| 時計やテスターやダイヤルゲージ、ノギス、マイクロメータ。
これらには目盛がふってある。
オートバイにも当然いろんなメーターが付いていたりするのである。
メーターのデザインは径形状と文字板上の意匠と針の意匠で構成されている。
段差が付いたものや針が曲がったもの、文字のフォントのデザイン。
とにかく細かいのである。
おまけに、大量生産品でないワンオフとなると全て手製のものとなる。
乗れば何回も見なきゃなら無い事となる部品だし、気に入らないとバイク自体まで嫌いになりそうだ。
造るに際して気を使う事となる。
パソコン上の画面でチャッチャ! とやれれば良いのだがそんな便利なデバイスはどこにも無い。
こうなるとデザイン段階で配置を製作し易く、更に壊れないように考えなくてはならなくなる。
FZR:「ますたー。今日はメーター屋さんへ伺うんですよね?」
狸穴:「そうだよ。打ち合わせの途中で寄れる」
FZR:「わたくしの、ちょっと焼けて来たメータをデザイン
していただけるのですか?」
狸穴:「んー、残念ながらFZRのではないのだ。いつもお
世話になっているSRX屋さんのメインマシンのメ
ーター2個が上がって来たのだ」
FZR:「どんな感じかしら?」
狸穴:「……かっちょ良い!」
上がって来たメータを確認すると、ものすごい事になっている。
職人技なのだ。
黒い文字板の上にダイヤルゲージに近いデザインの目盛がふってあり、金属製の針がまた細い。
0点もピタリと合っている。
文字板の塗装も、反射せず径年変化により割れて来たり劣化しないもの。
文字板の針抜け穴も、適度なクリアランスをとった上でかなり小さい。
こちらの要求を全部満たしてくれている。
振ってみると、針の重量バランスも取ってあり、ダンパーの改造も済ましてある。
この白髪のちょっと粋なメータ屋の親爺、本人的には職人らしいがどう見ても芸術家肌なのだ。
知らないのはご本人だけらしい。
凄い人見知りだが、どういう訳かあっしを気に入ってくれた。
工房の中には、フェラーリやポルシェはいうに及ばずRR、アストンマーチン、ベントレイ、ロータス(F1)、果てはブガッティーのメーターまで修理を待っている。
看板も出さず、一切表に出る事も無い営業形態で今までやって来ているそうだ。
初めて遭ったのが、今から20年前くらい。
ある老舗の外国オートバイ屋さんからのご紹介だった。
お客から託された1948年式のハーレーのメーターを整備中に、廃油バットに落っことしてしまい、中までオイルまみれになってしまったのを救って頂いた。
分解したついでに、このスピードメータがもうダメになっている事を発見したらしく『中の部品を全部造って直しておいたよ』、とのことだった。
旧車のメータばかりでなく最新の電子メータも直せるらしい。
世の中には、凄くて不思議な方がたくさんいるのだ。
この親爺もどうやら『大田区』の出身らしい。
大田区といえば羽田飛行場が近所にあり、そこから出される無理難題といわれる超高度な要求に応える集団がいる。
高性能な工作機械や工具が無かった時代に手と知恵だけを頼りに鍛え、要求に応えて来たのだ。
彼らの手は、考えられないほど高精度なセンサーで少しの誤差も見逃さない。
FZRの乙女回路(点火)や妄想回路(EXUP)を新造してくれたのも『大田区』だった。
今のハイテクを支えているのは、そのプロトタイプや実験マシンを造る大田区の人達のノウハウらしい。
最近アメリカの方でもそれに気が付いたらしく、数少ない後継者を青田狩りし始めているらしい。
研究所を用意するということで若い人を連れて行ってしまうのだ。
……日本国はコレからどうなるのかなぁ。
FZR:「マスターがいつも使っているカメラやレンズも、大
元は大田区から出たものかも知れませんね」
狸穴:「ほんとにそうかもね。忙しい時は投げたりする事も
あるけれど狂った事はほとんど無い」
FZR:「わたくしはアメリカーナと書いてあっても、中身は
日本製で良かったわ」
狸穴:「ワハハ」
FZR:「マスターも大田区ですか?」
狸穴:「冗談じゃないよ、……足元にも及ばねぇ」
前回の仕事、コンペでアメリカ人の有名フォトグラファーにとられたけれど、次はとり返してやる。
あの微妙なオーダーはアメリカンには無理なのだ。(でもあっしの負けです)
FZR:「……頑張って下さいね」
狸穴:「応!」
メータ屋の親爺から一言。
メーター屋:「気に入ったからって、ずっとメーター見ながら走
るんじゃないぞ。それで追突して折角造ったメー
タごと車をお釈迦にした奴がいるんだ」
(大昔……あっしの事である)
FZR:「マスターは最近もそれで、お巡りさんに捕まってま
すもんね!」
狸穴:「わ! 今それを言うんじゃない!」
親爺にまた睨まれてしまった。
マミアナ+FZR
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