Vol.83 ブレーキ・ロック 2000-08-26

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FZR:「マスター、先程から前を走っている大きなオートバ
    イの、減速時の挙動が変です」
狸穴:「どうしたんかなぁ……あれ? ブレーキ引き摺って
    いるみたいだ」
FZR:「リアのディスクが少し赤熱しているみたいですね」

 英国大使館前から皇居の方に曲り、竹橋のほうへ抜けているコースで、前を走る大型の少し古いオートバイのリアディスクをよく見ると、夜なので暗い事もあり薄ら赤熱しているのを確認。
 乗っているライダーは気が付いていないようだ。
 少し近付いてみると、排気音に混じりディスクから音が出ているのが聞こえて来た。
 キャリパーのピストンが戻らなくなってしまい、常にパッドをディスクに押し当てて走っているようだ。
 熱が上がって来ると膨張し、一気に当る力も強くなって来ているようだ。
 途中、信号で止まった時によく見てみるとリアキャリパーから少し煙が出ている。
 排気量が大きいのでその状態でも普通に走ってしまい、ライダーは全く気付かずに乗っているのかな??
 停止時にリアブレーキペダルを踏み込めば効かないから異状が判るだろうに……でも気が付いていない様子。

 先程からこちらが少し接近していたため、信号か青になると同時に勢いよくこちらを引き離そうと、代官町の高速出路先から続くS字に入って行った。
 一つめのコーナーを過ぎ二つめの左コーナーにさし掛かった際に少し減速したのか、ブレーキランプが点いた瞬間にリアのディスクがロックしたままリリース出来なかったらしく、そのまま転けてしまった。
 あらら……。
 幸い深夜なので車は他に走っておらず、ライダーも無事の様子ですぐに立ち上がってオートバイを起こしに掛っている。
 後続車が気になるのでFZRのウインカーを付けたまま盾にして、転んだライダーの方へ行くと、マシンをすでに起して路肩まで押して行こうとしているらしいがリアブレーキが喰ってしまい、後ろのタイヤの回転が重いらしく動かない。
 一緒に後ろから押す。

ライダー:「ども、済みません。押しても動かなくて……」
狸穴:「んじゃ、押しますよ〜」

 凄く重たい。半ばロックし掛かったリアホイールをなんとか押して左側に寄せて停めた。
 路上に置いたFZRを取りに行き、そのオートバイの後ろに停める。

ライダー:「いや〜いきなりで訳の判らないうちに転んでしま
    いました。どうしたのかな?」
狸穴:「後ろのブレーキ、ロックしちゃったみたいですね。
    先程後ろから見たらディスクが少し赤くなってまし
    たよ」

 センタースタンドを掛けて、リアを上げホイールを回そうとしても手動じゃ回らない。
 こりゃ酷いや……。

ライダー:「ホントだ……リアブレーキのパッド換えたばかり
    なのに……パッドのせいかなぁ」

 ディスクを見ると、少し黒焼けになっている。パッドが焼き付いたのかな?
 かなり長い間この状態で走っていたようだ。FZRのように排気量の無いオートバイならば車速が上がらず気が付く事もあったのだろうが、1000ccを越えるエンジンが付いていると気がつかないのかも知れない。

狸穴:「キャリパーとかは整備されてますか?」
ライダー:「いえ……ブレーキフルードは車検の時に換えたこ
    とがありますが、これと言ってキャリパーは……
    なにもしてませんでした」

 前の方のキャリパーにも触れてみると、後ろよりはマシだが、かなり熱くなっている。

狸穴:「オートバイ屋さんでオーバーホールしてみるか、
    もしくはキャリパーとディスクを換えた方が良さ
    そうですね。普段からブレーキ鳴ってませんでし
    た?」
ライダー:「はい、押してる時などは結構鳴ってましたが……」
狸穴:「ピストンが引っかかっちゃたんじゃないかなぁ」

 30分しても、まだ後ろのキャリパーは熱いままでした。
 それでも、なんとか冷えて来たのでそのオートバイの車載工具でキャリパーを外してみると、パッドはもうほとんど無くなっていました。換えたばかりだった筈?
 ドライバーをパッドの間に当て、ピストンを押し戻そうとしても微動もしない。
 パッドを外して、プライヤーでピストンを掴んで少し回転させてからブレーキペダルを少し踏むとピストンが出て来た。
 そこからゆっくりまたピストンを押し込んでみると、今度は少し重たいがなんとか中に入って行った。
 シールももう駄目らしく、少しフルードが滲んでいたようだ。あらら……。
 加熱した際に、中でフルードが沸点に達していたのかな?

狸穴:「やっぱり、もうこのキャリパー駄目みたいです」
ライダー:「普通に走るから、全然気がつかなかった……いき
    なりだったんで転んでしまいました」

 中のシールも長く使っているうちに硬化してしまい、ピストンを戻せなくなってしまったのが原因で、ずっと引き摺って走っているうちにキャリパー自体を壊してしまったらしい。
 転んだ拍子に、左側のマフラーも傷だらけだし、ステップホルダーも中に入ってしまっている。ハンドルバーも少し曲って燃料タンクにハンドルスイッチが当ったらしく傷がついている。
 あらら……な状態。
 とりあえず、何度かリアキャリパーのピストンを出したり戻したりして、少し動くように応急的な処理をして、マフラーがショックに当らなくなるまで引っぱり出してお終い。

狸穴:「あまりリアは掛けない方が良いですよ〜。近いうち
    に交換された方が良さそうですね」
ライダー:「明日すぐにオートバイ屋さんに預けて直して貰いま
    す。タンクやマフラーはその後だなぁ……」

 かなりガッカリされたようで、走って行かれました。

FZR:「ますたー、他の方はあまりブレーキのオーバーホー
    ルとかされないのですか?」
狸穴:「そうだねぇ……、パッドくらいは交換しているみた
    いだけれど、後はそのままになっている人が多いよ」
FZR:「わたくしのように頻繁にフルードを換えたり、キャ
    リパーのピストンを脱着されているオートバイは少
    ないんですね」
狸穴:「大抵の人は、そうだね。油圧系にはあまり手を出せ
    ないのが現状じゃないかな」

 皆様も、ご自分のオートバイのタイヤを手で空回しさせてみて転がりが悪い様@であれば、キャリパーやマスターシリンダーのインナーキットを交換した方が良いようです。
 オートバイ屋に言えばすぐにやってくれます。
 マミアナ的な考えでは、ブレーキ関係は全部の部品が消耗新だと思っていますから、あのライダーのオートバイのような車体はブレーキシステム全交換です。
 安全は、少しだけお金が掛かるのだ。
 かくいう私も昔、時間がなくてCRXと言う自動車に乗っていた時に、右前ブレーキをあのオートバイと同じような状態にしてしまい焼き付かせて、ローターごと壊してしまった事がありました。
 点検は大切ですね……。
 今夏、たくさん走った方はそろそろご確認を〜。

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