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オートバイに乗っていると、ただ移動するだけで自動車や電車より大変だったりすることが多い。
雨が降れば濡れるし夏は熱いし冬は冷たい。
交通量の多い所では排気ガスを全身に浴び、肺の中までガスを吸う。
自分でも排ガスをたくさん出す。
止まれば足を出さないと立っていられない。
ぶつかればダイレクトに当たる。とても痛い。
運が悪ければ7km/hで、死む。
同行者がいたとしてもほとんどは不可能。
荷物も大きな物は搭載出来ない。
それでも楽し〜いでやんすねぇ、コレがまた。
FZR:「マスターの移動はほとんどわたくしですね」
狸穴:「だね。いつもお世話になっております」
FZR:「オートバイに乗られる人間は全体の何%くらいなのでし
ょうか」
狸穴:「……多くはいないと思うよ。特殊な事象じゃないんだけ
どね」
FZR:「わたくし達オートバイが乗せる相手は、ほぼ人間だけで
す」
狸穴:「元々人間が乗るために造られているからねぇ、あまり他
の物体は乗らない」
FZR:「人間のために造られたのですか」
狸穴:「そうだよ。自動車も飛行機も電話もパソコンも皆そう」
FZR:「凄いですね」
狸穴:「まったく凄いねぇ、人間は……ということにしておこう」
オートバイを買う。
誰でもお金さえ払えば免許がなくたって、自転車に乗れなくたって買える。
昔、ハーレーを買ってナンバーも付けず一度も乗らないで飾っていた奴がいた。
納車の際に分解して家に入れさせられたのでよく覚えている。
昼に仕ことの打合わせで狸穴町(あっしの名前と同じ)へ行った時に、その近くの古い蕎麦屋で向こうがこちらを見付けて偶然、遇った。
仕事は何をやって喰っているのかは当時も判らない人だった。
もう66才になっていた。いかつかったのに痩せてしまったが、目だけは変わらない。
糖尿らしい。
こちらのテーブルに来た。はじめてちゃんと話た。
狸穴:「あのハーレーどうした」
糖尿:「火ぃつけて燃やした」
狸穴:「無駄な事を」
糖尿:「嘘じゃ。まだある。15年前に車検をとってたまに乗って
いる」
狸穴:「今度ツーリングに行きますか」
糖尿:「目がな。夜は走れん」
狸穴:「自業自得&片方だけ御同様」
糖尿:「若いうちは毎日、良く呑んで喰った。お前も気をつけろ」
狸穴:「大丈夫。もう酒はほとんど呑んでいない」
糖尿:「手前のからだは手前でなんとかしろということだ、怪我
もだ」
狸穴:「了解」
糖尿:「お前、まだバイクに乗ってるだろう。靴にペダルの跡が
ある」
狸穴:「FZR250」
糖尿:「なんだ、それ」
狸穴:「ハーレーは間に合ってるから受け取らないよ。死ぬまで、
FLHに乗ると良い」
糖尿:「……そのつもりだ。蕎麦もよく咬んで喰え」
狸穴:「墓まで持ってけ」
独身で家族はいないと思っていたら、かつての愛人との間に娘と息子がいるらしい。初めて聴いた。
息子は28才でオートバイには興味がないらしい。
どこで知り合ったのかは忘れた。
老けて良くしゃべる様になった。昔はあまりしゃべらない人だった。
近所にハーレー屋さんがあり重宝しているとの事だった。
昔から同年代の友人は少ないが、上の友人は多いのだ。
手元に持っていた長い包みは、日本刀だ。
FZR:「FLHにお乗りらしいですね。先程までわたくしを見て
ました」
狸穴:「ショベルだよ」
FZR:「わたくしとは正反対のオートバイですわ」
狸穴:「変な人だったろ」
FZR:「よく判りません」
狸穴:「俺もよく判らん」
FZR:「今日はマスターのお誕生日ですね。わたくしが誕生日の
歌を唄いましょうか?」
狸穴:「……折角、忘れていたのに」
本当に"変わっている"というのはああいう者だろう。
オートバイ乗りにはいろいろな人がいるのだ。
糖尿謎爺 マミアナ+FZR
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