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エンジン屋で全裸にしてからヘッドを開けてみる。
小さなピストン4個と、これまた小さなバルブが16個出てきた。
バブルな時代に造られたエンジンだけあって、材料は結構良い。
カム山も傷ついていないし、バルブリフターも高精度で組まれている。
が、シリンダー内壁に錆び痕が多数。ピストンヘッドにもカーボン堆積。
ヘッドをバラしてみると、吸排気ともバルブシートにカーボンを噛み込んでしまい、シートぼろぼろ。幸いな事に16本のバルブは曲がりもせずに測定範囲内で揃ってくれていた。
FZR:「いかがでしょうか?」
狸穴:「負荷掛けなくて正解だったようだぜ、中破ってとこ
ろかな」
FZR:「良かったわ」
シリンダーにホナーを掛けて錆び痕を薄く削ってからサイズを測り直す。
新しいピストンを仮合せで合せてみると、しっかりと入ってくれた。
ついでに0.3mmシリンダーベース面を面研。
クランクケースを開けてみると……
狸穴:「あちゃ〜、シフトフォークが焼けてるぜ。支持ベア
リングも使えないや」
FZR:「どうしましょう……」
狸穴:「どうするって……困ったなぁ。替えるしかなかろ?」
FZR:「済みません、お金掛かって」
狸穴:「ま、湿気の多い国にいるんだ。ケースの中で水も出
るさ」
FZR:「私のクランクシャフトの方は大丈夫でしょうか?」
狸穴:「クランクは……全く問題無いみたいだ。元々頑丈な
所だからコンロッドの焼けもない」
エンジン屋の親爺が観に来て、
親爺:「へぇ、見た目は華奢だけどこれ頑丈だな。でもフォ
ークとヘッドのシートは全滅だ」
狸穴:「たしか……うちのと同じマシンのエンジンを前にやっ
た時のパーツ残ってたよね、まだある?」
親爺:「あると思うよ、GXのパーツの箱の近くにあるんじ
ゃねぇか?」
箱を漁ってみると、吸気側のバルブ8本とフォーク3本、オイルポンプ2個、シリンダーのスタットボルト2台分が出てきた。
狸穴:「あったよまだ残ってた。間に合いそうだ!」
親爺:「パーツは棄てるもんじゃねぇな。いつか役に立つと
きが来る」
FZR:「ありがとうございます」
親爺:「いいって事よ。おめぇの御主人が前に置いていった
部品だ」
FZR:「助かりました」
親爺:「良かったな」
親爺も隣でやっている512iBBの方へ戻って行ったので、ヘッドのシートの切り直しを始める。16個あるから大変だ。
ミッションのドッグギアを点検してから発見された新品パーツを組んでゆく。ヘッドにバルブも組み直す。
各ポートへガソリンを流し込んで、燃焼室側に漏れてこないかしばらく様子を見る。
漏れて来ない、完璧。
古いオイルポンプは異物を噛みこんで傷ついていた。
狸穴:「終ったぞ」(簡単に書いているけど結構大変)
FZR:「それが今度の新しいエンジンですね。頑張って走り
ます」
狸穴:「んじゃ、ちょっと隣を手伝ってくるから。それが終
ったら、エンジンコンプリート積んでやるから、待
っててくれ」
フェラーリの12気筒ボクサーエンジンは片側バンクだけでも重量があるので、ミッションと切り離してもまだ重い。
電装もオイルラインも厄介なところを跨いでいたりするので面倒だ。
おまけに初期のインジェクションと来てるから配線が多い。
だが、ボディーがそっくり剥がれてくれるのでありがたい。この姿も結構カッコ良いのだ。
B B :「18000rpmも回るんだって? すごいねぇ」
FZR:「はい。一応250ccで4気筒ですから……」
B B :「こちらも12気筒だから回るほうだけれど、歳だか
ら大変だよ」
FZR:「あのー、部品なんかはまだあるんですか?」
B B :「大抵の物はね、そういうメーカーだから。でも電装
やその他の補機類はみんな日本製さ」
FZR:「私のメーカーは、製造後8年でパーツの生産を止め
てしまいます」
B B :「そりゃ酷だねぇ」
FZR:「……はい」
休憩。
結局BBのエンジンは重すぎたので、チェーンブロックで釣り上げた。
エンジンが乗っていない間にフレームの点検。
狸穴:「でかい入力はまだ無いようだから大丈夫だ」
FZR:「まだ大きな事故は無いですが、化粧が浮いてきて余
り綺麗じゃないから、覗き込まないでください」
狸穴:「しばらくしたらまたバラすから、そのときメイクさ
んに頼んでやりなおすか……」
FZR:「お願します」
狸穴:「それよりステアリングステムのベアリング、もう駄
目だ」
FZR:「交換ですね!」
狸穴:「そ、そう言うこと。判ってきたねぇ〜」
FZR:「……」
フロントフォークもO/H(オーバーホール)、リアアームもO/H、リアのショックはサイズが細いのでÖHLINSは……入らないカナ。
なんだか知らないうちに大事になってきてるなぁ。はじめは適当に動けば良かったような気もするが……。
エンジンを乗せてから、作業中につけた油脂をスチーム洗浄して車体を組み戻し、帰り支度。
アイドリングも安定して音も静かになったが、カムチェーンのテンショナーからの音はまだ止まらない。
馴らしなので6000rpmまでに抑えて走らせると、緻密な部品で構成されている機関が高目の音域で安定している。
FZR:「マスター、いくらでも回りそうです!」
狸穴:「ああ、そうだな。部品があって良かったよ」
FZR:「何か変ですか?」
狸穴:「変わって、言うんじゃないんだが……ちょっとね」
FZR:「何でしょ?」
狸穴:「かなり良くなったんだか……5000rpmを越え
ると、妄想回路(EXUP)が合っていない」
4200rpmあたりから作動を始めるEXUPが、妙な排気干渉を起こしているようで、微妙にリモートコントロールなトルク発生をしている。
トルクの始まりは掴めるのだが、次の瞬間にどこまでトルクが上がるのかを計算しておかないと、体感と合わないのだ。
FZR:「それってきっと、よろしくないんですよね」
狸穴:「気にしなきゃ済むんだし、攻めてるときに厄介にな
るだけだから通常は問題ないいけどね。馴れりゃい
いんだ」
と、言うわけで妄想回路(EXUP)を調べてみると、これが単純な仕掛けである。
ただ、吸気とエンジンと点火時期と、妄想回路を巧く合せないと安定しない。
固体差も影響してくる。
真面目に合わそうとしたら、結局ONE OFFで全部合せるしかなさそうだ。
当然乗り手の癖まで読み込んだ上での話になってくる。さらに車体の設定を同時に合せてゆく……あちゃー、またはまってるぜ。
狸穴:「とりあえず、お互いにしばらくはデフォで慣れてお
かないとな」
とか言っていたら、いきなり暗転! 世界は闇。
ヘッド球が切れた。
いろいろ始る時期なのね……。
明日は履物も替えるかな。もう無いや。
マミアナ&名無しのFZR+親爺たち
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