Vol.238 コレだけ壊れていても…… 2001-11-26


FZR:「マスター、先日一緒に走ったこきちさんのSRX3
    50速かったですね」
狸穴:「速かったね〜。FZRで1万回転回してもすぐに追
    い付かれた」
FZR:「350さん的にはまだ余裕の8000回転/半開だ
    ったそうです」
狸穴:「チョット楽しかったよ」
FZR:「同じような加速をわたくしに要求されても無理です
    からね」
狸穴:「へいへい。FZRも、その位出力を要求するとした
    ら……320ccくらいまで排気量上げてFCRキ
    ャブ入れて、重たいクランクシャフトを1/3ほど
    削り落として、排気システムも全〜部造り直さねば
    ……それでも計量小型なSRX250をベースにし
    た350だから重量的には圧倒的に軽くて有利なの
    だ、厳しいなぁ」
FZR:「ますたー、わたくしは調子良くいられれば、勝たな
    くてもこのままで構いませんが……」
狸穴:「あ、そうだった」
FZR:「戦闘用のオートバイではございませんわ」
狸穴:「チョット悔しかったのだ」
FZR:「元々ますたーは、軽量小型の一気筒あたりが少しで
    も大きいエンジンがお好きですものね」
狸穴:「まぁね。カンガルーのようにすぐにトンと加速して
    くれるのは面白い」
FZR:「マスターの趣味で、わたくしも全然違うシングルの
    ようなエンジン特性に寄せられてます」
狸穴:「その方が混み合う都内は乗り易いのだ」

 と言っても250/IL4だからシングルとは、ほど遠いけど。

 ところが、そのSRX350が残念な事に『焼憑いて』しまった。
 吸排気共のバルブリフターと排気側カムシャフトは虹色に焼き付いている。
 ヘッドへのオイル供給ラインが塞がれておりました。コレでは焼き付いてしまうのだ。

 腰上をバラしてシリンダーを見てみると、ピストン・ピン位置まで回り込んで傷が付いている……変な焼き付き方だなぁ。
 シリンダーとピストンのクリアランスを測ろうかと思い、そのままホっておいたらオーナーのこきちさんがシリンダー上面に対してそのピストンをスカート側から入れようとしていた。
 ピストンはスカートが広がっているので下側から上には入るけど、逆からは入らないのだ。
 でも余裕で入った! 下まで貫けた。
 なんつうエンジンじゃ……。
 クリアランスを見てみると……普通は3/100mmとかなのに50/100mm(0.5ミリ)くらいある。
 ピストン裏面を覗いてみると、煤が結構溜まっている。結構使われているピストンです。
 シリンダーのまだ焼付いていない部分のクロスハッチは……使用に耐えるだけの状態だったのか……。
 キツく圧入されているバルブガイドも排気側が一つ抜けかけている。カンカン鳴っていたのはコレだな。
 腰上は満身創痍なのでした。(かつてのFZRよりは良いけどね)

狸穴:「これ、シリンダーとピストン組み違えているねぇ。
    このシリンダー用のピストンじゃないよ」
350:「痛ッタ! そんなに酷いですか」
狸穴:「酷いです。これでよくうちのFZRよりも、速かっ
    たモンだ」
350:「その代わりブローバイが酷かったです」
狸穴:「そうだろうねぇ……コレだけでかいクリアランスが
    アレば燃焼したエネルギーがケースに抜け落ちるも
    んね。ボアの大きいエンジンはリングの張力は弱い
    からね、オイルは熱と生ガスで痛めつけられるし…
    …良く保ったなぁ、オイル」
350:「カストロールのRS、頑張ってくれたようです」
狸穴:「ピストンが首を振らなかったのは、リングが生きて
    いたからだ。8000rpmくらいまではリングの
    張力だけで保ったんだろう」
350:「……自分は、直るんでしょうか」
狸穴:「ケースの方はまだ無事みたいだから、腰上だけ全部
    造り直しかなぁ。でも、メーカがオーバーサイズ出
    していないから……WR400の鍛造ピストン使う
    事になる」
350:「そんなの入れたら自分は413ccになってしまい
    ます」
狸穴:「車検付きだねぇ〜」
350:「ナントカならないでしょうか」
狸穴:「だってもう350ccでしょ、充分車検付きだよ」

 水冷のWR400に対して空冷のSRX250のシリンダー……スリーブを造るにしてもクリアランスの設定をどうするか……FZRのデータは水冷だから使えないし……各部の厚みと熱膨張率を細かく全部計算し直してみるか。その上でスリーブの材料とクリアランスを決定だ。
 その前に、このシリンダーのスリーブを造っていれる時の事を考えて、ダミーヘッドとベースを厚さ40ミリのC45材で造っておかねば……。
 ヘッドガスケットも銅で造らねばならなくなった……92φの丸穴開けるホールソウは使えないし……前に造った工具は棄ててしまったし、代る工具を造らねば……ハンド冥土なガスケットだぞ。

狸穴:「FZR、また重たい鉄塊を運ばねば」
FZR:「マスター、今日はわたくしは中尉殿のNSR250
    のリアホイールと350さんのシリンダー&ピスト
    ンを運びましたが……その上まだ重たいダミーヘッ
    ドの材料まで運ぶんですか」
狸穴:「コレだけ小さいシリンダーに、でかいピストン入れ
    るから4発のFZRと違って、シングルはホナーを
    掛ける時に2/100mmほど偏振してしまうので、
    しっかりした重たいダミーヘッドを専用に造らねば
    ならんのだ」
FZR:「加工自体はシングルエンジンの方が大変なんですね」
狸穴:「ダミーヘッドを使わないで彫ったエンジンはしばら
    くは調子良く走るけど、いつかいきなり壊れてしま
    うんだよ」
FZR:「マスター、かなり専門的なお話になってきてます。
    またカフェの娘さんからクレームが来ますよ」
狸穴:「をを……そうだった。それにこんなことを詳しく話
    しても、誰も喜ばんしね。秘密にしておかねば」
350:「あの……ソレって成功するんでしょうか? 前例は
    !?」
狸穴:「成功か失敗かは誰も判らないのだ。前例も知り得る
    限りにおいては……無い」
FZR:「わたくしの時もそうだったんですよ」
350:「ホントですか……嗚呼」
狸穴:「SRX350改→413の最後かもね〜」
350:「このまま廃棄された方が幸せかも」
FZR:「成功すれば、わたくしよりもずっと速くなれますよ」
   (すでに充分速いけど)
350:「なんとかして下さい」
狸穴:「最終的にはマスターこきち氏に、お願いしてみたら」
350:「無駄なような気がします」
狸穴:「だろうなぁ」
FZR:「350さん、ヒューマノイド程度のわたくしのマス
    ターでもたまに厳しいオーダーが出ますから、人間
    のこきちさんではもっと大変かも。350さん自体
    の性格を換えてしまった方が楽ですわ」
350:「そうですか……時間を掛けて換えてみます」(嗚呼、
    初心者にも楽しくオートバイを覚えて頂くために造
    られたチョットお洒落だった自分は……このままだ
    とこの優しい外装を纏ったまま、1000ccを相
    手に街中で闘うマシンになってしまいます。設計し
    てくれたメーカの光明寺博士、ミツコさん、ごめん
    なさい!!)

350 たらう+FZRx

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