わたくしのフレームに合わせて、ステムをつめた現
状のFZR400用のアンダーブラケットも、充分ス
テアリングの剛性確保に貢献しておりましたが」
狸穴:「そうだねぇ、フォーク径もSRXモノサスのフォー
クだから、38φあるのでそれだけでもデフォルトの
フォークよりかなり剛性は上がっていたのだが、アル
ミという材質の特性とインナーチューブをクランプす
る部分の縦方向のつかみ幅が拡がる事により、発生す
る捻じれ剛性の向上にFZRは驚く事になるよ」
FZR:「そんなに凄いのですか」
狸穴:「コーナリング自体が今とは全く違う動きになる。フ
ェンダー直上のスタビライザー板も必要なくなる」
デフォルトのままでもきちんと整備されていれば、コーナリングは得意なFZRだが、FZRの周囲にいるオートバイ達の能力もバランス良く上がって来ているので、FZRが実験車両として能力の限界に達し、少し置いて行かれてしまった感があり、このあたりでFZRのフレームに潜在する能力を最大限まで引き出すために、鍛造アルミという材料を選んだのでした。
このアンダーブラケット、元々は祁門氏のSRXモノサス車のために造り始めたアンダーブラケットなのだが、いずれFZRの周囲にいるオートバイにも使う事になろうし、時代的にFZRのフレームとかなり近い所にいるSRXツインショック車へも搭載する予定もあると言うことで、そのデータ取りと言う含みもあってFZRに使う事になったのでした。
実験するならいろんな車種でためした方がデータ取れるのだ。
FZRは走行距離もすぐに延びるし、データが出し易いのでした。
製作&デザインはいつもお世話になっている闇ガレージの祁門氏。
話の上では2年半ほど前から進行しておりました。
狸穴:「アルミ削り出しのアンダーブラケット、凄くイイよ〜」
祁門:「造れるけどねぇ……物凄く面倒なのだ。高いよ」
狸穴:「そか……んじゃ駄目だ。残念〜」
とか、言っていたのでした。
そうこうしているうちに月日は流れ、アルミ削り出しのアンダーブラケットの事は記憶の彼方に追いやられそうになっていたり……ほぼ諦め状態でした。
でも祁門氏の方ではちゃんと考えていたのだ。
ある日いきなり彼の所有するSRXモノサスに試作品のブラケットが付き、ほどなくSDRにも付いた。
ココのSRXモノサスは、元々非常識なくらい車体関係のバランスは取れていたので、あまり近付かないようにしていたのだが……
祁門:「SDRの方なら乗ってみる?」
と言う非常に辛いお誘いがあり、乗ってしまったのが運のツキ……。
このSDRは乗れるようになる前からあっしも少し触っていたので、つい乗ってしまった。
乗ってみると、デフォルトのままの35φフォークが、まるで39φのTZR250後方排気のフロント廻りのような感じ……。
やはり鍛造アルミで造ったステアはフレームの性能を完全に引き出していたのだ。
更に遡り、始めてアルミのステアを体験したのは、年式までは忘れてしまったがTZ250と言う競技用に売られていたレーサー車。
その後、一部イタ車やスイス車でも体験したり後方排気でも体験したり……左肩に内蔵されているこおろぎ回路はアルミ材部品を覚えていたのだ。
祁門:「FZRはすでにSRXモノサスのフォークと、FZ
R400(1WG)のステム&トップブリッジを使っ
て、3SXと同じフォークスパンで走っているからア
ンダーブラケット造ろうか?」
と言う申し出に抗うことはできませんでした〜。
それでも出来上がってから一ヶ月弱ほど装着は我慢したのだ。
何をしていたかというと、FZR側のフレーム強度を図面屋さんと調べておりました。
鉄のアンダーブラケットとアルミのアンダーブラケットの違いは、重量が約半分強で済む事だったり、見た目の良さ、アルマイト皮膜による耐蝕性、鉄と比べて歪む量が少ない事等々あります。
歪み量が少ない素材なので、捩じられる構造のステアリングに使えば捻じれ剛性は格段に上がります。
ステアリングの捻じれ剛性が上がれば、車線変更や回頭など横方向のアクションは、ほぼ0秒で反応開始。
これは、過日試乗した知人の擁する『伯爵』のコーナリング状況がそうであることと、全く同じです。
FZRでの結果も同じでした。
フロントブレーキの減速行動も、各場面で非常にリニアになります。
鉄の時には捻じれる事で少し逃げていたブレーキが、アルミ材に替わり逃げなくなったので、コーナリング中のブレーキ・コントロールの幅が増えます。(と言っても昨今の日本製オートバイと同じくらいかな……)
感覚としてはオートバイを前から後に貫通している想定上の『芯』が、直進時もコーナリング時もズレないのでした。
細くて非常に硬い芯が、ズレる事なく常に一本入っているという感じ。
今までの鉄製のモノだと、わずかにこの芯がステムの捻じれという現象を起因にブレていたのでした。
フロント廻りの剛性を上げるために行われる方法として、フォーク径を上げると言う方法を取られておりますが、コレも半分は合っているのですが、半分は間違った解釈をされていたりするのでした。
一般にはフォークを太くすれば筒内の容積が増えるので、セッティングの幅は増えるのはありがたい。
でも捻じれ剛性に大きく寄与するか? と言われていたりしますが……そうでもないのでした。
アンダーブラケットがインナーチューブをつかんでいる部分の面積は、フォークが太くなったぶん若干増えますが、そのつかんでいる面を展開すると縦方向には普通はあまり延びておりません。
この面を縦方向に増やす展開をする事により、捻じれ剛性は上がるのでした。
ついでにクランプしている部分を締めているボルトの数も増え、クランプ部の精度も上がります。(今回のは2×2本)
ただし、つかみのパートでの剛性が上がると、今度はステムシャフトのはまっている部分が応力を受けます。
ステムシャフトを咥え込んでいる部分の強度も、はまり込んでいる高さを稼いで剛性を上げます。
アンダーブラケット自体が、縦幅に長くなるという状況が必要なのでした。
もちろん軽量化と形状による強度向上を考えて、アンダーブラケットの裏側は強度バランスを考えた上で削り込まれております。
この削り込み方にも色々考えなければならない部分があり、ただ軽量化のために削れば良い訳でも無く、さりとて闇雲に分厚くして強度を上げる訳にも行きません。
歪まないと言われておりますが、若干は歪まなければならないので必要なだけの柔構造を採っているのでした。
あまりに強過ぎるのもダメなのだ。
強過ぎれば応力が集中し、ステムシャフト回りに影響が出ます。そこが耐えればインナーチューブにダメージを与えたりフレームを攻撃したり……『応力のタライ回し』(世間的には単純にブレとか振動と称します)が始まってしまうのでした。
全く歪まなければ、しばらく使っていると狂いが出てきて、クラッキングしたり折れたりします。
で、必要なだけ歪み分を持たせる。
そのために素材も形状も選択してある。
コレは素材の性格や強度により、加工方法と形状がほぼ決まります。
その歪み分も考察済。
そのため、工作精度は非常に高いです。
今回お手伝いでステムの圧入をあっしも担当しましたが、工差がタイトで沢山のノウハウを必要とし、とても大変でした。
なんせステム機構です。
対してネガティブな部分もあります。
剛性が高いので事故等でフロントからぶつかれば、フレームやインナーチューブが壊れます。
剛性を得るため、アンダーブラケットで事故時の笑劇……じゃなかった衝撃を吸収する事を諦めたのでした。
と言っても、簡単な衝突や普段路面から走行中に受ける衝撃程度では、フレームもインナーチューブもびくともしません。
もう一つ問題が出るのは、フォークのセッティングの変更を要求するのでした。
鉄材のアンダーブラケットならば、歪み量を大きく取れるのでそれ程高度な設定を要求しません。
ステム精度が上がったので出て来る問題もあります。
フォークの中には機械バネが入っております。
バネは常に多様な振動を発しながらショックを受けています。
受ければ返す……。
この『返し』を相殺しているのが、ダンパーと言われる構造体の中で作動しているフォークオイルの特性なのでした。
バネについては、またいつかお話し出来ることがあるかも知れませんので大雑把に言いますが、線径・ピッチ・巻き径・長さ等の要素にてそのバネの性格や能力は決まります。(本当はもっと要素あり)
不等間隔ピッチ、とかで更に振動の幅は拡がります。
それらを制振するための適切なフォークオイルの使い方(量や粘度や能力によるセッティング)が必要になるのでした。
ステム周りでフォークの発する振動を吸収しないとなると、フレームが大変です。
そのため、路面から受けたショックはフォークですべて処理出来るようにする、と言う事になるのでした。
コレが一番大事なのだ。
ですからアンダーブラケットをアルミに変える際には、フォークのセッティングが出来なければ辛い事になるというネガティブを併せ持っているのでした。
でも、最近は優れたフォークオイルもありますし〜。
FZR:「ABSOですね」
狸穴:「んだ、ABSOに助けて貰った」
そうしてこれらは全部フレームと言う分母構造の上で合わせます。フレーム強度や性格は無視出来ないのだ。
で、今回はFZRの今使っているフォークスプリングも交換。
現在使っている全長の長いスプリングから少し短いものに換えます。
スプリングの対応レンジを狭めるのでした。
短くなりピッチも荒くなり、線径も細くなり、巻き径は変らない。
スプリング自体の対応レンジの幅は狭くなりました。単純化です。
この方がスプリング自体で制御する振動の種類(パターン)が少なくて済むのでした。
実験としてR1−Zのフォークスプリングを選択。
別候補としてホンダさんのVTZ250のバネも考えましたが、今回は昔悩まされたR1−Z用です。
イニシャル量はFZRの前輪の掛る重量に合わせます。
1Gでアンダーブラケット下点の沈み込みが35ミリ。(好みです)
油面も140mmから150ミリに下げました。(あとから散々調整しますけど)
ダンパーがかなり弱くなっているはずですがバネに合わせたのでした。
計算じゃバランスしているはず……。
ちょっと走ってみました。
FZR:「ますたー、ステムの切返し速くて軽いですね〜」
狸穴:「軽いねぇ、車線変更時程度の負荷では妙な跳ね返し
は無いね」
FZR:「はい。わたくしは以前よりも更に素直になりました」
狸穴:「減速も安定している。先程止っている時に押込んだ時
の戻りじゃちょっとお釣りが来ていたけれど、実際に
走っている状況だと、このセッティングの方が合って
るな……」
FZR:「……ですね。合っているみたい」
狸穴:「曲ってみるか」
FZR:「わたくしのフロントタイヤ、減ってますので気を付
けて」
狸穴:「了解」
減ったタイヤの状況はアンダーブラケットの剛性が上がっているので、そのまま反映されてしまってますが(よく判り過ぎ〜)フリーステアな感じです。
ラジアルタイヤの性格も合っております。
直進安定性は今までと変らず、対して曲り始めの反応は非常に早いです。
リーン行動に入り0秒で反応し回頭開始。
回頭開始後も各工程での操作を正確に履行。
後輪を支えているTZR250後方排気から頂いたアルミスイングアームの反応速度ともシンクロ。
前後の剛性バランスがついに出たと言う感じ。
間に入るフレームに対しても、このサスの動きだと問題無しです。
フロントサスに対して、リアのOHLINSの反応パターンに若干のサグあり。(後日O/Hの際に修整を予定)
フロント・タイヤが減っていると言う事をより強く訴えて来ておりますが、コレは新しいタイヤに換えれば済む事なのだ。
初めての試走なので制限速度の100km/hまでしか出さなかったけど、問題は無しでした。
もう少し時間を掛けて、色々な状況で走りながら細かく合わせて行きます。
狸穴:「FZR、素直になったねぇ」
FZR:「わたくしは元々、素直ですわ」
狸穴:「確かにそうだが……」
FZR:「マスターが時々事故でもないのに、フレームのセン
ターを測定して細かく修整してセンターを出してくれ
ていたので、今回のアンダーブラケットものみ込めま
した」
狸穴:「そか」
めでたしめでたし、なのでした。
このアンダーブラケットを使ってみて、新たにデータがたくさん取れました。
これらのデータは、今度FZRの周りにいるオートバイ達に反映する際に役に立つでしょう〜。
マミアナ+FZRx
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