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クラッチが滑る、という現象がオートバイにもあります。
クラッチはオートバイの中で何をやっているか? と言うと、クランクシャフトとミッションユニットの間で動力の断続をしている訳でした。
エンジンが掛かっていてギアが入っていると駆動輪は回らざるをえなく、停止していれば車体を前に押し出してしまいます。
ギアを入れた状態で停止している時は大抵クラッチレバーを握って、クラッチで動力を空回りさせて伝えないようにしている訳でした。
走行中に変速する際にもクラッチを断続させてギアを入れ換えます。
クラッチを切らなくても変速は出来るのですが、オートバイの場合は各ギアを変速する際にニュートラルポジションを通過してから次のギアに入ると言う事はないので、ちゃんとクラッチを使って回転数も合せてから変速した方が良いでしょう。
大きいオートバイやミッションのあまり頑丈でないオートバイなどではクラッチを使わないで変速して走っていると、ミッションのギアの当り面やドックギア部が毎回ショックを受けその内ギア自体が破損、中で破片が暴れて大騒ぎ……なんて事もあります。結構大変です。
オートマチックな変速方法を採らない普通のオートバイでは、クラッチの存在と操作技術は結構大切な事なのでした。
大抵のオートバイの場合一番良く使われている方式は『式多板式』のクラッチ構成が多いです。
4輪のマニュアル・ミッションなスポーツカーのように乾式単板クラッチなんていう形式を採用しているのは一部のBMW等だけです。
FZR:「湿式多板というのはなんで『湿式』なんですか」
狸穴:「大きな力を受けて擦れた揚げ句粉になって減ったゴ
ミをオイルで流したり、擦れる際に発生する熱をオ
イルで冷ましたりしているから湿式なのだ」
FZR:「わたくしのもそうでしたね」
狸穴:「んだ、エンジンの右側クランクケースのカバーの中
に入っている」
FZR:「なんで『多板』なんんですか」
狸穴:「オートバイは軽いし、クランクシャフトが軽くてエ
ンジンの回転上昇も激しいから、一枚の板では動力
をスムースに断続出来ないので、たくさん同じよう
な板を積層して使っているのだ」
FZR:「その方がコントロールしやすいのですね」
狸穴:「発進時などではね。ライダー全員がクラッチの操作
に熟練していて不必要に発熱させないとか、急加速
の際もあらかじめ低回転域でクラッチを繋ぎ切って
からスロットルを全開するという方法を知っている
ライダーだけなら湿式多板じゃなくても大丈夫なの
だが……」
FZR:「では、クラッチのコントロールをわたくし達オート
バイ側に任せて頂ければ完全にコントロールし切っ
てみせますが……」
狸穴:「商用オートバイのカブやメイトなど一部のオートバ
イはそうなっているし、最近数が増えたスクーター
はクラッチもミッションもオートバイ側でコントロ
ールしているが、人間達はギアーもコントロールし
たがるから、そう言うわけにも行かないらしい」
FZR:「大変なのが好きなんですね」
狸穴:「そうらしい」
FZR:「マスターはどちらですか」
狸穴:「どっちでも良いです。FZRがオートマチックにな
りたいのなら誰か予算と時間をくれればシフトペダ
ルも無い完全オートマチックなFZRを造っても良
いけど」
FZR:「わたくしのオートマチック化ですか……イイかも」
狸穴:「そのうち、ミッションもクラッチも全〜部壊れたら
やってみるか……」
FZR:「その時はエンジン性格も変えないといけませんね」
狸穴:「んだ」
中尉の所に配備されている《銀河號》のクラッチが滑ると言う事で開けてみた。
取り出したクラッチ板はどれも金属プレートの方は焼けていない……歪みも無く無事です。
なのに何故滑るか……。
クラッチハウジングとクラッチボスを見てみると……、いつもクラッチ板が引っ掛っている"爪"と"溝"の部分が段付き摩耗をしてました。
激しいトルクの掛け方を毎回するライダーのマシンや、出力を設計時点より上げているオートバイに良くある現象でした。
クラッチ板が自然摩耗する前にクラッチハウジング側の方が減ってしまい、その溝や爪の中をスムースにスライドする筈のクラッチ板が段に引っ掛ってしまって、上手く動けなくなっていたのでした。
この状況のクラッチは以前中尉の所にいたFZRめにも見られたので、その段付き部分をフライスで削り落としてしばらくの間はFZRも動いておりました。
そのうちクラッチ一式全部交換したけど。
《銀河號》のクラッチが段付きを起している部分を、お世話になっている祁門ガレイジさんにより手作業で! 砥石にて全部削り落とし(激・大変)、一応スムーズにスライドするようにして応急処置。(機械的なセンスが無いと壊すだけで、平滑には仕上げられません)(※編註:すまんことです)
大抵、クラッチが滑ると言って来る人のクラッチは、初期の段階であればコレで直ります。
この状態を長く続け滑ったクラッチのまま大出力を掛けると……クラッチは黒焼けになり、一気に摩耗してお終いです。
クラッチが壊れればどんなに大出力を豪語しているエンジンでも走れません。
ゼロヨン競技等特殊な使われ方をするものでは、クラッチに追加してドック・クラッチと言うモノが使われる場合もあります。
ドック・クラッチとはピークパワー域を迎える際に通常のクラッチがどんなに頑張っても滑ってしまうのを、機械的に直結して動力を伝える機構で、通常の街乗りのオートバイには必要ないモノでした。
とりあえずこうして直した中尉の《銀河號》は、クラッチ復活。でも、異状を起していた間にクラッチハウジング自体が振動していたせいか、クラッチハウジングが乗っかっているミッションシャフトの軸受のベアリングもガタがで出しておりました……。
そのベアリングと、クラッチ一式を交換するため、今回はクラッチ板の交換を見送ります。
銀河:「壊れてしまいました」
狸穴:「やむをえんのだ。いつも耐久テスト状態の走行だも
んねぇ」
銀河:「来月ラリーレイドに出るのですが、交換すれば直り
ますか」
狸穴:「直る」
FZR:「大変そうですね」
銀河:「陸上攻撃機ですから」
FZR:「わたくしは、中尉殿のオーダーをこなし切れなくて
退役させられました」
銀河:「自分は25000Km走ってますから、保った方で
しょう」
狸穴:「《銀河號》がセローだったら1万km保たなかった
かもね」
中尉:「精神力が足ら〜ん!」
こりゃ、次回《銀河號》のクランクケースを開ける際には……何らかの強化策を講じねば……。
こうしてクラッチを点検したついでにエンジンの腰上も点検してみると……。
ポートに堆積する筈のカーボンは無し。キレイになっておりました。
いつも高回転な走りだからかな?
FCRの空燃費が薄め?
シリンダーも点検。
狸穴:「あちゃ〜。減っている。ホナーの跡も全然無くて…
…シリンダーは鏡面状態」
銀河:「いけないのですか」
狸穴:「コレじゃ、シリンダーにオイルが付着せんよ。良く
焼き付かなかったねぇ……」
銀河:「減ったのはリングだけじゃなかったのですね」
狸穴:「リングも減っているけれど、それ以上にシリンダー
が減っている」
高発熱型のエンジンのシリンダーの中でピストンがロックしてしまい、ピストンが砕けてコネクティングロッドがクランクケースを突き破り『ハロ〜コンロッドはココにいるよ!』しているエンジンになる一歩手前でした。
とりあえず、現場では手持ちのオーバーサイズのピストンもリングも無かったので、ノーマルサイズのピストンリングとピストンピンだけを新品で入れ直して終わり。
シリンダの方は、ホナーマシンはさすがにエンジン屋さんじゃないので無いから、340と600番の紙やすりと、エビスビールの空き缶とウエスを使って手でホナー掛け。
でも、コレではあまり効果無いのだ……せいぜい保って3000qくらいかな?
と言う事で、シリンダーとピストンもO/Hと相なりました。
ヘッドは……熱による歪みを確認。
カム山が……ボロボロ。→交換。
バルブシートは……拡がって来ているので。→O/H。
なにかと《銀河號》も大変なようです。
でも、エンジン1発しかないのだ。充分保った方だと思います。
成績優秀〜! ホンダエライ!
でも組んでからクランキングして各ポートに耳を当てて聴くと、排気バルブ両方と吸気バルブ多分右側から圧縮されたエアーが漏れて来ています。
コネクティングロッドの小端部にガタが出たことは内緒にしておこう。(焼けちゃいないし修正して置くか……クランクシャフトをバラさねば……大変だぁ)
FZR:「マスター、ココにそうやって書いたら中尉にバレち
ゃいますよ」
狸穴:「そうだった……」
FZR:「おマヌケですわ」
銀河:「FZRもこのような状況だったのですか」
狸穴:「……もっと、酷かった」
FZR:「わたくしはそれでも4気筒ですから」
狸穴:「そう言う問題ではないと思う>FZR。そろそろF
ZRもそのあたり点検せんとね」
FZR:「は〜い」
気楽には〜いと言ってくれるが、古いしパーツの供給が心配だし、4気筒16バルブなので口座は大変なのだ。
《銀河號》は運良くFZRのようになる前に手が打てるのだ。単気筒だしそれほど再生費用も掛からんだろう。
使えば減るのだ。普通の事なのだ。驚くに当たらん。
コレでイイのだ。
ついでだから、短期決戦兵器として完全に競技用のXR化する?>中尉
でもアスファルトで最高速上がったらタイヤが……保たんね。
中尉+《銀河號》 マミアナ+FZRx
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