Vol.330 秋水チャンバーその2 2002-09-23

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 まったく3気筒が合わない秋水のチャンバ。
 キャブ側を少し加工したりしても改善の気配がありません。
 キャブで合わせられるのは低域と高域だけのようで、中域はやはり排気側が合っていないと出ないのか……。
 なぜ、繋がり良く中域が使えないかと考えてみると、チャンバーの形状とATACの効果が及ぶ範囲らしい。
 入口でクルリと回っているデフォルトチャンバーでは、中域でエンジンの排気ポートから出される排気の流速が、チャンバーの容積(効率)のせいかあまりよろしくなく排圧が掛かり易いのだが、現在秋水が搭載しているチャンバーはくるりと回さずストレートに膨張室に入っている。
 コレにより、ATACが効いている回転域は、実際にエンジンが出力を出し始める前の低回転域まででその効果を失い、中域以降はATACの効果は維持されていない状況。
 さらにrpmを上げて行くと、7500rpmあたりでATACが閉じられ、チャンバーもその形状の役目が果たしやすい排圧を、膨張室全域に満たす事が出来る(排気干渉波の周波数特性)状況が揃い始める……でエンジン元気! と言った感じ。
 なので、中回転域はチャンバーの周波数特性〜云々以前の下痢状態?
 このとおりだと困った……です。

 コレを考えると、もっと能動的に排気干渉波をコントロールするYPVSやRCバルブの構造がウラメシ。
 でも、《秋水號》にはそのような便利なモノは付いていない。
 この状況で中域をなんとか上げようとすると、多分8000rpmあたりで極端に薄い混合気しか供給されない現象が起るような感じ。
 その現象が出ている回転域を数瞬間保持して走った場合、デトネ等が起きてエンジン壊れるかも……。
 もっともこの合わせ方だと、要求空燃費よりも極端にガスの重量が少ないから、無理にシフトダウンとかしない限りは、そこまで回転は上がらないだろうけど……。
 器用な人が上手くキャブでコレを合せてしまうと、燃料の内容が変わる季節毎のセッティングが要求されるようになりそうです。(否*希薄燃焼)(季節毎に燃料は違うのでした)
 と言う事で、チャンバー自体をレース用から公道用に数ヶ所形状を合わせ直さねば、中域は使えないままになると言う状況かも知れない。
(ヘッドを−0.6ミリ(勘)までoffしてエンジン自体の圧縮を変えてしまうとまた状況は変わって来るのだが、その状況で高回転を続けると日本仕様のクランク大端部の耐久時間に問題が……以前すでに−0.25やってるし)
 と言う事で、まるでRCバルブが必要とされているような形状のチャンバーをどう加工するか……。

 加工が必要なチャンバーは3本。(後のチャンバーは難し過ぎて、いじれそうも無い)
 前2気筒は比較的やることは近いけれど、基本的には3気筒共、全部セッティングが違います。
 まずは3気筒それぞれのセッティングを出して、途中何度か前2気筒を合せて更に後の1気筒とバランス……の繰り返し。
 でも、そうして出来上がるモノも、それほど安定した状況を産み出してくれる筈は無いのでした。
(比較:デフォルト管では、多少エンジンが相互に狂っていてもそれなりにバランスするようにくるりと回して、低い馬力で対応されているようです。デフォルト管の入口に熔接されたインナー・スリーブは、都市部の発進/停止が多い場所での耐久性と扱いやすさを上げるためと解釈。ヤマハでも昔は排気ポートを絞っていたり、エンジン直後の管長を細長く取ったり、車種によってはやっていた形跡あり。スズキの吸気がロータリーバルブと言う、これまたコアーな事になってたり)
 NS400Rのクルリと回している部分とか、ATACの部分での排気気流の剥離が少ないのが、凄いです。
 ホンダはこの機構を懸命に考えて、狭い短躯な車体で管長を稼ぐように見せながら、裏では点を突いてエンジンの起動安定性や生産効率も上げていたのかな。
 ……さすがです。
 NS250、NS400Rは、後に続くNSR250系のまさに過渡期のオートバイ。
 当時、カタログ数値とは別に実出力至上だったホンダとしては、本当はRCバルブが完成した時期など、NSR500系の市販車を出したかっただろうなぁ……。
 免許取り立てでもベテランでも楽しく乗れる軽量強馬力なNSR500……
 それが出来なかった分、VFR400系が異状進化したりしたのかな。
 ヤマハもちゃんとYPVS等を進化させて育てて来ていたもんね……(これまた凄いですけど)。
 最終型のTZR250が出た時期あたり、V4/YZR500(最新YPVS搭載)の公道車を軽量で出したかったのかも。(そんなことは無いか……)
 各メーカは物凄い予算と苦労を込めてオートバイを造っているのでした。
 両メーカーとも、低公害化を達成した上で今なら技術的にも出せそうです。
 そうなると他のメーカもやるだろうし。(スズキの最終5ガンとか……)
 どちらも楽しいオートバイになった、だろうなぁ。

 ア……話が流れていってしまった。
 で、このチャンバの加工がまたえらく微妙……。
 素人なあっしにはとても手に負えないかも……。
 でも、合せないと。

秋水:「自分のエンジン、『下がなくても構いません』と言
    う訳には行かないのでしょうか」
狸穴:「残念ながらそれをやってしまうと、中尉は『公道で
    も7000回転より上をキープ』な状況になってし
    まうようだよ」
秋水:「それでは、困ります」
狸穴:「かと言って、上限を4500回転にしようと言う訳
    にも行かないし」
秋水:「中域の処理は大事ですね」
狸穴:「んだ。いちばん常用される中域に何かしら不備があ
    るオートバイは、駄目なのだ」
秋水:「なるほど」
狸穴:「もっとも、全域で繋がり良くトルクの谷も無く、普
    通に使えないとダメだけど」

 普通と言うのがいちばん大変なのでした。
 特定の回転域だけで出力が安定していても、直線だけを走る訳では無いし、減速から加速へ移項したり、加速から減速へ移行したり、ついでにコーナを曲ったり……。
 オートバイは中々大変な事をしているのでした。
 さて、どうなるのでしょうか。
 なんとなくだがこのチャンバー、他の同製品と比べて見ても少し違う形なのだ……純レース管かなぁ。
 先週土曜にFZRで三京に行く時に、R246下り線で秋水と色違いのNS400R+Jhaチャンバ(アルミサイレンサ)付きにお会いした。
 かなり元気な方らしく、交通安全週間だと言うのに全開加速……。
(ア、パワー掛け過ぎて2速抜け。ワァ〜パパパーン、白)
 で、あたりを確認してからFZRがどのくらい付いていけるか、ためしてみた。
 結果は、それなりにセッティングは出ているようだけど上の延びが足りない??
 ちょっと出遅れたけど、FZRで19000rpmまで使うと、ギアを3速まで上げる間に追付いてしまいました。(ちょいすり抜け含む直線路)
 NS400Rってこんなに加速が遅かったっけ……FZRに負けるなよ〜。
 NS250じゃないよね……。
 よく見るとやはりNS400Rでした。
 ダメじゃん。
 コレなら現在の《秋水號》で楽勝。
 と言う事で、チャンバーの違いが判ったり……。
 判ってしまうと、やはり厄介だと言う事も同時に判った。トホホ。

 今日は、多少の切った貼ったはやりますが……。(箇所と数値は書きません。他のエンジンではまったく違う数値になり、同じ事をすると高回転域で壊れるだろうから)
 試作のためのロウ付けの工具を用意せねば……さて、どこ行ったかな。捜索。
 オートバイのエンジンで谷が出来ていると言う状況は、そのオートバイをオーナーとして慣れた乗り手にすら過大なストレスを与え続け、非常にそのオートバイの本来持つ姿を削ぐ事になるのでした。
 秋水の場合は全部上手く行くか、まったく下がダメかのどちらかしか選択できません。
 秋水どうなるかなぁ……。

秋水:「谷が2箇所あります。なんとかして下さい」
狸穴:「秋水も頑張るねぇ」
秋水:「FZRさんのように、過酷な燃料実験とか薬品実験
    はされておりませんのでまだ保ちますが……」
狸穴:「ちょびっとだけ、やってみる? デトネーション爆
    発を誘発した超高回転域走行実験とか。ピストンと
    かクランクは使い捨てだけど」
秋水:「ダメです!!」
狸穴:「……ポートとピストン加工くらいは、イイかな」
秋水:「普通に修理部品が揃わなくなるのは……ちょっと辛
    いです」
狸穴:「了解」

 なにかと制約の多い頑固な《秋水號》なのでした。
 チャンバーを取り外し、蝋材で管内の形状を少しづつ変えます。
 アチチ〜! 久々にやったので足の上に蝋落してしまった。安全靴を履いててやろ〜。
 セッティング・シロとしてエキゾーストパイプ部分をもう10ミリ長く造ってくれれば、こんな加工はしなくて済んだかも……。
 レース管なら使う人間もポン付けなんてしないし、管長を詰めるくらいの技術は当然持っている筈だから、+10mm欲しかった。
 コレじゃ、高回転に振り過ぎ……。
 ついでに、サイレンサが填まる部分のパイプ径を狭くするパイプを製作。
 どうせ、セッティング用のおためし品で一瞬しか使わないから、以前SRX416で使おうと思っていた銅板を、金挟みで切って叩いて丸める。
(この銅板、最近ではオイルの酸化状態のテスト台にされてます)
 銅板は加工が手で曲げられるので簡単です。
 長さと内径は秘密。
 内径はともかく、コレの長さで思いきりチャンバーは性格が変わる。
 特に高回転型のレース管は影響極大。
 長さを変えて4組製作。
 あまり多く造ると訳判らなくなります。
 こんな面倒な事、FZRにもした事ないのに《秋水號》は恵まれております。
(FZRはデフォルト管なのだ。とてもこんな図は見せられん……)
 鍛冶屋仕事が終わったらそろそろ15時。早くしないと日が暮れます。

 冷えた部品を鞄に詰めて、ちょっと加工したチャンバーを取り着けて近所の直線にいざ出発〜。

狸穴:「いかが? 今度のチャンバ」
秋水:「下、強過ぎな気がします。中域で少し排気戻しが強
    過ぎるような感じです」
狸穴:「ダメか……んじゃ一番短い奴に換えて……」
秋水:「今度は下と中域は合いましたが上がダメです。コレ
    なら何も無い方が良い」
狸穴:「難しいねぇ。んじゃ真中くらいの奴」
秋水:「排気系はコレで良さそうですが、#2キャブが全然
    ダメです。ガス来てない感じです」

 戻ってキャブをまたバラしてみると、#2キャブのフロートレベルだけ低い……何が起きたのだ?
 3分ほどキャブのフロート室を見ていると、フロートが少しフロートチャンバーに触っていた感じがした。
 少し曲げて調整。
 で、また走りに行く……。(強度のストーカーのように、しつこくこんな事の繰り返しです……疲れた。まるで4発のカム造っている時みたいだ)
 少しだけフロート・レベルを上げたら、#2チャンバーから出ている音が変わってきた。

狸穴:「いかが?」
秋水:「……今度はATACが」
狸穴:「へいへい。んじゃエキゾーストパイプの所を少し切
    ってみるか……」

 また戻ってやり直し。
 蝋で止めた所にタガネを当ててガンガン〜!! ポロり。
 で、もう少し短く造ったモノを蝋付け。ジュ〜。(まるでTD200WRの、は〜さんと同じですね)
 煙が出ているチャンバーを《秋水號》に戻します。
 チャンバはバネで止っているだけなので脱着は簡単〜。
 ホントはちゃんと図面起して、少しづつ違った形で20セット×3の60本くらいチャンバー造ってためしたいのだが、ソレやっちゃうと《弐號》と同じになってしまうので予算の都合で蝋付けなのだ。
 2サイクルはチャンバーもエンジンの燃焼室なので、形が少し違うだけで性能や耐久性に大きく影響するのでした。
 中尉の《秋水號》だからこの方法でも良いか……。

秋水:「中域までは良い感じになって来ましたね」
狸穴:「でも水温計が物凄く上がるが……それにまだ高回転
    域はこんな大雑把なやり方だと焼付く恐れありだよ」
秋水:「先程4速でギア抜けした時、一気にに12500r
    pmまで上がりましたけど……大丈夫でしょうか」
狸穴:「危なかったねぇ」
秋水:「まだ#2キャブが変です」
狸穴:「やはりフロート全部を新品と換えないとダメかな。
    実はこのキャブのフロートちょっと問題ありそうな
    感じ」
秋水:「よく判りませんが、ガソリンのフローが足りない訳
    ではないようですが、安定しません」
狸穴:「チャンバーは?」
秋水:「上まで回してみないと何とも言えません……」

 でも焼き付きが恐いです。
 2速でも8000rpmチョイ前くらいから、スロットルの開け方で前輪が浮き上がって来るので、出力が出ていることは判るのだが、ギリギリの所にいる水温針が恐くてソレ以上回せないのでした。
 円陣家至高さんで造ったオイル添加剤のEGS/2T(未公開品)が入っているので、10500rpm程度までなら大丈夫だとは思うのだが……中尉のオートバイだから博奕は打てない。
 と、その辺を曲ったりしながら走っていると急に音が変わった。
 #1のサイレンサー直前で絞っていたパイプがスッポ抜けたのでした。
 直後に車がいなくて良かった〜! こんなモノ射出して誤射したら捕まる。
 遠〜く飛んで行かれたようです。
 ……何かイイ感じ。
 ためしに#3のパイプも外してみます。
 先程までは、赤い所に針が掛かりかけていた水温が下がりました。

秋水:「ちょっと下が落ちましたが……水温の方を優先した
    方が良いかと」
狸穴:「なるほど、そう言うことか……チャンバーの一番太
    くなっているパートの長さがちょっと合っていない
    んだね」
秋水:「そこまで直すのですか」
狸穴:「すでに予算は遥かに越えてしまっているから、やらな
    いよ」
秋水:「あまりお金が掛かると中尉殿の所に戻ってから、自
    分は叱責を受けます」
狸穴:「タンクは凹んだままかな」
秋水:「タンクは自分のマスターがすでに用意しておりますの
    で、換えがあります」
狸穴:「良かったねぇ」

 てな、感じで中域を確保し始めたし、今のところ焼き付くことも無く進歩中〜。
 高回転域は全然自信がないので、フロートを新しいパーツに換えて油面を安定させてからかな。
 一回だけフルオープンで4000〜11500rpmまでを3速でためしてみましたが、#2が異状燃焼っぽかったです。
 焼付いていなければ良いが……。
 ……シリンダーのNSメッキに助けられた感触。
 恐いっすねぇ〜。(ドキドキ)
 今日はここまででお終い。もう走れません。
 メシ喰ってなかったよ。

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《秋水號》 狸穴

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