Vol.34 伊豆スカイライン〜 1999-11-17

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 ひと仕事終り、次の仕事までの間に2週間の時間が出来た。
 次の仕事の打ち合わせもすでに終わっているので、全然用事が無い状態だ。
 何時仕事が入るか判らないが、とりあえず今のところはこの2週間は自由になる。
 ここのところ、オートバイに乗る際にも都内で優等生していたから、久々に攻めた走り方をしてみたい。
 2週間の時間があれば、なにかあっても対応できるだろう。
 路面の温度も、そろそろいかがにもならなくなって来るし。

狸穴:「どうでせうか? たまには速く走る事に専念してみ
   るってのは?」
FZR:「今のところどこにも問題は無いですから構いません
   が、どこかへ連れて行ってくれるのですか?」
狸穴:「平日、日中の伊豆スカイライン」
FZR:「夜じゃないんですね、珍しいわ」

 機材も鞄も持たないで、空身で出発〜。で、到着。
 勾配がきつく、標高が高くなるとやはりギア比を高くしている分、使うギアが2速低いところで走る事になった。
 判っていた事だから何にも問題はない。
 一気筒あたりが小さいと、多少圧縮を上げてあっても大気の吸引効率が悪くて、上り坂では回転を下げると10000rpm以上に復帰させるのに苦しむ事になるから、頻繁にギアを落とし、車速を下げないようにする。
 ピストンやコンロッドの重量を邪魔に感じる。
 同じ250ccの排気量でも単気筒の方が登りでは圧倒的に速い。
 初めのうちは様子をみながら、少しづつ車速を上げてゆく。
 8000rpm 以上はほとんどフラットなトルク特性だから、2nd/3rdを主に使用。
 EXUPが効いているのでほとんどAT状態だが、絶対的にトルクが足りない。
 平地では出なかった現象だ。
 登り坂でのコーナリング状態からの立ち上がりは一番不得意みたいで、車速とエンジン回転が落とせない、難しい。
 でもコーナー侵入スピードを上下させるだけで、車体に掛かるGを調整していれば問題はない。
 希望としてはこういうう所では、リアを流しながらフロントを持ち上げる程度のパワーが欲しいところ。

FZR:「わたくしには無理ですわ」
狸穴:「判ってるって! でも久々にここは楽しい」

 更に車速を上げてゆくと、コーナリングフォースがかかり、タイヤのグリップが音を上げる前にショックが限界な感じ。
 リアはコーナリングGですでに最後まで下がる事もしばし、の時々底突き状態。
 フロントも結構深く沈んでいる。地面が近い。
 サスが沈むのでバンク角が……足りないぞ。
 トルクが細いので、パワーオーバーステアに持ち込もうと思ってもアンダーが出て終わり……。

狸穴:「登りじゃナントカ前に進んでる、ってな感じだねぇ
   〜」
FZR:「ゼーゼー。途中で抜いて行ったSRX600に、と
   うとう追い付けませんでした」
狸穴:「1st/18000rpmまで使ったのに、ダメ
   だった。やむをえんか」

 緩い登り勾配になると様相は一転する。
 ギアも4thまで使えるようになるし、16000rpm程度でシフトアップしてゆくと具合が良い。
 使用する各ギアのつながりにも不足はない。

 緩い降りでは更に車速が上げられる。
 前後とも流れっぱなしな状況もたまに。
 外脚の膝で方向をコントロールしてやれば、大きく暴れる事もない。
 ハンドルバーは自由にしておかないと暴れる。しっかりYAMAHAな設定だ。
 走行ラインの変更もある程度効く。
 低レベルだけれど一応、水を得た魚状態。
 エンジンが上限回転数を18000rpmまで許しているので、楽である。

FZR:「いかがですか? マスター」
狸穴:「良かったね〜降りもスカタコだったらどうしようか
   と考えてたよ」
FZR:「えっ! 捨てて帰るつもりだったのですか」
狸穴:「……ワハハ。帰りに用心石」
FZR:「…………」
狸穴:「冗談」

 FZR的には限界はこんな感じ。
 流れた状況でもまだコントロール下にあるし、限界も低いが路面がキレイならば激しくブレイクする事もないいから更に車速を上げられる。
 一応合格でしょう。
 FZRには言わなかったが、以前同じコースを同じような状況で走ったAX−1の方が、登りでは速かった。
 車体の軽さとトルクが立ち上がる回転域の短さ(素早さ)でAX−1の方がこういうコースに向いていたのかも知れない。
 ショックもフロント側に関してはAX−1の方が良いものを付けている。
 リアに関してはどちらも同じ程度。攻めてしまうと良いとは言えない。
 いずれにしても、排気量のデカい車体のしっかりした600ccクラスのマシンならば、全然違う世界なのだが……。
 1Lまで大きくなると、もう今のあっしの手には終えません。
 走り始めて30分ほど経ったので、そろそろ集中力も切れる頃だから、ここでひとまず休憩〜。
 タイヤを見てみるとサスが沈んでバンク角が稼げず、流れた量が多かったのか、縁まで使い切っていないのに、前後とも表面が虹色に溶けている。
 右のステップの先っぽが捲れて、ネジも跳んでいる。
 もう少し攻め込んだら、タイヤ自体が狂ってきてかえって乗り難くなっていたかも
知れない。
 FZRでは脚をもっと固めて来ないと、このタイヤを完全に使い切る事は無理のようだ。パワーも足りない。

 FZRが凄かったところも、一つ発見。
 あっしの不得意な左複合コーナーで、ライン上に落ちていた拳大の石を避けた際に一度アウトに10センチほど避けてから、更に元のラインに戻る時に、一瞬カウルが擦るまで車体をネジ込んだのだが、フレームが捩じれながらも異常振動せず安定していた事だ。YAMAHA偉い!

狸穴:「一瞬だけだったら、結構もつみたいじゃん」
FZR:「はい。ある程度、速度も乗ってましたし、頑張らな
   いとホントにヤバそうだったので」
狸穴:「ふ〜ん、んじゃもう一度やってみようか?」
FZR:「マスター、一瞬しか私はもちませんわ!」

 リアショック上端部を支持しているフレームの一部からアーム自体までの限界はこのあたりのようです。
 久々に集中して少し走ったので、自分の走り方もどの程度緩くなって来ているかも判ったし、日が暮れるとまた寒くなって来るので引揚げ〜。

狸穴:「あとはゆっくり走るか?」
FZR:「はい」

 以前何度か一緒に走った下田のモトグッチ乗りの親爺のところへお茶を飲みに行くと、珍しく営業していたので、一服してコーヒーで塩焼の魚を喰わされた。
 親爺が久々にグッチを引っ張り出す気になったらしく、店を客に任せて裏に消えて行った。
 外でしばらく待つと、裏から大音上と共にグッチが跳び出て来た。
 今では誰にも内緒で、たまに早朝だけ乗っているとの事。
 調整は取れているらしい。
 FZRを見て、

親爺:「ふん! お前のバイク随分小さくなったなぁ。1/
   4に減ったのか?」
狸穴:「大きなお世話じゃ。ロートルグッチ、まだ生きてい
   たんだ」
親爺:「こいつはイタリア産の業物よ。100年経っても、そ
   れじゃ付いて来れんさ」
狸穴:「そのホイール、そろそろ半減期で割れる頃じゃないの?」
親爺:「残念だったな、サイズも大きい物に替えてある!」

 相変わらず、得体の知れないジジイだ。
 手が入っているイタ車はたしかに手強い。
 そのままナントカ後に付いて走り、少し離れた旅館の薄暗い巨大な木製プールのような風呂に付き合い、体温復活。肌もツルツル〜。
 
親爺:「お前そう云えば、奴との勝負は付いたのか?」
狸穴:「まだだ。預けてある」
親爺:「2年ほど前にまた日本に戻って来たらしい、ZZR
   で店に来た」
狸穴:「へ〜。まだオートバイに乗っていたのか。で、探し
   てるって?」
親爺:「どうだか。その話はしなかった」

『奴』というのはシカゴ出身のオートバイに乗る日系人で、20年前からのあっしのカタキでした。
 長〜くオートバイに乗っていると、いろんな付き合いが発生するんですねぇ。
 ははは。

 帰りは太平洋沿いにて帰って来ました。ちょっと雨、夜は寒い〜。

狸穴:「次は、スキヤキが喰いたいぜ!」
FZR:「わたくしも、ハイオクが食べたいです〜」

爺  マミアナ+FZR

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Copyright © Taro Mamiana, COMBINED ARMS 1999-2005.
初出 KGB-NET 1999.