Vol.221 秋水x 2001-10-11


FZR:「マスター、先程から何をやっているんですか」
狸穴:「……ん? コレかな。このデータは《秋水號》の極
    秘データなのだ」
FZR:「わたくしのデータと似てますが……チョット違う部
    分も」
狸穴:「2サイクルだからねぇ」
FZR:「発生トルクがわたくしとは2倍近い差があるんです
    ね……凄いです」

 車検も切れたまま事故以来、打ち捨てられた状態にある雪風★中尉の愛機、NS400R《秋水號》復活へ向けての予備作業を始めたのでした。
 パーツはすでに中尉が自分で気に入ったモノをある程度集めてある。
 ある程度の内容は、そのうち《秋水號》のページで発表される事になるのだが、今回は始めて『x』が憑くほどの作業工程になるのでした。
 チョット大変だなぁ……と思える箇所は4ヶ所もある。
 時代の流れか技術の進化が速かったのか、ココ10年でオートバイに使われる部品の内容もかなり変化して来ているので、このあたりで《秋水號》も新しいパーツが使えるように各部のサイズの変更等を行う事になったのでした。

 データを重ねてみると、行うことはFZRとほぼ似たような状況。
 タイヤも新しいオートバイは幅も広くラジアルタイヤなんて結構なモノが履けるようになったりしているので、《秋水號》もそれに合わせてリム幅を拡げたりすることになったのでした。
 コレで必要とされるタイヤが選べるようになるのだ。
 そうなると前後のショックもタイヤに合わせて……等々の細々した変更点が満載です。
 でも全〜部重要な用件。
 フレームが黎明期のアルミフレームである事が最大の難関。
 NSR250とは違うのだ、どちらかというとNS250R……。

FZR:「秋水様はわたくしのフレームと近い構造ですが、ア
    ルミだと違うのですか」
狸穴:「構造は似ているけどFZRのは鉄だよねぇ……アル
    ミは鉄とは性格が全然違うのだ。歪む量がものすご
    く小さく固い」
FZR:「その上タイヤもラジアル化……大変そうですね」
狸穴:「チョットね、気を使うよ〜。色々合わせて最終的に
    は実地にテストだ」
FZR:「マスター、わたくしはまた倉庫行きですか……」
狸穴:「今回はそうでもない。倉庫も荷が新しく入って来た
    らしく混んでいるとの事。行ってもFZRの居場所
    は無いのだ」
FZR:「ではわたくしは何をすれば宜しいのでしょうか」
狸穴:「加工パーツの移送係。いつも御世話になっている祁
    門ガレイジさんもこきちさんのSRXがいる、SD
    Rの再生も始めるらしいし、並行してゼーファー号
    のエンジンやっているしそれよりも本業の方が忙し
    そうだ。エンジン屋のおやじの所もデカイ車がたく
    さん入って来ていて場所が無い」
FZR:「何ところで秋水様は組み立てられるのですか」
狸穴:「必要な箇所ごとに、色々な所を移動しながらなのだ」
FZR:「そこへ付いて回るのですね」
狸穴:「んだ」

 とりあえず部品を付けるだけ付けてセッティングはご自分でどうぞ……と言う訳にも行かないし、何かとやる事が多いのでした。
 パワーが高ければ高いほどセッティングは厳しいし、重量が軽ければ軽いほどまた厳しい……。
 パワー/ウエイト・レシオが小さければ小さい程、オートバイのセッティングオーダーは厳しくなって来るのでした。
 チョット間違っただけで自由度が一気に減退して、ものすごく走り難くなります。
 走るたびに様子をみながら恐る恐る走るのでは堪りません。
 誕生した時からギリギリのフレームな《秋水號》の車体は大きく手を入れる時に、そうなる要素を結構含んでいるのでした。
 前回の《秋水號》の調整ではあくまでもデフォルトの部品構成を基準に……と言うオーダーだったので、その際に色々な乗り方をしてテストをしていたら、すり抜け時の車線変更程度の曲率でフル加速をするとフロントが軽くなり次第にリフトし、それに気が付いてスロットルを戻すと前輪が着地と同時に《秋水號》大暴れ……。
 前後のタイヤがある程度以上違う角度で接地すると非常に扱いが困難になるのでした。
 止む無く更にスロットルを開けてハンドルをひき上げて、もう一度フロントタイヤをリフトさせて対地角度を修整してから着地させて……(大変)、グリップしたのを確認してから再度方向をわずかに変えると言う行程で事無きを得ましたが、ハンドルが暴れるという状況に慌てて、前ブレーキを少しでも掛けていたら『直進していていきなりハイサイド』→《秋水號》消滅→ヒューマノイド弾式大砲〜。な、状況になっていたでしょう。
 16インチタイヤが受けている重量と、車体剛性のステムから前輪接地点までの不たしかさが原因だと思います。(それ以外にもフレーム特性とか原因はたくさんあるのだが……子細は面倒なので内緒にしておきます)
 なにぶん《秋水號》はRZV500Rを横目で見ながら熟成を待たずに世に出たオートバイですから……。

 と言う事で前日昼間、久々に現状の《秋水號》とご対面。
 現状がどうなっているのか、中尉が閑の時に様子を見に行ったのでした。

狸穴:「お久〜、秋水」
秋水:「――――」
中尉:「これが現状です」
狸穴:「右側の損傷……結構デカイねぇ。対戦相手のビート
    撃沈かな」
中尉:「判りません。ドアとロッカーパネル部を深部まで大
    破しました」
狸穴:「バッテリーも上がっておる。オイ、起きれ」
秋水:「……」

 中尉が頑張ってキック式スターターを何度も蹴れど秋水は起動しません。

中尉:「フー、ダメっすね」
狸穴:「爆発の兆候も無いねぇ……」
中尉:「いえ、キックの方にはちょっとはありますよ」

 キックをしている中尉には反応があるらしい。

狸穴:「んじゃ、もっと蹴り続けて」

 中尉はガシガシとキック。
 シリンダーを聴いてみると、錆び込み等は無いみたい……安心。
 圧縮もあるか。
 その内に、

秋水:「……お・・おひ。……………………お久…渋りです
    ……>マスター(誰だっけ……あ!)中尉」

 と言って、#3シリンダーだけ目覚めました。
 周囲に拡がる酸化しきったガソリン臭……。

秋水:「……ご!」

 チョット掛かったが、止まりました。

中尉:「夏には掛かったのだが……」
狸穴:「構わず蹴って。スロットルは俺が合わして無理やり
    掛けさせる」

(エンジン内部で異常があっても構わず掛ける事にしたのだ)
 またキッ〜ク!キッ〜ク!キッ〜ク!

秋水:「ご苦労さまです。お久しぶりで・・す>中尉と狸穴氏」
中尉:「やっと掛かった」
秋水:「調子悪いです。今はいつですか」
中尉:「2001年10月だ」
秋水:「総理大臣もすでに代っているようですね」
狸穴:「#2シリンダー点火せず&古ガソリン駄々漏れ」

 何度かブリッピングさせても#2は点火することなく#1&3でなんとかアイドリング。とりあえずエンジンはまだ無事な様子です。流石NSメッキ、良かった。
 全部点火しないのは、キャブの中に溜まっていたかつてガソリンだったモノが悪さをしているのだろう……。

秋水:「自分は再生して頂けるのでしょうか」
中尉:「そのために今日はエンジンを掛けたのだ」

 《秋水號》の現時点での車体各部の実測寸法を測るために、秋水は中尉のアジト下Pへ中尉が押して曳航。

秋水:「あ、FZRさんお久しぶり……だいぶ脚回りもお変
    りのようで」
FZR:「お久しぶりです秋水様、少しは秋水様に近づけまし
    た。かなり被弾されたようで……激戦だったのです
    ね。右下側の装甲板が千切れ飛んでます。フロント
    のアクスルシャフトも大破……影響はメインフレー
    ムにまで及んでいるかしら」
秋水:「いきなりマヌケなビートに飛び出されたので、減速
    も間に合わず回避機動用のスペースを確保出来ませ
    んでした」
FZR:「次回は強力な索敵センサーと、レベル10のエネル
    ギー・シールドと上下切替え式のトラクタービーム
    を装備なさらないと。光子魚雷も必要かしら」
秋水:「その前に自分もFZR同様、本体を修理改装して機
    動性を向上せねば。戦術戦闘機として戦えません」
FZR:「わたくしのマスターに何なりとお申しつけ下さい」

 と、言う状態らしい。


 《秋水號》は辛くも倒したビートとの戦闘後、NSメッキ機能だけを維持して駐機場の奥深く仮死状態で復活の時を待っていたのでした。

 

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