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犬も喰わないという夫婦喧嘩。(人間だって食べることは出来ないのだ)
どこでも執り行われる日常。
不要になった核電池を野積みしていることとか、バンアレン帯に異状が発生していることに端を発する訳ではなく、大抵の場合は旦那の性的能力の減退とか、妻の買い物の下手さが気に入らないとか、が原因なようである。
それらがつもり積もって、爆発したらしい……。
FZRをたまたま帰って来てすぐにPに入れず、人物照合ゲート近くの来客用のPのはじっこに置いていたのをソレで思い出した。
中尉から電話が掛かった際、アジトの窓を開けているとFZRが止まっているあたりから、
女:「ぎょえー!! 勝手に殺せばいいでしょ〜!! 殺せー、
うぎゃ〜」
男:「ぶつぶつ」
女:「◎▼+@`だから¥¥!! なのよ。きぃぃぃ〜」
男:「うぉぉぉ〜!」
殺せという言葉が聞えたので中尉の電話を一旦中座し、下を覗いてみる。
メインアジトは世帯数が多いのでいろいろなことがあるのである。
FZRから5mほど離れた所に、女の人が二人と男の人が一人……。
夫婦喧嘩は旦那の浮気?
まだ愛されているのだなぁ。
惚れてくれる相手が二人もいる旦那さんはいいなぁ。
そのうち女性の片方が、着ている白いブラウスとブラを脱ぎ捨てて上半身裸の半裸状態で地面に大の字を描いて、絶叫。
女:「△■だから私はどうするの! 応えてよ!ギョエ〜。
殺ス」
男:「ぶつぶつ」
殺せ→殺スという単語になった。
電話に戻って、中尉としばらく前に張った結界のことについて話す。
現段階では切迫した状況にはなっていないらしい。
しばらく様子をみていただくこととした。
電話の途中でも下のほうで騒いでおります。FZRが気になる。
旦那の妻も争いに加わって? 女性2名の声が深夜のアジトに響き渡る。
中尉によると、5階の高さにいるあっしの電話にも下の声は聞えているらしい。
そのうち、子供用の自転車が投げつけられたらしく、それらしい音が響いている。FZRに被害が及ぶ前にこういう状況の中に出て行くのは嫌だけど、場所を移動させる事にしたので電話を切る。
ついでにゴミも出す。
鵺楓とか、メーカーから部品を取り寄せた際の段ボールゴミを内職のように細かく切って詰めた袋がちょっと大きい。
エレベーターの中でお散歩に行くらしい犬を連れた28才くらいの女性と一緒になる。
狸穴:「こんばんは。下で誰か喧嘩しているみたいですね」
女性:「なんか大きな声が聞えていた……まだいるのかしら
……嫌だわ〜」
躾の良い犬らしく、エレベーターの中でもジッとお座りしてドアが開くのを待っている。あっしの持っているゴミ袋が少し気になるらしく、クンクン。
でも、知らない人はちょっと怖いのだ。
しゃがんで顔を撫でてやると、ペロペロ手を舐めて来た。飼主とあっしの顔を交互に見ている。犬、可愛いでやんす。
急に腹を見せてひっくりかえる。絶対服従のポーズ……なんで?
零時過ぎてからのゴミ出しは静かに出さねばならないのだ。
下に降りてみると、同じPにいるRAV4の屋根とBMWのボンネット前に子供用の自転車と三輪車が打ち上げられていた。
地面のコンクリートの上にはブラウスとブラが投げ棄てられていた。
女の人が上半身裸の仁王立ちで髪振り乱して、FZRの隣に立っている。
鼻血を出していたらしい。顔洗ったら、可愛いかも……。
当事者らしい夫婦も一組近くに立っている。
狸穴:「FZR大丈夫か?」
FZR:「わたくしはまだ何もされていませんが、Pの方では……」
狸穴:「判ってる。すぐ移動しよう」
おっぱい丸出しの鼻血が乾いた女の人に、
狸穴:「キレイなお嬢さん。取り込み中、御免なすって。オートバイを退けましょう」
FZRの前輪に噛ましたロックを解いていると、その女の人にケツを蹴られた。
サッカー選手じゃないし腰も回っていない裸足のキックなので、大した衝撃は無い。
酒の匂いはしていないけど。大分、行儀の悪い女だなぁ……。
女 :「なによあんた、関係ないでしょ!」
狸穴:「おっぱい2個、丸出し!」
ジッと見る。
女の人が自分の状態に気がついたらしく、両手で胸を隠して先程まで争っていた男とその妻らしい二人の方へ少し寄る。
女性が近寄って行くと、妻らしい人が近寄るなと突きで女性を迎撃したので、またFZRの進路を塞がれる。
FZRを引き戻すタイミングが少し遅れたことで、前輪の方に後ずさってきた女の脚を引っ掛けてしまい倒してしまった。
ケツから落ちたがそれでも胸を隠していたので、側頭部を地面に打った。
3人の中で何かあると一番厄介になりそうだと警戒していた男と目が合った。
男:「あ、済みません。どうぞ、行って下さい。夜中に騒い
でしまい……もごもご」
半裸の女はすぐに立上がって頭とケツをさすっていたので、無事なようだ。
目をみると、泣きそうだけど泣いてない。ガンバレ!
段ボールゴミの袋をFZRのタンクに乗せて、その場を去る。
セル一発。
狸穴:「良かったねー。被害無くて」
FZR:「かなりエキサイトしていたようですね」
狸穴:「人間は感情とかあって、いろいろ大変なんだよ。で
もちょっと迷惑だよな」
FZR:「わたくしをすぐにPに入れなかったのも迷惑ですね」
狸穴:「んだ。ちょっと怠けてたぜ」
FZR:「マスターはああ言う経験ありますか」
狸穴:「……あるよ、若かった頃に何度か。あんな騒ぎには
ならなかったけどね、今じゃ有名洋服デザイナーの
懐刀をやっているらしい。そのうち会うかな……」
FZR:「まだちょっとだけ人間だった頃ですね」
狸穴:「んだ。でもその頃と風貌・声質・名前も違うのでま
ず判らないと思うよ」
FZRを指定のPに入れに行くと、Pの近くのベンチでは高校生と思しき男女が抱擁&接吻。二人とも可愛いです。
楽しそうな夏なのだな。
いつまでも仲良くね。
狸穴:「んじゃ、お休み〜」
FZR:「ではまた明日。明日のご予定は目黒方面ですね」
狸穴:「応」
皆の出したゴミ置き場を少しかたずけて自分のゴミ出しも済まし、エレベーターの所に戻るとまだやっていた。
あれれ……もう一人増えてるぞ。
仕事帰りに一杯引っかけて帰って来たオジサンが、半裸の女性をからかっていたのでした。
酔っぱらいのオジサンは男にも、「色事はキレイに済ませねば駄目よ〜」と据わった目で講釈中。
男がオジサンに早く引き上げて頂こうと、手を引いてエレベーターホールの方へ誘導しかけた時に妻らしい女性がまた半裸の女に攻撃を加える。キ〜ック!
再び阿鼻叫喚である。
半裸も構わず、奥さんの髪に掴み掛かっている。
奥さんの方が体力的に優勢かな。
アジトの建物を見上げると、ギャラリー多数。
夏だし、みんな窓開けてるしそろそろ寝る時間だもんねぇ。
男がオジサンをゲートの中に送り込んで戻って来ると、奥さんと女の人を引き離しに間に入った。
なかなか離れないので助けるため、後ろから女の人の首に手を回して喉輪にして引くとすぐに離れた。
その時、間でもがいていた男の手が女の人を突き飛ばすような形になり、
女:「私を突き飛ばしたわね! やっぱり奥さんを選ぶんだ!
……んわぁ〜、あぁぁ」
ついに泣き出した。大声である。
女:「死んでやる!」
妻:「早く死んでよ」
男は妻の手を引いてゲートの方へ。
女:「……さっきのおじさん。酷いんだよ〜あいつ」
あっしが、さっきの"おじさん"らしい。"おじさん"ねぇ……たしかに。坊ちゃんとか王子様とは呼んでもらえんな。
狸穴:「姐さん、服を着ないか?」
女 :「……」
そのスキに旦那が奥さんの手を引いて連れて中に入って行った。
おとこが『悪いっす……ちょっと頼む』ってな感じでエレベーターの箱の中に入る時にあっしに向けて敬礼していた。
奥さんは箱の中からキツい形相で女を視ている。
なんだかなぁ。
今夜は、これから大変なんだろうなぁ、あの夫婦。
どうせ10年もすれば笑い話かなぁ。
きっと、『あの間抜けなライダーがいてくれてあの時は助かったよ〜』なんてことになるんだろうな。
腹に擦過傷を負った女は自分で脱ぎ捨てた白いブラを拾って着けはじめた。
ブラウスの背には踏んだらしく、つっかけの跡が付いていた。
ぶっ飛んでいたサンダルと鞄を拾ってきてやると、その中からハンカチを出して顔を拭いている。
私が一番可哀想だ、と言うこと何度もあっしに説明。
先程までココにいた3人もしくは4人集めて、2時間くらいオウ○真理教と統○教会とイ○ラム教に見立てて一席、話てやろうかと思ったがみんなも帰ったし疲れているようなので駅まで徒歩で送って行ってやった。
家は二駅ほど離れた所らしい。
駅に着くまで、10回ほど美しいとかキレイだとか可愛いと言ってやったら、少し元気になって。
女 :「おじさん私に気があるの? 今日はゴメンねぇ。マ
ンションの人達に会ったら謝っておいてね。私、帰
るから」
狸穴:「へいへい。でも壊した車2台の件で揉めるんじゃな
い?」
女 :「……悪い事、しちゃったなぁ。実はおじさんのバイ
クも少し蹴った」
狸穴:「え……どこ」
女 :「タイヤと横。凄く硬かった」
狸穴:「……オートバイは平気だって言ってたなぁ……」
女 :「……それ変だよ、オートバイと話ているの?」
狸穴:「あ……いや。こっちのことだ忘れて。壊れてなかったみたい。大丈夫だと思うよ」
ボタンが取れてボロボロの格好をしていたので、交番前の駅タクシーに乗って帰って行きました。
交番の中から少し視線を感じる。
戻ってきて、FZRの車体カバーをめくってカウルを確認するとなんとも無かった。
狸穴:「蹴ったと言っていたぞ」
FZR:「あの程度では、問題ありませんわ。多分クランクケ
ースカバーでしょう」
また熱い夏です。
皆様も、お気をつけて。
世間様とは、よろしくやりましょう。
散歩の人+犬 酔オジサン ご夫婦/半裸嬢 マミアナ+FZRx@メインアジト
中尉、ゴメンね電話に集中出来ず、途中みたいになってしもうた。
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