Vol.244 CB400s/f 2001-12-11


 ホンダのCB400super four赤色がやって来た。
 オーナーはあっしがオートバイ屋をやっていた時に知りあったお客さんの一人で、たびたびオートバイを置いて壁の中に入ってしまう方でした。う〜ん。
 その人は物凄く服飾関係に造詣が深くて知識もあり、データも現役のスタイリストさんより速くアップデートしています。
 非常に頭も良く最終学府も終了していて、人情にも厚い(あっしが商売をやっている時に忙しくて飯も食えなくて、体重が46kgまで落ちて時々倒れていた時に、冬の深夜に雨をついて手製のサンドイッチを造って来てくれたりした)方なのだが……誰でも欠点はあるらしくそう上手くは出来ていないらしー。
 ……たまに入ってしまうのでした。
 まあ、あまり人に危害を加えるとか、損害を与えると言う『内容』じゃないんですけどね。
 もう二度と入らないと約束していたのだが……。
 最後に入る時に、

狸穴:「あなたに関わる人にはあなたも含めて、一生会う事
    も無いだろう」

 と、言ったのだが次に出て来てから、もう7年間入っていないらしく、今度はもう大丈夫かな〜。
 唯一、彼とあっしが繋がる人間が一人。
 あっしの今の商売を始めた頃の、ライティング(照明)に関する師匠でした。
 大陸生まれの師匠の人物評価は厳しいのですが、たま〜に、こう言う変わり者(え……あっしも含む?)を周りに配する師匠なのでした。
 師匠が『奴は年齢的にも後が無いし、真面目に更正した感じ』と言う事で師匠を経由してCBの様子を見る事に致しました。

FZR:「CBさんはいかがなされたのですか」
CB:「走行中車体が安定しないのです」
FZR:「いつからですか」
CB:「半年ほど前から徐々に。今のマスターはとても大切
    にしてくれるのですが、前のマスターに仕えていた
    時から少しづつフォークの状態が狂い始めていたよ
    うです」
狸穴:「フォークをストロークさせてみると、普通オイルが
    駄目になってダンパーが抜けていても戻る事は戻る
    のだが……途中で引っ掛りスッとに戻って来ないの
    だ」
FZR:「フロントフォークの故障ですか……。わたくしより
    も新しい車体なのに」
狸穴:「大丈夫、ボトムケースごと換えてしまうから。それ
    にステムのベアリング絞め過ぎて壊れてるので交換
    だな」
CB:「壊れてましたか……キレイにしていただけるのはと
    ても嬉しいのですが、中までは判り難いようです」
FZR:「本当にキレイですね。新車みたいです」
CB:「走行3万5千キロなんですけど、とにかく磨いて頂
    いてます」
FZR:「マスターも見習って下さい」
狸穴:「凄いねぇ……。あの人らしいなぁ」

 ありゃ、エンジンの底部のビスも几帳面に磨かれております……アンダーブラケットにもワックス掛けてあるよ。
 丁度同様な事を中尉の《秋水號》の次期フォークでやるから、データも一緒に取れるのだ。
 CBのフォークのキャップを外してみると、中のオイルは駄目でした。
 CBに限らずどのオートバイでもよくある事……驚きもしません。
 ただ、駄目なまま頑張ってしまったために、ボトムケースの内壁まで削れて減ってしまってます。
 ボトムケースとシール・メタル類は全部交換です。
 普通にマニュアル通りにやって純正のオイルを入れて終了。
 ステムも純正部品でマニュアル通りに組み付けて終了。
 スイングアームのピボット部ベアリングとショックの取付部分にもに給脂。
 ちょっとピボットの締付トルクが高かったようでした。
 面倒なカウルも付いていないので助かりました。
 タイヤをよく視てみると、フロントタイヤの左側だけ滑っている跡を多数発見。リアタイヤもご同様。
 相変わらず一発決めのコーナリングをしているようで……あの状態のフォークだと大変だろうなぁ。
 手慣れたスロットルワークとステップへの荷重コントロールかなぁ。
 このCBのオーナーはその昔『プレス』と言われるテレビ局や新聞社に所属する職業ライダーをやっていたりしていたのでした。
 当時のプレスはオートバイを操る技術が非常に高く、プレスとしてのプライドも高く、ライディングの上手な方が多かったのでした。
 記者が現場で打った原稿を、どこよりも速くデスクに届けるために物凄い速度で都内を走り抜けるのでした。ほとんど曲乗り状態。
 そのプレスをやっているお客さんが10人ほどいたので、吸気の調整と脚回りの調整に関してはそれぞれのセッティングが決まっていて、短時間の内に厳しいオーダーが出されるので良く鍛えられたっけ……。
 プレスは他のお客さんとはセクトが違うので、扱いは別でした。
 こ〜んな面倒なお客様を相手にしていたので、タイヤを見てどう言う走り方をしているのか、どう言うセッティングをしたら良いのかというコツをのみ込まされました。
 プレスな方達は自身ではメカをいじりませんが、感覚として詳しいので、納得頂けるまで何度もダメ出しが続くのでした。

 ご本人はプレスを辞して久しい筈なのだが……CBのフォークの横には黒い袋を被された社旗棒が付いております。
 プレスを辞めた今でも、棒だけは外せないそうです。
 この社旗棒の取付角度がまた大変……個人個人によって微妙に決めの角度が違うのでした。
 まるでどこかの貴金属撮り専門の先生がするライティングのようです……。

 現在ではプレスのライダーを使うよりも、情報通信技術を活用するだけで間に合うようになり、当時のプレスはいなくなったようですが……街のライダー達は番記者回りのプレスの後を追って、良くライディングの練習していたりしていたのでした。
 第二時世界大戦当時の戦闘機乗りと通じるモノがあったのでしょうかね?
 出来上がったCBに乗ってみると、エンジンの反応は脚回りと合ってます。
 エンジンオイルやキャブの調整はどこかでやってもらっているのかな……。
 コレで文句も言われんだろう。
 光軸が少し左に寄せられているのも、スロットルやクラッチのワイヤーの遊び量も当時のままでした。

狸穴:「CB、お前さんのマスターは多分、CBが動けなく
    なるまで乗る事になるから、頑張って仕えるのだぞ」
CB:「最後の時まで頑張ってみます」

 多分、来年春頃にはOHLINSとブレンボ・ブレーキシステムのオーダーが入るかな……。

CB400スーパーフォア マミアナ+FZRx

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