Vol.161 リア・ショック 2001-05-27


 大昔のリジットフレームでもない限り、法によりオートバイの脚回りには何らかの干渉装置(ショックを吸収する機構)が必要とされている。
 コレを最近ではサスペンションとか、ショック・ユニットとかアブソーバーとか、バネとか適当に気に入った名前で呼んでいたりする。
 要するにオートバイが走る際に、路面の凹凸を通過するその衝撃を車体にダイレクトに伝えないようにする安定装置だ。
 ダイレクトにショックが伝われば、車体は突き上げられ乗り心地も悪いことこの上ないし、昨今の300km/hを越える能力を持つ車体に、サスペンションがなかったらどうやったってその能力を出し切れない。
 危険である。

 サスがついていても、その調整が合っていなかったりすると、これまた大変なことになる。
 メーカーでは、初めから乗り手の体重や2名乗車時の時のことを考えたり、ある程度平均的な想定をしてオートバイのサスペンションの設定を済ませて、出荷している。
 オートバイが200kg以下の軽さだと、リアサスは結構固く感じる。相対的に重量の大きなオートバイでは1名乗車も2名乗車もあまり変わりがない。
 軽いオートバイではこの設定がまた曲者で、大抵のオートバイに乗ってみると、一人あたり大体65kgくらいで2名乗車を目安に設定している感じです。
 でもコレも走る場所や、乗り手の体重や走り方などが違えばせっかく設定されていても全く合っていないと言うことになる。
 もちろんメーカーの用意したこの設定は、車体のことをとてもよく考えており、少し我慢すれば、買ってそのままでも誰が乗っても走ることは走ってしまうのだ。
 凄い事なのだが……。

 普通に購入されるオートバイの場合、不特定多数人間が1台を代わる代わる乗るようなことは少なく、大抵『自分のオートバイ』として個人所有&使用される事が多い。
 このように乗り手が『自分』と決まっているような場合は、自分の体重や走り方、選択するタイヤ、主に走る所の状況などに合わせて前後ともサスペンションを調整してしまうと良いのでした。
 サスの調整。
 なんて言うと物凄く面倒なことだと思われがちだが、リアショックに関しては大抵のオートバイは出荷時に『標準』に合わせられた調整機構がついているので、それを少し理解した上で(判らない人はオートバイ屋に「固くしろ」「柔らかくしろ」等作業注文を付ける)調整してみると良い。
 普段走っている所で、それほどスピードが出ていない交差点の左折とかの低いスピードでも、カンの良い人は車体の動きや乗り心地等で判ると思う。
 設定が合って来ると車体の動きも楽になってくる。
 直進20km/h位でもこの違いは判るはず。
 路面を踏む時の感じがちゃんと判るくせに、凸部を通過する際の衝撃は少ない。

 前後のサスのバランスも重要で、まず先に前側のサスのダンパーやスプリングのイニシャルを自分の走る場所などに合わせて調整。
 フォークオイルを1年以上替えていない方は、オイル交換するだけでも世界が変わります。
 フォークオイルは大体1年で1回交換が限界。意外と交換する方は少なくて「八年くらい替えていない」と言う方もいたり……。
 フォークオイルを年1回交換するだけでも、フォークの寿命が違うのに……。
 ちなみに、FZRでは年に2回交換しています。
 さて設定。
 硬いと低速コーナーでアウトに跳ねながら流れてしまうし、柔らかいと高速コーナーでG(重力)が掛かると沈み過ぎます。
 バネのイニシャル(押し込む量)を左右のフォークを同調させながら、違いなく圧し込んで行きましょう。自分の走り方や体重等に合わせて……。
 コーナーで合せるのが普通ですが、直線での乗り心地を重視される方もいます。
 でも基本はコーナでGが掛かった状態で合せます。
 イニシャルが足りなくて沈み過ぎれば、ダンパーがキツく作用しサスの動きが遅くなり路面へのタイヤの接地圧が一定せず追随性が疎外されます。
 イニシャルが強過ぎると、ダンパーが効かないまだ沈んでいない所でサスが突っ張ってしまうのでコレも落ち着きが悪く暴れるので駄目です。
 デフォルトの設定では、ある程度沈んだ所でダンパーもバネの力に対してほど良く効くように設定されています。
 あまり深くサスが沈んでもバンク角が浅くなってまうし……。
 車種により違いますので各車に合わせた設定を。

FZR:「わたくしの場合は車重が軽いので、結構深い所でダ
   ンパーが効くようになってます。バネのイニシャルも
   それほど強く掛けてません」
狸穴:「車重が軽いからねぇ。でもメインは前のサスだから
   結構気を使っているのだが」
FZR:「でももうそろそろ、スライドメタルなども交換して
   頂いてから3年を迎えますので減り始めております」
狸穴:「了解」

 バネを合せたら、フォークオイルの粘度と油面の高さにより、ダンパーの効き方を調整。
 粘度が高くなるとダンパーが強く効きます。低いと逆。
 yamahaなオートバイでは、デフォルトでG−10という粘度のオイルが使用されております。
 G−10以外にヤマハから出ている物として、チョット固めのG−15なんて言うモノもあります。

FZR:「前にG−15を規定量入れたら、ダンパーがバネに
   対して効き過ぎてチョット合わなかったんですよね」
狸穴:「んだ。あれは合わなかったねぇ」

 純正のフォークオイルのほかに社外でも色々なフォークオイルが出ております。
 今FZRに入れているのは、社外のABSOというオイル。
 基本的に純正オイルとオイルの質が違うようです。サスの動く速度によりダンパの効き方が変わる不思議なオイルです。
 普段は軽く動いているのですが、バンク角が深くなるGの掛かった速い動きを要求される時だけダンパーの動きが固くなります。(特に延び側減衰力)
 寿命はチョット早くて、半年くらいで性能劣化の始まりを確認。でも、1年くらいは保ちます。
 このオイルでは、純正のバネに5ミリのイニシャルを加えて油面を15ミリ上げておくのがベスト。
 ダンパーの効きを決めているオリフィスバルブという小さな穴があるのですが、以前はこの小さな穴を全部熔接して塞ぎ、違う高さに違う口径で穴を開け直していましたが、ABSOになってからはデフォルトに戻しております。
(オリフィス設定の話はまたいつか……)

 こうしてFZRのフロントサスは、あっしの1名乗車・街乗り・バイアスタイヤ・ホイール重量(バネ下)に合せました。
 少し柔らか目です。
 首都高速や更に負担の掛かる峠道や果てはサーキットでは、この設定では限界まではいけません。
 リアサスはフロントに対して合せます。
 リアにフロントを合せるようなことは普通、致しません。
 あっしは普段、フロント荷重でコーナリングする事はあまりないので、リアの設定はサスの会社のOHLINSの、りアショック設定指示に従っております。
 といっても、FZR250用のOHLINSは販売設定されていないので、ダンパーが効く力を、使用のアームとリンク比など要素を計算した上で一度分解し中の部品を組み替えてオリジナル設定をした上で、1名乗車で再設定。
 バネは今はリンクとの兼ね合いもあり14キロのモノが最低のイニシャルで入っているのですがダンパーの設定は8.5キロバネに準拠です。
 8.5キロのバネも手元にあるので、次回の点検の際に交換し調整の上使用する予定〜。
 OHLINSのありがたいところはとても賢く出来ていて、O/Hが何回でも効きそのたびに設定もかえられるし、封入されている窒素ガスやオイルを交換出来ること、取り付け部分の選択及びブッシュ類の交換が可能であること、調整範囲がとても広いこと。工作精度も半端じゃなく高いです。
 とても有効です。
 もうノーマルショックには戻れません。
 同じ距離を走っても、疲労度が少ないのだ。
 ちなみに、OHLINSユーザーはたくさんおられますが、2年ごとにO/Hしている方はほとんどいないようです。
 まあ、そんなに簡単にガスやオイルが抜けたり、中のパーツが減ってしまうとか、破壊することはないのですが、オイルは劣化します。
 2年ごとのO/Hは必要なのでした。
 O/Hを経験した方はそう多くはいませんし、またOHLINSのショックを売っているお店でもO/Hができることは知っているが、実際にお客さんのショックをO/Hしたことのないお店は多いです。
 薦めてくれるお店は少ないのでしょう。(本当はこういう所が商売の延びになるんでしょうけど、手っ取り早く新しいほかのモノを売りたいもねぇ=商売)
 もちろん商品として価格は高いから、そう頻繁にO/Hさせると"OHLINS=耐久力がない"と思われてしまうことを警戒しているお店も多いかも知れない。ショックを車体から取り出してO/Hの間、サスのない状態のマシンをジッと預かっているのも面倒だと考えるお店もあるかも知れませんね。
 皆様のお付き合いしている、オートバイ屋さんはいかがでしょうか?
 O/H、物凄く効きます、えへへ。
(O/Hが出来ると言うことは、鵺楓のオークションなどで安く中古を買って来ても、O/Hすれば新品と同様もしくは設定を自分なりに合わせられれば新品以上! のモノが造れると言うことでした)
(でも、最近のメーカー純正OHLINSは、一部を除きO/Hに対応できないらしいです)

 そんなOHLINSも、唯一弱点があります。(OHLINSだけのことではないのですが!)
 筒体及び別体タンクの熱によるダンパーの作動変化。
 作動時の発熱及びエンジンからの熱でオイルの粘度やガス圧が変動してしまい、ダンパーの働きが『若干ですが』変化してしまうのでした。
 コレを防ぐためにエンジンや排気管から遠い所に別体タンクをおきます。
 別体タンクはアルミ製ですので放熱が効けば問題なし。取り付け位置は要注意です。
 筒体の方はエンジンの後ですので、あまりに激しい発熱をするクランクケースの場合は遮熱板を断熱出来る物で対策しておきます。
 まあ、昨今のオートバイではそのあたりの冷却等は充分計算されて車体が造られていますので、そのまま付け替えるだけで問題はないですけど。

FZR:「わたくしもそれほど激しい発熱は致しませんので今
   の状態でも充分です」
狸穴:「そうだね〜FZRは各排気量とも排熱方法も計算さ
   れているし、デフォルトのサスペンションの取り付け
   を踏襲していれば問題な〜し」
FZR:「マスター、作動量が激しいオフ車はどうなのですか」
狸穴:「オフ車は作動だけで結構な熱が出るから、エンジン
   や排気管からの遮熱はより完璧を期待しなくては」
FZR:「中尉殿の所の《秋水》様と《弐號》様はどちらもそ
   うですね」
狸穴:「んだ。特に《秋水號》は2番チャンバーがモロに近
   所を通過しているから、遮熱材も頻繁に点検・交換・
   改良だ」

 あ!これはOHLINSだけによることではなく、純正・社外を問わず全てのショックユニットに言えることです。
 他社に比べて、比較的熱に強い構造を持つOHLINSでもコレだけはご注意下さい。

FZR:「今日はまるでOHLINS社のコマーシャルですね〜」
狸穴:「別に他社のことを特定して扱き下ろしたワケでもない
   し、あっしが儲かることもないし。でも良いモノは良い
   のだ。コレでイイのだ」
FZR:「それはわたくしも、身をもって体感しておりますわ」
狸穴:「だから皆に薦めているのでした」
FZR:「マスター、もしOHLINSの発注やO/H依頼がコ
   レを見てジャンジャン入って来たらどうします?」
狸穴:「別に構わんけど、みんなの住んでいる近所にもOHL
   INS扱いショップはあるんじゃない? そう言う所と
   相談しながら、ショップの人にどんどん細かいセッティ
   ング・オーダーを出して、店もお客も勉強すれば良いの
   だ」
FZR:「セッティングの度にチョットお金掛かりそうですけど」
狸穴:「……やむをえん部分だねぇ。フロント周りやフレーム
   との兼ね合いもあるし、セッティングはお金掛かるか
   な」
FZR:「そう言えば、言葉を勉強して自費でOHLINS本社
   の講習受けても良いんですよね」
狸穴:「んだ。オートバイの脚回りは10人いれば10人違う
   し、100台いれば100台違うのだ。どのレベルまで
   合わせられるか? 基礎さえ抑えれば応用も効くけど勉
   強しないと」
FZR:「お客さんとそのオートバイは、そういう部分も含めて
   求めてお金を払うんですもんね。安全を買うと言うこと
   もありますし」
狸穴「ただ理由もなく、高価な訳ではないのでした」

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