Vol.20 渡世人にはVTRはまぶしいのだ 1999-05-21

前回 次回→


 高輪での打ち合わせを終え、修理の上がったトランクを狭いリアシート上に積んで、六本木の裏手・飯倉坂下からトンネル抜ける。青山墓地を通過してHONDAの本社を回り込み、R246下り車線へ。
 その間、トンネルあたりから少し離れて1台のオートバイが、目立たぬようにずっとついて来る。

狸穴:「ん、追っ手か……」
FZR:「……何、考えてるんですか? 妄想??」
狸穴:「あ、いや。なんか一台、つけて来る」
FZR:「お巡りさんじゃないみたいですね」
狸穴:「ああ。小さいな……赤い車体だ。『消某庁』?」

 R246に入ってすぐの信号で止まっていると、ついて来たオートバイが横に並んだ。エンジンの上にトラスフレームを乗せたVTR250だ。
 ライダーはどう見ても女の子だ! 斜め前にいるのでフルフェイスのヘルメットの中までは確認できないが、爪先立ちした黒のハーフブーツ(REDWING?)のサイズからいって、まずオカマではない。
 黒を基調とし、前身ごろが真紅のタイトな、でもしっかりした仕立てのスーツ(オートバイ用じゃない)の線は白人女性のような肉感はないが、日本人特有の華シャなBODY。
 日本人のデザインの売りモノは骨格が細いので、『華奢さ』これくらいしかない。

 未装備重量:38kg
 全高:157cm±1

 という感じ。
 やせているが、適度に出るところは形よく出ている。小造りだが脚の形状と比率は高い。
 新車のVTRとセンス良くバランスしている。

FZR:「VTRでしたね。乗ってるのは女の子だわ」
狸穴:「やっぱ、VTRにはあの手の娘が似合うよなぁ〜。
    あの小さい背中!!」
FZR:「マスタ〜、あまり見てるとイヤがられますよ」
狸穴:「応」

 しばらく並んで走ってみる。まだ慣れてない。乗り出してから1000キロという感じかな? ミラーに映るヘルメットの中の表情から24才くらいとお見受け。
 重宝機関の墓居工作員関係じゃなさそうなので警戒は解く。

FZR:「マスター、すっかりツーリング状態ですね。楽しい
    でしょ」
狸穴:「いいぜ。すり抜けにもなんとかついてきているし、
    悪くないよ」

 R246から表参道に入るとついてきた。多摩ナンバーだから山手・甲州街道かな?

FZR:「無理な事もしていないみたいで、こちらのペース
    に引込まれてもいないみたい。素直な乗り方です
    ね。少しペースを落として、渋滞している車の注
    意をひいてあげましょうか」
狸穴:「ああそうだな、ギア比は大丈夫か?」
FZR:「問題ありません」
狸穴:「教習所から昨日出て来たみたいな姿勢だ。爪先も前
    向いてるし。必ず左脚から着地している」
FZR:「肩に少し力が入ってますね。体が小さいし、VTR
    に慣れれば問題なさそうですね」
狸穴:「みんな最初はあんな乗り方になる」
FZR:「マミアナ様は?」
狸穴:「俺も小学2年生の頃にモンキーに始めて乗った時は、
    同じだったと思うよ」
FZR:「あら、例の歩道橋ですわ」
狸穴:「この上に白バイに追われてCB350Fで逃げ上が
    って捕まったっけ……大昔」

 甲状腺関係の専門、伊藤病院前の歩道橋を潜り、表参道を原宿駅の前まで抜けてきた。
 信号で止まるとすぐ横にVTRが着けて来た。
 体が小さいのでハンドルから手が離せないし、ミッションもローに入れたままなので、クラッチを思いきり握っている。
 向こう側のブレーキレバーも多分そうだろう。
 こちらを意識しているのが良く判る。上半身が小さいので腕が延びていて、こちらを向けないのだ。
 文句をいうような険悪な雰囲気ではない。
 少し前方にFZRを動かして振り返って、ヘルメットの中の顔を覗いて見る。微笑。
 なんとか右手をハンドルから放し、指でVの懐かしいサイン。
 こちらも久々に御返し。V
 すっかり、ツーリングになってしまった。
 正面から良く顔をみたら27才ちょい前くらいだった。

FZR:「マミアナ様はあの手の緻密なデザインの女の人、大
    好きでしょ?」
狸穴:「まあね。でもオートバイに乗ってるくらいだから、
    周りにイイ男がきっといるって!!」
FZR:「そうなんですか?」
狸穴:「そうなんじゃない?」
FZR:「……」

 山手通りに入ってからもしばらく一緒だったが、後ろに積んだ荷物をアジトに一時置いて、桜上水へ仕事の打ち合わせに行かねばならないので、途中で右折し、しばしのツーリングは、おしまい。
 VTRは環6を直進。
 VTRがホーンで合図して来た。FZRのホーンスイッチを押したが鳴らなかった。
 そう云えばホーンの調整はいずれ交換しようと思い、何もしていなかったのだ。
 左腕を上げて合図にかえる。
 普段は鳴らして注意を促すよりも、止まるなり回避するなりアクションした方が、早くて安全だから、使う事がなかったのだ。
 普段あまり使う事のないホーン、皆様もたまにはご点検あれ。
 このスイッチを、何か他の機能に使う事は出来ないものか?
 小さなCCDを入れて、左手の親指の指紋照合・体脂肪率・心拍数・末端神経反応速度・温度分布による体調検査をさせるとか……。
 ホンスイッチを押しながら、イグニッションを回さないと電源が入らないとか。

FZR:(あの……マスター。私は健康器具じゃないです〜。
    マスターも妄想得意なんですね)

まみあな+FZR

前回 次回→

FZR250R トップ NS400R TOP


Copyright © Taro Mamiana, COMBINED ARMS 1999-2005.
初出 KGB-NET 1999.